26
「キリハさんおはよー」
「おはようございます」
「依頼ある?」
「いえ、今は特にないですね」
やはり一気に狩り尽くしたのが効いているのか、少し湧き速度が鈍っている気がしないでもない。はたして。
「じゃあそうだ。折角ああいう話もあった訳だし、戦力増強のためにキリハさんも整理できるよう、現状のメイズについておさらいしてみよう!」
「よろしくお願いします」
アリシアさんの提案は突然だが、尤もである。何が必要かを知ることも、また重要である。
「ではまず大前提として、ここは私の一強体制で存続しています」
「はい」
「その下にメイズに居着くゴールドが13人ほど。けどこれについては、現状ドラゴンに対抗できるかっていうと、そんなことはない。あとはシルバー以下の有象無象ね」
「なるほど」
「呼び出せるかは別として、すぐに動かせる範囲にある戦力はストレイ支部のミスリル3人くらい。けどこれはストレイ側の都合に左右されるし、承諾を得られたとしても移動のタイムラグは発生する。突発的な危機には役に立たないっとことね」
「ふむ」
「これで全部ね」
「……」
アリシアさんに頼りきってるのは把握していたが、改めて確認するとこの惨状である。でも流石に、何時でも全部アリシアさんがやってるということはあるまい。体調を崩したり、別に用事があった時とかどうするのかと。
「えっと、一応隠し球とか独自のコネクションがあれば、参考までに教えていただきたいのですが」
「ないよ」
「……いや、そんなまさか」
「ここに来てからは、一人でずっと狩り尽くしてるよ?」
全部アリシアさんがやってるということだった。皆勤賞である。目を背けたくなる真実がそこにあった。
「わかりました。今は大丈夫だとしても、保険は用意しておくに越したことはありません。ミスリルを招けるよう少し頑張ってみます」
「いや、一人でも大丈夫だけど」
そうは言っても、不測の事態が起きた際に滅びかねないのはまずい。というか今の今まで、よく誰も動かなかったなと不思議になるレベルだった。