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「知らない天井だ」
目を覚ますと、そこはどこかのベッドの上だった。身体を起こすと多少ふらつくが、それもすぐになくなる。
なぜ知らない場所にいるのか。ええと、最後の記憶は……。そう、ドラゴン。あれにやられたんだっけか。あの場で倒れたギルド員が無事生きてるあたり、アリシアさんが八つ裂きにでもしたのだろう。
ドラゴンもいなくなり、死にそうなほど影響を受けた体も、なんとか持ち直している。少し腕を振ったりしていると、職員らしき人が通りかかる。
「あ、キリハさん。目覚められましたか」
「えっと、ここはどこですか」
「メイズの治療院です、来られたのは初めてですか?」
「初めてです」
なるほど治療院だったか。基本的にギルド員とは縁のない場所ゆえ、わからないのも当然か。
「見たところ顔色も問題なさそうではありますが、運び込まれた際はかなり危ない状態でした。経過観察も兼ねて、あと数日はこちらで、様子を見つつ過ごしてもらいます」
「わかりました」
「それと、少々お待ちを」
最低限言い残して、どこかへと言ってしまう。聞きたいことは色々あるが、まあ目覚めたばかりだ。ゆっくりするとしよう。
と思った矢先にアリシアさんである。さっきの人が呼んできたのだろう。
「目覚めたんだね! よかったああ!!」
「お陰様で、一命は取り留めたみたいです」
ぎゅーと泣きついてくるが、かなり心配をかけただろう。ここは泣き止むまで待つことに。
そうしてしばらくしてから。
「え、私五日間も寝てたんですか」
「一日経ったら起きるかと思ってたから、三日を超えてもう無理かと……」
「やっぱり高ランク冒険者でもない限り、命ってあっけないですね。何もされてないのに死にかけるとか、今回のことで身に染みました」
何もせずに殺せるってなったら、そりゃあ冒険者が遠巻きに囲んでたのも納得である。そんな相手にのこのこと近づいたマヌケというわけで。
「いや、今回はキリハさんの体調まで気を配れずに、ドラゴンに連れ出した私のせい。ごめんなさい」
「まあ酷い目にはあいましたが、そもそもアリシアさんがいなければ、あの場で皆殺しでしたし。なんとか生きてれる点に、感謝すらしてますよ」
偶然あの日に限って朝早く来ない、なんてことがあれば人里に降りてきたドラゴンロードとやらに、言う通りに滅ぼされていたはず。
ゆえにこそ。
「同じようなことさえなければいいです、謝る代わりに、自分を責める代わりに、これからも力をお貸しいただければ。なーんて」
「ありがと……」
生きていたのだ、これ以上言うことは無いだろう。今回は死にかけこそしたが、なんだかんだいいつつも、王都にいた頃よりも楽しく過ごせている。
結果としてここに流されたのは、すごいいいことだったのかもしれなかった。




