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ある辺境のギルド職員について  作者: レスカ
ドラゴンとギルド職員
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20

 

「あ、キリハさん。外にいるなんて珍しいね」


「今日の依頼はギルドではなく、メイズからの討伐依頼になります、あれを」


 やはり朝早くから現れた、小さな救世主を促した先には、巨大な竜。濃密なオーラを纏っており、今まで来ていた竜とは一線を画してそうな、格が違うのがなんとなくわかる。一応ギルドの冒険者総出で、遠巻きに囲んでいるが腰も引けている。強くてゴールド共じゃ、竜に対しては塵芥に等しい。


『我はトワイライトドラゴンロード!! 我が配下達が、随分と世話になったようだな!!』


 その咆哮はビリビリと空気を震わせ、立っているのもやっとであった。つまりあれだ、これは今までメイズに出没していた、ドラゴンの親玉らしい。


『我は無駄な争いは好まぬ、我が配下を尽く打ち倒した者よ。我が前に来い!! 我が軍門に下るのならば歓迎しよう。だが断るのなら、この街を破壊し尽くすだけだぁ!!』


 どうやら仲間を倒されて怒っているか、あるいは興味を持っているのだろうか。ともかくこの事態を収拾できるのは、アリシアさんをおいて他にない。となると、当然こちらも巻き込まれるわけで。


「ですって。とりあえず前へ」


「えー、怖い!! 一緒に来て?」


「随分と余裕ですね……」


 このやばそうなのを目の前にしても、一切動じていない。それどころか、ふざける余裕すら。それともアリシアさんにしてみれば、大差なかったりするのかしらん。それに今までは任せ切りだったのだ、たまには労うとしよう。そう覚悟を決めて、アリシアさんの左手を握る。


「まあなんだかんだ、アリシアさんの傍が一番安全ですし。一緒に行きましょう」


「そう来なくっちゃね!」


「プランはありますか?」


「アドリブでよろしく!」


「ええ……」


 ノープランらしいが仕方ない。あんまり待たせるのもあれなので、足並みを揃えてドラゴンの前へ。

 ……いや、やっぱ安全じゃなくても後ろにいたい。恐怖とは別になにあれ、近づくほどに威圧とオーラで息苦しくなってきた。毒物でも押し込まれてるような感覚……ちょ、まってまって。身体が拒否反応を、汗が、吐きそう、あっ倒れる、意識が飛んじゃう。


 やっぱり、すぐに飛んじゃう一般人なんだなあって……。


 ~~~~~~~~~~~


「キリハさん!?」


 成り行きでキリハさんと手を繋いで、ドラゴンの前に出てみれば、突如キリハさんの顔色は真っ青で目は虚ろになり、異常なまでの発汗と痙攣しながら倒れ込みそうになる。

 咄嗟に支えたものの、楽しんでいる余裕など微塵もなかった。自分であればあの程度問題ないが、キリハさんは別だった。とにかく、酷い体調であることは間違いない。ど、どうにかしないと……!


「そこのゴールドの中にヒーラーの人はいますか!?」


「わ、私がヒーラーです」


 呼び掛けに、おずおずと進みでる女性が一人。よかった! 朝早かったから微妙だったけど、いるだけ御の字! キリハさんを運ばないと。


『強者はいないのか!! ならばこの街を破壊し尽くすだけだぁ!!』


「ひいっ!!」


 ああっ、威圧でヒーラーさんが腰を抜かして漏らしてる!! できる限り冷静にやってもらいたかったのに、あんのくそトカゲなんてことを!!

 すぐにキリハさんをヒーラーの人の横まで運び、小さく告げる。


「最低限生かしてね。生きてさえいれば、報酬は金貨二百枚だからね」


 涙を浮かべて怯えながらも、ヒーラーの人がこくこくと頷くのを確認したあとで、すぐにくそトカゲに飛びかかり、右目を切りつける流れのまま、剣を解放して首に巻き付け、遠くへ投げ飛ばす。これ以上、あれを近くには置いておけない。


「おのれ!! よくもキリハさんを!! そうだよ、私があの雑魚どもを片付けた輩だよ!! 覚悟しろ!!」


『ぬあああああ!! 不意打ちとは卑怯な!!』


 投げ飛ばしたままに啖呵を切って突貫、地面を転がる奴の死角になった右側から、横っ腹の鱗に剣を滑り込ませて、力任せにいくつか削り取る。


『貴様っ! 我の高貴な鱗を!!』


「コロスっ!!」


 これが体勢を立て直すよりも先に、肉の剥き出しになった箇所を、これでもかと言うほどに切りつけ、その上で剣を深く打ち込み、剣を通して全力の魔法も中に注いでやる。


「ブリザード!! ライトニング!! ライトニング!!ストームライトニング!!」


『うがあああああ!! ま、まて、それ以上は!!』


「スプレッドフレイム!!」


『うおあああああああああああ!!!!』


 本気も本気の魔法を連発してやれば、それらは内部から身体を破壊し、最後は身体中の穴という穴から炎を吹いて、奴は息絶えた。

 そんなことよりキリハさん! 容態の確認のため、すぐにヒーラーの元へ戻る。


「ヒーラーの方、キリハさんどうなってる!?」


「一応、応急処置は済ませました。しかし、まだ余談を許さない状態です」


「治せないの……?」


「この場で私にも治せたらよかったんですけど、技量と必要な治癒魔法も足りてませんで、すみません。あとは治療院に運ぶしかありません」


「うあああ死なないでぇ」


「は、運んでる間も可能な限りは、お力になりますから。今は負担をかけずに移動しましょう」


 そうだ、喚いている場合ではない。せっかくここまでしてくれるのだ、動かねばなるまい。脚と脇に腕を入れて姫抱きにして、ヒーラーの人と移動を開始する。

 ちょくちょく回復をかけてくれているおかげか、ある程度はダメージが少なくなっていそうか。


「せっかくなので、この機会に聞いてもいいですか」


「なにかな」


「なんでこの方というよりかは、男性のギルド員に執着してるんですか?」


「執着ねぇ」


 理由は至ってシンプルである。


「下手に冒険者相手だと喧嘩とかした時に、殺し合いレベルに発展しそうだし、そうなったら大抵の相手は惨殺しちゃう自信があるからかな」


「ええ……」


「その点ギルド員さんであれば、むさい男より爽やかでかっこいい人多いし、こっちが下手に出ることになるので安心。あと家事してくれそうってとこかな」


「意外とわかりやすい理由ですね、しかしアプローチ方法に問題はあると思います」


「うっ」


「冒険者ゆえ難しいにしても、時間をかけて距離を詰めていくのが一番の近道だと思います。あなたの場合は狙いが異性ではないですし」


「ですよね……」


 色々と話している間に治癒院に着いたので、事情を伝えてキリハさんを任せて、ヒーラーの人に金貨を渡して解散とした。どうかキリハさんが助かりますように……。


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