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「キリハさん、今日も依頼……って何してるの?」
「いえ、暇してる時間を内職だけに充てるのも、もったいない気がしたので、来るべき日に備えてですね」
「これはポーションと魔道具?」
「はい、ポーションは薬効を高められるように調合を。魔道具はコンパクトサイズの防壁を展開出来るようにと」
メイズにはアリシアさんがいる。いるけど絶対安全でもない。例えば、アリシアさんが龍退治に出ている際に、ここを狙われたらお終いである。
最後に頼れるのは自分の力となれば、少しでも生きれるような備えをしておくべきと。
「魔法とか武器の練習はしないの?」
「いえ、今からやったとて、付け焼き刃にすらなりませんよ。自分の能力を育てるのは、一夕一朝では済みません。しかし、道具類を使うのであれば?」
「すごく強くなくとも、道具の性能は確実に発揮出来るわけね」
「そういうことです」
しかし、戦うのは無理なので武器ではなく、大怪我を負った際に備えて上級回復ポーションを。逃げ延びるための持って移動できる防壁を。あんまり素早く攻撃されたら、使えるかも怪しいが、あるに越したことはない。
姑息ではあるが、命あっての物種だろう。そうして逃げて隠れて、アリシアさんを待つのである。
「使う日が来ないのが一番ですけどね」
「そうだねー」
「さて、今日の依頼はジャンブル平原の紅龍です。天から舞い降りたとされていて、かなり強いそうです」
「まあ龍なら大差ないでしょ、いってきまーす」
そしてこの日から、意外に楽しくなってきて、無駄にポーションと防壁作りに凝るようになったのは、また別の話。




