16
「要はキリハが私のことを知らない、これが問題なんでしょ?」
「ええ、まあそれが大きな要因のひとつですね」
今日も今日とて書類仕事に勤しんでいると、ひょっこりリュミがやってきた。今回はアリシアさんが出ていった後であるため、またもやバッティングせず。まあその方が助かるのだが。
「だから、キリハに私をもっと知ってもらうため、私にいい考えがあるんだけど」
「お気持ちはありがたく、しかし遠慮しておきます」
「なんでよ!!」
そこはかとなく嫌な香りしかしないからである。生き抜く上で、危機を察知する能力ほど大事なものもなく。今回なんかは、そらもう最上位のアレである。
「聞くだけ聞いておきますけど、具体的なプランは?」
「私の家にお泊まり会」
「やっぱり遠慮しておきますね」
「なんでよ!!」
仮にもミスリルである。野山に駆り出そうものなら、一騎当千の働きぶりだろうに……。いやまあ、全てが全て完璧超人って人もあれだし、人間味はあるけども。
「まさか、なんだかんだ言って、あの小娘に惚れてるんじゃないでしょうね!?」
「ギルド員としては、相手にするならむさい男よか遥かにいいです、それは認めます。しかし私が不浄の穴で純潔を散らしたいか、これはまた別の話です。逆にぶち込まれるのも御免蒙ります」
「そ、そう……。そういう意味で聞いたんじゃないけど、まあいいわ」
「すぐにどうこうなるような話でもないので、アリシアさんと平和に争っててもらえると助かります」
「その言い方からして、途中でふっと逃げそうなんだけど」
一応、第三の選択肢としてないでもない。アリシアさんと覚悟を決めるか、リュミについていくか、無理そうなら快適環境を引き払ってまで、雲隠れも視野に入れる必要がある。
今更気づいても遅すぎたが、正直この二人はどちらであれ、平ギルド員には手に余るのだ。




