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「珍しく疲れてるね、何かあった?」
「いえ、何も……。とは言い難いですね」
アリシアさんは変わらずであるが、ミスリルのヒステリー地味た面を味あわされた身としては、あれが滞在している限り気を張ってなければいけないのが辛い。そして告白も。
正直悪い話ではないと思ってはいるが、相手がミスリルであるため仲違いして別れる時、別れた後で地獄を見るのは確定している。そのため、嫌でも慎重にならざるを得ない。
余計にお互いに好きになれるかが試されるのだ。
「ミスリルの話ですから、気にしないでください」
「あ、ハイ」
ただでさえ苦手意識のある、アリシアさんに余計に負担をかけることもない。ミスリルという言葉を出しただけで引いた、アリシアさんも賢明である。
「っと、そうだ。サファイアドラゴン終わらせてきたよ、これ討伐証明」
「喉のコアですね、ありがとうございます。ほんとアリシアさんがいて助かっています」
どちゃりと金貨の詰まった報酬を渡す。ここまで過ごしてきてわかったことのひとつとして、なぜかメイズ近辺には異様に竜種が湧くのだ。比喩でもなんでもなく、アリシアさんが守護神である。
「まいどありー。そうそう、せっかくサファイア湧いたから、キリハさんに渡したいものもあってね」
「私にですか?」
「うん。見てこれ、サファイアを削り出して指輪にしてみました。これでお揃いだね!」
「お揃い……あ」
あまり意識はしていないせいで今気づいたが、通常装備のほかにデートの際に買った髪留めと指輪、これらもつけていた。戦闘時に着れない服にしときゃ良かったか、いやだがそれはもっと重く解釈されそうだ。
ペアルックとなると少し躊躇する、どうかわすべきか。
「ちなみにこの指輪、私の魔法を仕込んであるから、つけてれば窮地に陥っても安心だよ」
「なるほど、そういうことであればありがたく」
こちとらタダでさえ吹けば飛ぶ一般人なのだ、生き続けるのに恥も外聞も気にしてられん。肌身離さず一択である。
外見としては、デートの際に買ったものと似たシルバーのリングに、透明度の高い蒼が飾られている。うーん、一生かかっても買える気はしないな。
「そうそう、これのお礼という訳ではありませんが、どうやらリュミさん、ソロでドラゴンの討伐は無理そうです。今みたく、そう臆することはありませんよ」
「えっ、あの人ミスリルでもドラゴン無理なんだ。意外」
「まあアリシアさんがプラチナの中でも、かなり強いのもありますよ」
「でもミスリルとプラチナって、もっと隔絶した差があるものと思ってたからねー。じゃあ過剰に怯えることもないかな?」
「他の面で評価されているのでしょう、侮ることもありませんが、普通に接して問題ないでしょうね」
これで無駄な心労をかけずに済むので、少し良い方向に進んでいる。
さて、ここからどうやって今のミスリル共を追い出して別のミスリルを囲い、本部に戻らずアリシアさんと添い遂げずに済むか、やっぱり難易度高いなあ。




