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「やっほ、また来ちゃった。ほんとに暇してるんだね」
「あれ、リュミさん。やってもらったの、少しばかり厄介なやつだったんですけど」
「もう終わってるよ? ミスリル舐めてもらっちゃ困るね」
なんということだ、なぜこんなにも効率いいのに、どこもミスリルを一人常駐させていないのか。快適生活に向けて、一人どうにかして抱え込みたいものだ。
と、少し遅れてアリシアさんもきた。
「キリハさん、今日も依頼くださ……いな」
「……」
アリシアさんに苦手意識が根付いている……。やっぱりプラチナより強いんよね。そしてリュミもむっすーっとしている。ここは早いとこ依頼出して行ってもらおう。
「おはようございます、ちょうどラース山脈のサファイアドラゴンの依頼があります。こちらどうぞ」
「あ、ありがとー。いってきまーす……」
「いってらっしゃーい」
なんか上司にいびられてるみたいで、見てるだけで不憫だ。今度埋め合わせしてあげないと。とか考えていれば、リュミが信じられないもの見るような目をしていた。
「なに、あの子ソロでドラゴンやってるの」
「基本的に竜系の討伐しかやってもらってないですね、仮にもプラチナですから」
「ミスリルでもソロはきついでしょうに。まあ、私も出来なくもないけど?」
「何を張り合ってるんですか……。そういう訳で、彼はこの支部の命綱です。あんまり目の敵にするの、やめてあげてくださいよ」
たぶんリュミはソロでドラゴンやれないひとなのだろう。
そう考えれば、アリシアさんはプラチナの中でも、数段抜けた極まっている部類なのだろう。男漁りさえなければ完璧だったのに。
「わかった、ただし条件があるわ」
「……私にできる範囲でお願いしますね」
「一緒に装備を選んで欲しいの」
「ふむ、それだけでいいなら喜んで」
何をもって、平職員をミスリルの装備選びに付き合わせるのかは不明だが、アリシアさんの負担を減らすべく、することはするべきだろう。善は急げと外出届けを出してそのまま店へ向かう。
「しかし、そうホイホイと抜け出せるものなのね」
「王都よりも平和ではありますが、あれだけスムーズなのは私だけですよ。最近じゃアリシアさん専用みたいな、謎の扱いになっていますから。ギルドも割と融通の効いた対応をしてくれてます」
「あれでも重要視されてるってわけね……」
「あれとか言わないでください。彼がいなかったら、メイズ支部はとっくに沈んでいますよ」
再三になるが、彼はものっそい重要である。そのことを説きつつ、武器や防具の店に到着する。王都の質のいいとこに比べれば、天と地の差だろう。
「来てから言うのもなんですけど、リュミさんの求めているものはここにはないと思いますよ」
「……なによ! アリシアさんアリシアさんって! そんなにあの娘が好きなの!?」
「ええ、急になんですか……」
「私の方がキリハのこと好きなのに! なんなら愛してすらいるのに!!」
なんと、雰囲気もへったくれもない田舎の武器屋の前で、突然の告白である。正直驚きを隠せない。
「なぜ私に……あなたであれば、もっとかっこいい人も……。とかいうありきたりな返答はやめましょう。愛や恋はそう簡単には、理解できるものではありません。気持ちは嬉しいですが、まずはお友達からにしましょう」
「なんで!? 私ミスリルだよ!? 苦労させないよ!? 可愛いじゃん!!」
「私たちはお互いに、知らなすぎています。衝動的に恋人になったとして、長続きしなければお互いに嫌な思いをするだけです」
「駆け出しの頃いろいろ教えてくれたじゃん! 装備だって選んでくれたじゃん! それに私知ってるよ! キリハの好きな物、身体を洗う順番、実はマニアックなフェチがあることも!!」
「そんなものありませんよ。公衆の面前で何を言ってるんでしょうかねぇこの人は」
まて、こいつどこまで知ってる。場合によってはミスリルとはいえ、消すか口封じをする必要があるな。
というかなんの前触れもなく、突然大声を上げて泣き出した。どう収拾つければいいんだこれ。
「あなたが私のことを知っているのはわかりました。ただ、私はあなたがミスリルで凄腕、これくらいしか知りません」
「いいじゃん! これから好きになってもいいから!!」
「あーもう、ここで騒いでいても迷惑ですから。ギルドに戻り……いや、まず騒動になるのでダメですね。仕方ない」
ところ構わずギャン泣きするミスリル冒険者を荷物抱きにして、カフェに向かった。カフェに入っても迷惑を考えずに騒ぐ、そんな困ったミスリルさんに、絶え間なくパフェを与えて口を塞ぐ。
なんで?ちょっといい雰囲気だったのに、なんで子守りしてんの?
その後もなんやかんやかなりグズるため、色々なとこへ連れ回した後、疲れ果てて眠ったところで事情はぼかしつつ、なんとか王都へ戻る準備をしていたミスリルパーティに引き取ってもらった。地獄か。




