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「へー、それでまた来てるんだ」
「意外と邪な気は感じません、魔王対策として来ているからでしょうか」
「私はそうは思わないけどね。面倒な泥棒猫が小綺麗な泥棒猫になったくらいでしょ」
「なら綺麗になってる分マシなのでは?」
ほどなくして王都より戻ってきたロイドさんから、魔王についての話を聞くミスリルパーティ一行。の後ろ姿を、カウンターからアリシアさんとともに眺める。
確かアリシアさんはリュミとは犬猿の仲だったか。
あの後のことはなんとなく怖くて聞けていない、果たしてリュミの中ではどうなっているだろう。
「綺麗になってる分逆にタチが悪いみたいな?」
「そういうものですか」
「そういうもの」
なんとはなしに眺めていると、突然リュミが振りむいてこちらに歩いてきた。
やたら上機嫌なのは理由があるのだろうか。
「改めてお久しぶり、キリハ」
「お久しぶりです。あなたも元気そうで何よりです」
「ふふん。あれから心を入れ替えてやってきたからね!」
「心を入れ替えた?」
こちらの疑問には答えることなく、笑みをたたえたリュミがアリシアさんの方に向き直る。
「魔王が来たら恐らく、まだ実力を知られてない私たちのパーティが前線に立つはず。そこを横合いから本気で崩しにいってもらうことになるだろうから、よろしくね」
「あ、はい。よろしく……」
そしてアリシアさんに何か耳打ちをして、そのまま出て行ってしまった。
ロイドさんの話まだ終わってないし、パーティメンバーほっといていいのか。
「やっぱり綺麗になってる分、タチ悪くなってるとしか思えない……」
まあ魔王に対しては何か考えがあるのだろう。非戦闘員からすれば何を用意しているのかは知る由もないが。




