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「と、いうことで。魔王が近くまで来ていたみたいでね」
「へえ、恐ろしいね」
「幸い半ば撃退に近い形で追い返したあたり、脅威とみなしてこの先真っ先に襲われる可能性は低いかもしれないけど」
「せっかく安住の住まいを見つけたんだから、壊されちゃ困るし。こっちとしても助かるよ」
「……いつまで居座るつもりか」
「そりゃあ、気が済むまで居ていいって許可が出てるから。一生でもいいかなと思ってる」
とりあえずトロッポにも魔王が出たことを共有するが、そこまで深刻には見ていないようだ。やはりアリシアさんが牽制した状況、それ込みなのが影響しているか。
それどころか、狙ってかこちらに足を向けて寝っ転がり、シャツも捲れていて非常によろしくない。あれから無防備さは増すばかりである。
そして以前、軽率に居座っていい承諾もした気がする。こんな展開になるとわかっていれば、言葉は選んでいただろうに……。
「あとそのいかにも無防備な体制やめて。服の隙間から下着まで見えて精神衛生上よくないから」
「普段着にこんな薄くて短いもの買ってきてるのはどこの誰かなー?」
「くっ……。もういっそ白状するけど、役得だと思って個人的に好みの服だけ用意したのがまさか仇となるなど」
「へーえ? いいこと聞いちゃった。ほれほれ」
もう隠す意味もないとぶっちゃけてしまえば、トロッポはそれにつけあがり短パンのすそをさらにいじり始める。
こんなことになると思っていなかったため、トロッポの生活用品は全部好みのものしか用意してない。それがここに来てある種の生き地獄を味合わされるなど。
「しかし強情だよね。女がいいって言ってるのに乗ってこないなんて」
「厄介事はこれ以上抱えたくもないんでね……」
「?」
本人はきょとんとしているが、どうせ自覚がないだけで何かしら抱えているのだろう。
どんな驚愕の事実が隠されているのかは知りたくもない。
もう2年です
早いもので




