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「えっと、あれロイドさんだっけ」
「そうですね。苦戦してるみたいですけど……」
キリハさんに頼まれたサラさんの付き添い依頼を終えて戻る途中、竜王ほどではないが大きな気配を感じて少し寄ってみれば、かなりの使い手のロイドさんが防戦一方になっていた。
相手は魔族っぽいが、まず普通の奴ではないだろう。
幸いロイドさんに釘付けにされているため、遠巻きに見ているこちらまでは察知されていない。
「私よりも強いであろうロイドさんが押されてるってことは、サラさんがあれと戦えば粉微塵にされちゃうのはわかるね?」
「はい、別ルートでギルドまで撤退して報告ですね」
「当たり。私はロイドさんに加勢してくる、不意打ちすれば撤退の隙くらいは作れると思うから」
問題なさそうな迂回ルートを示して、走り去るサラさんを見送った。その後ろ姿が見えなくなったところで、あれに向き直る。
詳細は不明だが、手加減しながらどうにかなるやつじゃないということはわかる。ロイドさんに手の内を見せたくないなどと言っている場合ではないか。武器も自前のものだ。
「アークエンハンス」
「アークプロテクト」
「グラビティストック」
「リロード」
しかし前と違って、今回は仕込みにあまり時間もかけてられないため、少なめでいくしかない。
魔法がかかったと同時に地面を蹴って、一気に魔族との距離を詰める。
ちょうどロイドさんの左腕が肩から飛ばされたところだが、偶然にしては絶好の不意打ちの機会となった。
剣を解放して重力球を用いた一撃を視界外から叩きこみ、一気に魔族を弾き飛ばす。
「貴様何者だああああああぁぁぁぁ……」
「ロイドさん、撤退するよ! 逃げられる?」
「お前は、なぜここに?」
「その様子だと限界でしょ! 時間は稼ぐから今のうちに!」
「ああ、悪い……!」
呆然とするロイドさんにポーションを浴びせて立たせ、その背中を押す。
魔族は叫びが聞こえなくなる距離飛ばしたが、あの強さならすぐに戻ってくるはず。
うまいこと奴を騙くらかすかなんとかして、逃げる算段を立てないといけない。




