表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある辺境のギルド職員について  作者: レスカ
魔王とギルド職員
101/114

100

更新100回記念

お茶回

「まーた脱ぎ散らかして……。トロッポもいい加減に」


「キリハ、お茶いこ」


「ああ、そんな約束もしてたっけか。じゃあそこの服を洗濯籠に入れてきたら行こうね」


「すぐやる!」


 お茶をぶら下げれば一瞬で動いた、なんとも欲望に忠実だこと。

 服を片してきたのち、二人で街へと駆り出す。たどり着いたのは裏通りにある小さなカフェレストラン。

 雰囲気を味わうのもほどほどに、カウンター席に座る。


「わー、趣があるっていうのかな。いいね」


「静かなのが好きで、たまに通っててね。座ったら?」


「あ、お隣失礼しまーす。……この椅子回るね」


「こらこら遊ぶんじゃないよ。メニューあるから好きなの選んで」


 くるくる回るのを静止しつつ、メニューを渡す。

 たっぷり5分ほどメニューを眺めて、でかでかと埋まっているひとつのページで止まった。


「このジャンボパフェがいい」


「それ食べきれる?」


「一緒に食べて」


「なるほど、妙案だ」


 呼び鈴を鳴らして店長を呼ぶ、一人で店を切り盛りしている彼もまたナイスガイだ。


「ご注文は?」


「このジャンボパフェとコーヒー二つ」


「かしこまりました。少々お待ちを」


 店長が中へ戻っていって数分後、眼前にデカいパフェが置かれていた。

 コーヒーはいつも通りだがなんだこれは。聞いてみるほかない。


「店長さん店長さん、いままでこんなもの見たことなかったんだけど」


「若い子向けに最近導入してね、キリハさんが第一号客だよ」


「売れてないんじゃん……」


 その華やかなフルーツやクリームの塊は、静かな空間には些か似合わない代物だった。

 トロッポとそれを交互につつく、美味しいのは否定しないが。


「これから売れるから問題ないって。それよりキリハさんが人を連れてくるなんて珍しいね。彼女さん?」


「えへ~、そう見える?」


「違うけどな。……そう見える?」


「相性は悪くなさそうだし、何よりギルドで仕事してるっていう、他の冒険者ともつながりがありそうなキリハさんが、ようやく初めて連れてきた人だしね。信頼してるんでしょ」


「それはまあ……」


 そういえば、ここに誰かと来たことはなかったか。

 もちろん信頼はしている、手を出せるかというと別なのだが。

 などと考えていれば腕に抱き着いてきた、困る……。


「あの、えーっと。トロッポさん?」


「当たってるんじゃない、当ててんのよ」


「いや聞いてないから」


「当てる胸もないくせにとか言わないで」


「いや言ってないから」


「お世話してくれるし、私はあなたのこと嫌いじゃないよ」


「……何か事情でもあったりする? それなら無理せずとも」


「婚期逃しちゃって、実は34歳なんです。もちろんそれだけじゃなくて、普通にラブだからさ」


「考えてる中でも年上の方だったか」


 若くて20代後半からと見ていたが、少し後ろだったらしい。

 そこそこ年上だった、10コ差もあった、焦るのも頷ける話だ。

 しかし恐らくやんごとなき身分の人だ。やはりここが明かされるまでは、進むにせよ退くにせよ、下手に動くわけにいかない姿勢は一貫している。


「……いずれ考えておく」


「いつでもいいからね。待ってる」


「期待しないで待ってていいから」


「じゃあ勝手に期待してる」


 店長の温かい視線が刺さる、痛い。


「好かれてるみたいじゃないか。真剣に考えてやんなよ」


「わかってるって」


 この日以降トロッポからのスキンシップが増え始めたのはまた別の話。

この先どうなるかは決めてない……

1:1かと思いきや停滞している中、裏手の崖からこっそりヒロイン枠に登ってきていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ