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「キリハさん、今日はギルドが騒がしいけど、何かあるの?」
「おはようございます、アリシアさん。実は王都所属のミスリル冒険者パーティが来ているみたいで、あそこの人だかりの中心にいるみたいです。物珍しさもありますが、ミスリルですから。人気者ですね」
「へー、わざわざメイズまで来てなんの用だろうね」
「どうでしょうね。では今回の依頼ですが、彼らがある程度メイズに滞在することをどこかから掴んだため、難しいのはあちらに投げてあります」
「となると?」
「折角ですし、たまにはのんびり薬草集めにでも行きましょうか」
王都のミスリルとなると、自分を追いかけさせている可能性はなくもないので、あまりギルドにいるのは得策でないだろう。
サクッと外出届けを出して、 カゴを背負い、アリシアさんと人だかりの横を抜けて、ギルドを出ていく。
「今日はついてきてくれるなんて、どんな風の吹き回し?」
「薬草集めであれば危険もなく、私もできますし効率も2倍です。日頃の感謝とでも思ってください」
アリシアさんはプラチナゆえ、厄介なのを回してしまってるあたり、こういった機会くらいゆっくり羽を伸ばしてもらいたいと。
実際倒れられても困ると、拗ねられても困ると。いまのとこそういうことはないが、気をつけるに越したことはない。
「プラチナでは馴染みがないでしょう。ポーションは薬草と魔法などから精製されていまして、回収はアイアンとブロンズが主にやってくれています」
「そうね、基本的に強いのしか相手してないしねー」
まあアリシアさんのそばにいれば、いざという時に守ってもらえるという、打算的な考えもないことはないのだが。
「この薬草1枚で食べると苦いですが、この実を一緒に食べると、苦味が消えて独特な味になります」
「ほんとだ、苦くない」
「薬効も考慮されますが、こんな具合にあれやこれやを混ぜ合わせて、飲みやすくしているわけですね」
「なるほど」
薬草集めについては、アリシアさんに知識があまりないこともあり、話しながらほぼ一人でしていたが、たまにはこんな日も悪くないだろう。
明日以降もしばらく、職員ですら出来るような簡単な依頼に付き添ってもらうが、普段はしていない経験として楽しんでもらうことにしよう。
というのは建前で、体のいい隠れ蓑になってもらおう。