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賢者レアの復活  作者: huwanyan
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最終決戦

刃の交わる音しか認識できない、まさに音速戦を行っているコランティーヌとレア。地上では収まらず空中戦と洒落込んでいる。衝撃波で地上が壊れない様に気を配ったという諸般の事情もあるが。規格外の戦闘を行っているために、いつもは押し込めている魔力を放出しているという事情もあり、結界を張るよりも楽に飛ぶことが出来るのだ。分かりやすくいえば、高濃度の魔力によって地場が狂ってしまい、何をしなくても地上から浮き上がってしまう、という感じだ。


「『神の御使い』、だと……!」

「全く。勝手に自称しちゃって。まあ、創造神様が派遣したのは事実だけど」

「まさか……本当に400年前の賢者なのか!?」

「え、今更?」


レアは頓狂な声を出す。まさか分かってないで戦ってたの?この人。


「現代の衰退した文明の中で賢者を自称したちょっとはできる奴ではなくか!?本当にあの賢者レアが復活していたのか!?」

「そう言ってるじゃない……」


まさか400年前の賢者を名乗る偽物だと思っていたのか?俗世から隔絶された場所だから情報の入手も時間がかかる。情報も鮮度が命だ。いくら闇ギルドの、しかも本部とはいえ鮮度は落ちるだろう。鮮度が落ちれば信憑性も落ちるだろう。それは分かるのだが、ここまで信じていないとは思わなかった。


「というか、皇帝陛下と女帝陛下が転生者だってのは分かってたのに、なんで私は偽物だと思ったのよ」

「転生者だって眉唾だと思ってたわよ!堂々と名乗ってる時点で怪しいじゃない!そんなさも狙って下さいみたいな危機感の薄い事、誰がするって言うのよ!」


いや、そんな危険かな?まあ、ケンさんやアンリは確かにレベルもリセットされてたから最初は危ないから秘密にしておく必要があるだろうけどねぇ。


「転生者はともかくとして、転移者である私はレベルもステータスも400年前のままだったからそんなに危険じゃないわよ?」

「そうね〜。私達は狙われたら危険だから〜秘密にしてたけど〜レアは別よね〜。レアと合流できた時点で~、秘密にしておく理由はないわよ~」

「ああ。レアは俺達とは違うからな。刺客が来ても返り討ちにできるからな」


コランディーヌは歯軋りした。この世界の者にとって転生者と転移者の違いは分からなかったのだろう。何しろレア達が初めてなのだから。いや、正確には創造神は転移者だから初めてではないのだが、それは知られていないからノーカンである。

そもそも創造神はあまり地上に手を加える事ができない。関わり過ぎると世界の理が歪んでしまう。しかも創造神が手を加える事で、自然に生まれた未来の軌道修正をする関係でしわ寄せが起き、時空の歪みが生まれてしまうらしい。

今考えたら、それが理由でレア達を呼んで魔王達に対応させたのかもしれない。その後も不老不死になれば地上で起きた問題に対応させる事ができるから。


「ふざけるんじゃないわよ……!」


コランティーヌは怒りを滲ませながらパタンをギュゥっと握る。


「何なのよ!私はね!この世界を征服するのよ!世界各国に闇ギルドの支部を作って!影から貴族に取り入って!国の中枢にギルドの人間を潜り込ませる事で征服する!完璧な計画だったのよ!貴方がいなければ!貴様が……!貴様がぁ!」


自棄になったのだろう。コランティーヌは全身の毛を逆立てて斬り掛かってきた。理性が吹っ飛んでいるのか、恐慌状態になっていた。そもそもレアに勝てる状態ではなかったが、頭に血が上っている状態では勝ち目はないだろう。あっという間にコランティーヌは吹き飛ばされ、城の壁に叩きつけられた。

レアはコランティーヌにロングソードを突き付けた。意識を失い、もう反撃をできる状態でもない。この身体はこの桃源郷を真に統治していた狐獣人コランティーヌのものだ。例え今のコランティーヌが別人であり闇ギルドの真の首魁であろうとも、この身体を殺すと言う事は、この国を愛し、この国の民を守ろうとした偉大なる女王を殺すと言う事だ。

しかしこれは必要な事だ。闇ギルドのギルドマスターを殺す事で開放してあげるのだ。


「返してもらうわよ。桃源郷アルカディアの女王、コランティーヌ様を」


コランティーヌを解析し、その魂を魔法で破壊した。肉体は魔法で維持されていたらしく、魂を破壊した直後に滅びてしまった。光の粒子になり風の様に消え去っていった。


「……終わったわね」

「そうね〜。地下は騎士達に攻略してくれてるし〜」

「調査はこれで終わりだが、あとはこの桃源郷をどうするかだな。アルカディアの生き残りはこの仔狐だけだ」


アンリの腕に抱かれてスヤスヤと眠っている仔狐。この桃源郷を作った神獣の血を色濃く受け継いだ子だ。ただ、この子に任せるにはまだ子供だ。もう少し成長するまで仮の王が必要になる。


「レアでいいんじゃない〜?」

「嫌よ、面倒臭い。ただ、私の周りに獣人はモーリスとカミーユしかいないのよね……」

「流石に指導者は無理だな。そもそも王国領にあるアベラール領の中の国だからな。レアが代理になって、この仔狐を育てて引き継いだ方がいいだろう」

「……そうね」


そうする以外にないのだろう。国王に進言して代官を派遣してもらおう。何しろ領民のいない土地だ。領主候補はいるが、領民がいなければ始まらない。獣人の桃源郷であるこの地には当然獣人が暮らす事になる。

獣人は良くも悪くも弱肉強食だ。人間の様に陰湿な戦いをできるほど知性の高い種族ではなく、武勇にものを言わせるのが獣人の慣例だ。それ故に素行の悪い連中が多いのも事実。そんな者にアベラール領に足を踏み入れさせる訳にはいかない。桃源郷入国の為に関所を設ける必要もある。獣人で、人格重視で、代官を任せられる知性を持ち、尚且つ武勇にも優れた者。贅沢なのは分かっているが、レアはその辺は妥協しない。だからこそ質の良い弟子が生まれたのだが。


「セバスチャン」

「お呼びでしょうか」


基本的にレアからセバスチャンを呼ぶ事は少ない。そもそも近くにいるし、レアの指示がなくともレアが求めている事をこなしてくるから。つまりレアに呼ばれると言う事はそれだけ重要度が上がると言う事だ。


「王国内にいる闇ギルドの関わった違法奴隷を救助。その中で獣人を選別して引き取ってきて。国王への報告は私がするわ」

「承知いたしました」


セバスチャンはさっと姿を消した。まだまだレアに休息は訪れないのだ。






数日後、報告書を持って王城に参上した。談話室に通されたレアは紅茶を飲み、そして顔をしかめる。王城で使われているバークマンティーの花の様な香りがしない。その癖、茶葉が多過ぎて渋く、正直言って飲めたものではない。新人のメイドが入れたのか?そして失敗したのか?

するとバタンと大きな音を立ててドアが開いた。びっくりして振り返ると、そこには血相を変えたクリストフ殿下と国王陛下、それに宰相がいた。


「賢者殿!その紅茶を飲んではいけない!毒だ!」

「……ああ。だからですか。飲めたものではない味だったので一口で飲むのはや止めしたが」

「問題、ないのか?」

「私に毒は効きませんよ。私を誰だと思っているのですか」


そう言われるとその通りだ。何だか取り乱したのが恥ずかしくなってくる。


「で、犯人は?」

「アニエス嬢からの緊急連絡を受けて城にいる使用人を一斉調査したのだ。城にも定期的に奴隷を買い雇う事があるからな」

「そうしたら、奴隷の取引担当だった使用人が闇ギルドの構成員である事が分かっての。ジョクス家の取り潰しの際に行った調査で、この城に溜まった膿は出し切ったと思ったのじゃがな」


まだまだ手引きする人物はいたと言う事か。そして奴隷メイドに命じてレアに毒を盛ったと言う事だそうだl。紅茶の茶葉に毒花を入れて煮出した紅茶だったそうだ。そりゃ美味しくないわけだ。


「獣人の奴隷は軽く話を聞いたが、やはり噂の桃源郷が故郷だそうじゃ」

「全員集めて話を聞く機会を設けて頂けませんか?明らかな違法奴隷ですし、もしそうなら奴隷解放しなければ」

「うむ」


陛下の行動は早かった。城の中で働いている使用人達を一斉調査した所、まあ出るわ出るわ。沢山の闇ギルド構成員が紛れ込んでいた。ケンやアンリの国でも抜き打ち調査を行った結果、かなりの人数の闇ギルド使用人が捕縛されたそうだ。しかもドナシアン皇子の婚約者として推挙されていたご令嬢の父である侯爵が、闇ギルドの大幹部だった。また、アメリー皇女の婚約者は闇ギルドの幹部候補生だったそうだ。王国も第一皇子の妾はジョクス家の長女であり闇ギルドの構成員だったし、クリストフ殿下の妃も闇ギルドには関わっていなかったもののジョクス家の次女だ。コランディーヌの野望はもう少し遅ければ達成されていたのではないだろうか。恐ろしい話である。

兎にも角にも、各国は闇ギルドの影響を徹底的に排除した。奴隷として各地に散らばっていた桃源郷の獣人達はセバスチャンの手によって集められ、レアの領地で療養に入った。そのままレアの領地で使用人として働きたいという者は、将来アニエスの使用人として働く為にパティストの元で教育する事になった。

また桃源郷に戻る者は人選をした上で、未来の指導者である仔狐の側付きや執事、使用人として教育をする為に、殿下の使用人として期間限定で雇っていただく事になった。一応は王国領だし、仔狐にも帝王学を学ばせないといけない。それに関してはアニエスが担当してくれる事になった。何しろ一応は元王妃だ。これ以上の人材はいないだろう。

仔狐にはアルフォンスと名付けた。最初は闇ギルドのマッドサイエンティストが秘密裏に研究していた肉体強化のポーションを飲まされていたためか衰弱も激しく、レアとアンリが付きっきりで回復を促していた。アンリはレアの魔力をおやつ感覚で吸っているが、決して無駄に吸い上げているわけではない。その魔力を使ってどんな重傷も治癒させる事ができるのだ。特にレアの高濃度の魔力は魔力量がネックで治せなかった傷も癒せるため、こういうときには活躍できるのだ。常にアンリが抱っこしていたためか、それとも実母が亡くなったのがまだ人型にすらなれなかった頃だったからなのか。実母の事を覚えていないアルフォンスはアンリを母と思っている節があり、『かかさま〜!』と走り寄ってくるのを何となく複雑な目で受け止めているアンリ。『割り切った方が良いわよ。自分の実の両親を覚えている養女でも複雑な心境にはなるもの』とレアは養母の経験からアドバイスをしている姿が屋敷の使用人達に度々目撃されていた。

将来の王としてドナシアンが日常のあれこれを教えている。そもそも弟や妹がいる彼は、年下の面倒を見るのが得意であったりする。エミリアンはそもそも小さなケンの様な性格で、アルフォンスと領内を走り回って遊んでいる。護衛の騎士が大変そうだ。

勉強はレアが担当し、子供達を一流の魔法使いや戦士として育てていた。今では将来の国を担う人材を教育しているレアの腕を疑う者はおらず、クリストフ殿下の第一王子に護衛担当として仕える候補となっている学友達を教育して欲しいと依頼される事も多い。まあ殆どはパスカルとヤンに任せていたが、一部は桃源郷を統治する予定となっているアルフォンスの護衛や参謀として育てられている子もいた。違法奴隷となっていた獣人達もレアの元で逞しく育ち、徐々にアベラール領の運営に関わっていく様にもなっていた。


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