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賢者レアの復活  作者: huwanyan
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アベラール領再開発

半年が経過し、レアはアベラール領に移り住む事となった。セバスチャンとモーリス、それにアニエスも一緒に。もちろん、まだ辺境伯の座を引いた訳ではないが、王都の屋敷での執務をパスカル達に任せても問題ないというセバスチャンの合格通知を受けて決行された。今後はアベラール領での貿易が安定してアニエスに任せても問題ないとなったら、晴れてレアは辺境伯をパスカルに譲る事にしている。まあそれまでにあと5年以上は掛かるだろう。何しろ、領地でレアが行う仕事は貿易の管理だけではないのだから。


「ほら、あと30分よ」

「くぅっ!」

「キッツっ!」

「あ、あと30分もあるの!?」

「う、腕が、もう……!」

「頑張れ~」


バルテレミー帝国のドナシアン第一皇子とエミリアン第二皇子、それにアルエ帝国のアメリー第一皇女とコラリー第二皇女を弟子として迎えたのだ。強化訓練もやっているが、4人には耐久力がない。これでは地獄の強化訓練が体を成さないと分かったので、まずは耐久力訓練をする事になった。その方法として、両手を横にまっすぐ広げ、水を満たしたバケツを持ち両足を揃えて立つ。これをとりあえず1時間。これが結構キツい。体幹も鍛えられるから一石二鳥の訓練ではある。パスカルとヤンも最初の内はこれもやっていた。水の中で暮らしているせいか皇女達は筋力がない。体幹は問題ないがバケツの重たさにヒィヒィ言っている。一方の皇子達は体幹がまだまだの様で、身体がふらついている。筋力はある程度あるから体幹をメインにした方が良いかもしれない。


「はい!終わり〜!お疲れさま」

「「「「はぁ~!」」」」


全員地面にへたり込んでいる。ぐったりしているが、訓練はまだまだ続く。


「さぁ!10分休憩したら剣の素振り1000回よ!」

「「「「え~!?」」」」

「それが終わったら昼食よ。今日は何かしらね?」

「本日は鳥のグリルをサンドイッチにしたものと、ポテトフライ、チョコのケーキです」

「「「「頑張る!」」」」


飴と鞭である。セバスチャンもベラを世話した事で子供をやる気にさせる魔法を覚えた様で、お子様達が喜ぶメニューを考えるのが日課になっている。

アニエスはモーリスはピンキーの里を監視しつつ、周辺の森での魔獣討伐を行う事で旅商人達の安全を確保。素材は売り、売り上げの6割をアニエスとモーリスの手取りとし、残り4割の内の2割は領主であるレアの手取り、2割を税金とし領地運営に当てた。食糧になる肉などは以前の領主の元で親を失った子供達が身を寄せている教会へ寄付したりスラムの者達への炊き出しに使われたりした。

絶賛再開発中のアベラール領で、スラムの人達に斡旋する仕事は多い。何しろいずれは巨大な貿易都市になるのだから。そのためにもこの領地は何処よりも堅牢であらねばならない。しかも数を減らしたとはいえアンデッドは未だに多い。しかもピンキーの里もあるし、エアライドドラゴンが森を、セイントドラゴンが領地上空を守護してくれているとはいえ防備はしっかりしておきたい。現在、セイントドラゴンは屋敷の庭で寝食を行っている。不便はないが雨ざらしもどうかと思うのだ。そこでセイントドラゴン用の部屋を城壁の上に作ろうと思うのだ。そうなるとドラゴンのブレスでも吹き飛ばない堅牢な城壁が必要だ。そして考えたのが二重城壁。巨大な真四角の城壁の中に正方形を90度回して2つ重ねた様な八芒星の城壁を作る。その中に町を作るという計画だ。当然ながらジオフロントも建造する。しかも王都よりも大きなモノを作ろうとしている。

というのも、ここは国境なのだ。今は問題ないが、未来の事は分からない。そこで外側の第一城壁と内側の第二城壁の間の地下には軍事施設を作る事にしている。もちろん掘削で掘り当てられない様に守りは厳重にする。城壁そのものを地下にも伸ばす予定だ。そしてそこには作戦会議室、管制室、武器庫、食糧庫、医務室、仮眠室などを設置する。また軍事開発についてもここで行う事になっている。第二城壁の内側は何か起きた時の住民の避難場所。もちろん畜産業は行える様にしている。密かにこちらの管理をノーム族を保護する形で頼んだ。もちろん国王には報告してあるが、大臣達には秘密にしてある。どう考えても過剰戦力になりかねず、大臣達が増長する未来が見えるからだ。ホビットに頼まなかったのは、彼らの平和主義思想と合わないからだ。いざとなったら防衛とはいえ戦争に巻き込む事になる。戦に馴れていないホビットよりもノームの方が防衛戦にしても戦力になる。また、彼らも森の増え続けるアンデッドに頭を悩ませていたらしく、安全を確保し保護してくれるのであればと協力的だ。その代わりに森での薬草採取や魔獣討伐にも協力してくれるそうだ。人口増加にも対応できるし、現在でも王国の領地5つ分の領民を受け入れられる体制は整っている。表向きは牧歌的な貿易都市、地下は軍事都市という様相を呈している。

まあ、この計画はバルバストル王国だけではなく、現在バルテレミー帝国皇帝の保養地になっているアベラール領のお隣の帝国領にもほぼ同じ規模の貿易都市on the軍事都市を作っていた。また、水路の地下に地下水路を設置し、そこからアルエ帝国の地下に設置した軍事都市にも繋がっていたりもする。実は3カ国の軍事施設は秘密の通路で繋がっていて、そこを通るためには精霊達の力が必要であり、精霊達の力を借りるためにはレアに連絡を取らないといけないという安全設計となっている。これはそれぞれの王族・皇族にのみ伝わっているトップシークレットだ。貴族達の間ではそれぞれ互いの国にしかないと思われている。内情を知っているのは現国王・賢者・皇帝・女帝だけだ。互いに自分の国にしかない軍事施設だと思わせていた方が、面倒な事が起きないだろうと思っての事だ。これは4人が墓場まで持っていくつもりだ。まあ、その内3人は神殿に持っていくのだが。

こうなると城壁の上に大砲などを置きたくなるのが転生者の性なのだろうが、レア達は作らなかった。この世界には不向きだろう。レア達は不老不死だからいざとなったら注意を促す事は出来るだろうが、悪用される可能性のあるものを作る必要もない。レアの騎士団にバズーカ砲や火炎放射器に類するものを作って準備はしている。それらはエルフ騎士団に管理を任せている。扱いを間違えると大変なものはエルフなどの長命種に任せる事になっている。

主にレアの騎士団はエルフ騎士団が中心。何かが起きればオクレール公爵騎士団が協力してくれるが、やはり自前の軍を配備しておきたいものだ。そこでレアは騎士から冒険者、平民に至るまで広く『辺境伯騎士団』の募集を掛けたのだ。応募者は1万人を超えた。騎士として雇う以上はただの冒険者以上の実力が必要となるが、それ以上にやはり人格重視。これだけは譲れなかった。変な話、実力は鍛えればどうにでもなると思っているレア陣営である。

結果として、雇われたのは50人の男女。ジョクス元宰相が雇っていた騎士達も合わせて100名の騎士団が結成された。ジョクス元宰相が雇っていたのは1000人規模の騎士団だったが、人格や実力を審査して50名となった。溢れた元騎士達は領地採用の冒険者や傭兵として雇う事になった。主に領地に設置された冒険者ギルド支部で働いてもらっている。手柄を立てれば取り立てるとは言ってある。そうでなくても狩ったモンスターの素材はギルドで買い取るし、肉は自分達の食料になる。生活に困る事もなかったからか文句も出なかった。まあ一部のプライドが高い者は何か言っていたが、その辺はモーリスがO☆HA☆NA☆SHI☆して解決している。

それに、今のアベラール領は冒険者の人手が足りない状態なのだ。と言うのも、最近領地周辺の森に魔獣が多いのだ。


「なんでこんなに多いのよ!狩っても狩っても出現するわよ!」

「致し方がないであろうよ、アニエス嬢。某も驚きであるが、まずはこの進行を止める事が先決です!」


アニエスが最前線でモンスターを切り刻みながら文句タラタラ。モーリスはナックルで殴り付けながらアニエスをなだめる。そんな会話をしつつもスタンピードさながらの量を捌いているのだから流石である。


「よっと!ふぅ……これで全部ね」

「はい。お疲れ様でした」


一息吐き、周囲を見回してモンスターが襲ってこないのを確認する。おかしな魔力は感じない。この森はモンスターや魔獣が多い。彼らが放出する魔素によってモンスターや魔獣が活性化される事もある。故にスタンピードが起きる可能性も多いのだが、こんな頻度は以上なのだ。最近はほぼ毎日スタンピード状態なのだ。最初は他貴族の依頼で召喚師がやっているんじゃないかと言われていたが、原因の特定はできなかったが、だからこそ召喚師が関わっている可能性は低かった。もしそうなら早くに見つかるはずだから。


「魔素がそこまで濃くなっている様には見えないのよね……」

「ここまでモンスターが発生する様な濃さではありませんな」

「召喚師もいない様だし、これは異常よね」


レアがこの報告を聞いた時は『こう言う時は原因が地上になければ上空か地中なんだけど……』と言っていた。確かに潜むなら上か下だろうが、上空はセイントドラゴンの縄張りだし、地下は軍事都市を作る段階でバレる。


「……ねえ、モーリス」

「はい」

「モンスターの氾濫って、こっち方向から溢れる事が多いわよね?」


アニエスが示すのは森の深淵方向。木々が生い茂り、そちら側は王国領ではあるものの調査が進んでいない謎に包まれた深淵の森だ。


「そうですな。強力なモンスターが多いのもあり、400年前でさえ開拓を躊躇する状態でした」

「この森の奥って何があるのかしらね?」

「さて。神獣たる狐の神が作った都があるとか言う眉唾な話がありますね」

「神獣の都、か」


創造神の神族である神獣。龍、狐、狸、蛇、狼、鹿、猪、虎、兎、一角獣、鷲、亀と言う十二柱がいるのだが、彼らの中には龍種の様に自分の力を継承した独自の種族を形成させる種族がいる。その中で、この深淵の森には神獣たる狐が自身の力を受け継ぐ種族を形成し住まわせていると言う話があった。


「確かに確証はないし眉唾というのも確かなのだけどね……」

「気になりますか?」

「神獣たる狐は魔獣やモンスターを統率する能力に長けているからね」

「……」

「何もない場所、というには広すぎるし、神獣が作った都かは分からないけどね」

「何者かが集落を作っている可能性はある、ですか」

「そうね。師匠に報告しましょう」

「はい」


2人は領主館に戻りレアに報告書と共に話をした。


「……なるほどね。桃源郷、か。そういえばそんな話もあったわね」

「知っていたのですか!?」


レアが転移する直前、あの土地で新規アップデートが入る事になっていた。その内容が『神獣たる狐が作った都・桃源郷 アルカディア』というものだった。当然この世界にも存在するだろう。それが実装される前にレアが転移してしまったから詳しい内容は分からない。


「いや、噂程度の話だったわよ?実際には見た事なかったし、あの近辺に近づいた冒険者は行方不明になってたし、あそこの調査はタブーになってたのよね」

「なるほど。師匠でも手が出せなかった、と」

「今は私の管理下に置かれた領地だし、調査は必要でしょうね」


レアは執務室の椅子に背中を埋めてため息を吐く。その様子を見てアニエスとモーリスは苦笑いをする。


「師匠は相変わらずですね」

「ん?」

「主人よ、笑顔が獰猛になっておりますぞ?400年前と比べると落ち着きを感じておりましたが、やはり冒険者ですな」

「……そんな顔してた?」


レアは困った顔をする。確かに桃源郷の実装を楽しみにしていた者としては、ここで調査を行えるのは楽しみだ。しかし、あの元宰相の領地だった事を考えると、どうも嫌な予感しかしない。


「調査には万全を期したいわ。セバスチャン、同行して頂戴」

「畏まりました」

「ケンさんとアンリにも声を掛けるわ。あの噂を知っている者としては調査に同行したいだろうし、貿易の観点も考えると同行させないと後から煩いだろうし」

「絶対に文句を言われるでしょうな」


あの2人も実装を楽しみにしていたし、実装されたら一緒に調査しようと言っていたからな。危険も伴うけど、まぁ後継者も決定しているし良いだろう。


「調査に向かっている間はアニエスとモーリスに任せるわ。王国に調査を行う旨を報告しておいて」

「はい」

「承知いたしました」

「あとは帯同させる騎士なんだけど……」

「ご主人様の懸念を考えると、オクレール公爵騎士団の一部と王国騎士団の一部を派兵して頂くのが宜しいかと」

「でしょうね」


セバスチャンはレアの考えている事を正しく理解している。それを考えれば主要な貴族と国の騎士を帯同するべきだろう。


「……そうね。どの道、皇帝と女帝を連れて行くのだから各国の騎士が一緒なのでしょうし、そうなれば違和感はないわよね。モーリス」

「は。すぐに」


モーリスは執務室を出た。


「さて。準備をしますか」

「はい。装備の準備はお任せを」

「うん、お願いね」


さて、久しぶりの冒険者らしい冒険だ。準備は念入りに行わないとね。


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