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賢者レアの復活  作者: huwanyan
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ヤニクの遺したもの

テオファヌは3日間喪に服した。お抱えの魔導具師だったからなのだろうが、これはお抱えの使用人にとっては最大の誉だ。ヤニクは部屋の窓から見えていた大きな桜の木の下に埋葬された。墓標も置かれ、そこには『神獣龍王が認めし龍の谷が誇る魔導具師ヤニク、ここに眠る』と書かれていた。部屋は荷物を纏めてはあるが、テオファヌとヤニクの思い出の部屋『ヤニクの部屋』として管理する事になった。そして喪に服する最終日、示し合わせた様に大桜は満開になった。


「見事だな」

「ですね」


テオファヌとレアはヤニクの部屋で酒を酌み交わしていた。暖かな日差しの中、風が冷たいのもあり燗酒が美味しい。2人の視線は大桜に向いていた。


「……ヤニクの弟子はどうだ?」

「この時代に規格外も甚だしい実力の魔導具師です。今は世界各国の再開発をしていて手が足りないくらいですから有難い人材です」

「ヤニクだからな!当然だ!」

「ふふふ。そうですね」


ヤニクの事となると全肯定のテオファヌ。そこが子供っぽいが、しかし実力がなければそうはならないのだから、贔屓目とは違うのだろう。城の出来を見てもそれは明らかだ。


「バルバストル王国、バルテレミー帝国、アルエ帝国の再開発をするに当たって、ロドリグ殿の弟子や仲間達を各国に派遣します。その中に陣頭指揮を取る人材を入れたいと思います」

「それをうちの者達に任せたい、と」

「体格もありますし、ヤニクが育てた人材なら問題ないでしょうしね」

「うむ。良いだろう。技術者は約1万名。その内、ヤニク直轄の弟子は12名だ。そこから5名でどうだ?」

「良いでしょう。彼らに名前があるのは、褒美ですか?」

「ああ。この城を建てた時に活躍した者達だ。ヤニクを筆頭に12人の龍種が要所の指揮を取っていたのだ」


龍種には名前がない。名を持つのは龍王とその子孫だけだ。しかし時折、龍の谷に貢献した者に褒美として龍王から名を与える事がある。執事長であるアダンが良い例だろう。ヤニクの弟子12人にはそれぞれ褒美として名を与えられたのだ。特に神獣龍王に名を与えられると言う事は特熱なのだ。

弟子筆頭として12人の弟子達のまとめ役マクシムは、まだ若いがその容姿はジャニーズ系の様なイケメンだ。男気もあり、リーダーとしての才能がある。ヤニクと同じ様に彫金の腕がずば抜けている。もちろん魔導武器も作れるのだが、戦いの道具よりも装飾品を作る方が好きだそうだ。

副官としてオディロン。筋骨隆々の武闘派で、いかにも鳶職と言った感じの者だ。主に工事中に森から出てくるモンスターからヤニクを守る護衛をしていたそうだ。王家の武器は全てオディロンを筆頭にした武器専門の職人が作っていた様だ。

建築に明るいナタンは建物の設計が上手く、レアの城の絵を見本に設計図を書いたそうだ。あんな見た目だけのラフ画からここまでの設計図を起こせるのは天才だと思う。ヤニクとテオファヌと3人で嬉々として設計図を作っていたらしい。

そして建築の時に資材を運んだりするのに役立っていた双子の龍種ルノーとレノー。龍種に双子は珍しく、迫害を受けていたのをヤニクが引き取って弟子として育てたそうだ。弟子の中では1番の力持ちで、2人のおかげで大量の建材を運ぶのも簡単だったとテオファヌは言っていた。魔導具を作る事が得意なのもあり、城の防衛魔導具は全て2人で作ったと聞く。

その5人の下に補佐的にサシャ、ロック、テランス、ヴァレリー、ゴーチエ、イレネーと言う6人の龍種がおり、作業員のまとめ役をになっていたそうだ。

ゾエはヤニクの弟子の中で紅一点の龍種で、生涯独身を貫いたヤニクの女房役だった。仕事に夢中になると寝食を忘れがちなヤニクに注意を促し、食事を作っていたそうだ。確かヤニクの最期の時に、部屋の入り口で控え目にしていたのを覚えている。最後の花見酒の準備をしていたのも彼女だった。彼女自身も独身で、テオファヌ曰く『内縁の夫婦』だったのだと。女性目線からのアクセサリー型魔導具や魔力媒体の制作などは参考にもなり、師匠であるヤニクへの忌憚ない意見が多いためヤニクもタジタジだったそうだ。


「そう考えると、誰を連れて行くか悩みますね」

「だったら12人全員連れて行ったらどうだ?」

「こちらとしては嬉しいのですけど、一気に12人も連れ出して良いのですか?しかも相当な実力者ですよ?」

「あいつらだけに頼るのも問題だ。それに、直接の弟子が奴らだっただけで、孫弟子もたくさんいるからな。問題ないさ」


そう言う事なら遠慮なく12人を連れて行かせてもらおう。3国に4人ずつ派遣して作業の陣頭指揮に当たってもらうとしよう。12人も師匠の望みとあれば、同行を承諾してくれた。


「で、ゾエに渡すものがあるわ」

「私に、ですか?」


ゾエは首を傾げる。レアから手渡されたのは小箱。青のサテンの箱を開けると、そこには指輪が入っていた。蓋の内側にはシルバーで箔押しされている。


『最愛の人へ』


「ヤニクの遺品整理してたら出てきたわ。龍王の許可を取って私が預かってたの」


龍種とドワーフの寿命はまるで違い、龍種からしたらドワーフは一瞬で死を迎える。正式な夫婦にならなかったのはヤニクなりの愛情だったのかもしれない。一生に一人と添い遂げる事を美学とする龍種にとって、未亡人になると再婚しづらいから。


「渡したかったけど、渡せなかったのでしょうね。不器用なヤニクらしいわ」

「……ありがとうございます」


ゾエは少し泣いている様だ。ゾエは魔導具術師だそうだ。龍の谷は『無才』とは言わないが、男女関係なく武術のスキルが徴用される国なので、魔法使いはあまり重要視されない。魔導具術師はウェポンマスターになれるのだが、ゾエは交戦的とは言えないためそこまで習っていなかったそうだ。


「だったら、ロドリグ殿の工房で販売員とアクセサリーデザイナーかな?あそこの職人は男性が多くてね。私や弟子の中で女性陣も手伝っているんだけど、やっぱり専属は必要だから」

「分かりました。最善を尽くします」


ゾエは小箱をぎゅっと握って嬉しそうに微笑んだ。


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