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賢者レアの復活  作者: huwanyan
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飛龍

ティータイムを過ごしているケンは息子から話を聞いて大笑いしている。


「レアと比べたら俺なんて凡人だろう?」

「まあ凡人は言い過ぎですが、上には上がいるものなのだなと思いましたね」


ドナシアンは苦笑いをする。レアは膝の上にベラを乗せて紅茶を飲んでいる。ベラはひたすら魔力を吸っている。物凄い勢いで魔力が減っていくのだが、レアの魔力回復スピードとの均衡は取れているから問題はない。


「ケンさんだって、全盛期まで復帰したらこのくらい簡単でしょうに」

「そうよ〜。ケンさんも大概よ〜」

「俺は目立った功績はまだないからな。お前達みたいに魔王討伐とか、海龍を単騎討伐とか。そんな物騒な事はしてない」

「魔王戦は巻き込まれたの!一度死んでるし!」

「私だって〜海龍がうちの都で大暴れしたんだもの〜。戦わないわけにいかないじゃない〜」


2人とも困った顔で言う。内容は変わらないから誰も庇えない。


「と言うか、海龍って何よ」

「ん〜?都で魔王の復活を感じたのか海龍が我を失って大暴れしたから討伐したのよ〜。海龍の魔石は『魔王の塊』程じゃないけど船の心臓部に使えるし~、ちょうど良いかなって思って〜」

「鱗は防具になるものね」

「肉も美味しいのよね〜。まだあるから送る?」

「お願い」

「はいはい〜」


おおよそ、年頃の女性の発言ではない。


「な?『ちょうど良い』と言って海龍を討伐する奴だぞ?普通ではない」

「納得しました」

「酷いよ〜ケンさ〜ん!」


ぷんぷんと言って仕返しとばかりにケンさんの魔力を吸い上げる。


「勘弁してくれ!俺はレアほど魔力が多くないんだ!」

「仕返し〜」

「……ちなみにケンさんの魔力の味は?」

「ん?スパイス系のカレーみたいな味〜。私はあまり好きじゃないかな〜」

「勝手に吸っといて文句言う!」


別に魔力が美味しくないと言われたとしても特段のダメージはないのだが、『好きじゃない』と言われると微妙に傷つくのだ。


「味は好みの問題だからね。男の趣味と一緒よ」

「そうか……?」

「レアの魔力は美味しいから好き〜!」

「だから吸わない!」

「良いじゃない〜!ベラと一緒に吸わせてよ〜!」

「お断り!アンタまで吸ったら回復量とバランス取れない!」

「どうせ大した問題ないじゃない〜」

「戦闘になったらどうするのよ!」

「平和そのものの空路で何が起きるって言うのよ〜」

「飛龍が現れるかもしれないわよ?」

「流石にそれは……」


外から爆発音が聞こえ、飛行船の結界が発動した。ノックがして執務室に騎士が入ってきた。


「失礼します!飛龍です!」

「……」

「フラグ回収、お疲れ様です」

「……そんなつもりはなかったのに……」

「航路に飛龍の縄張りでもあった〜?」

「気をつけたつもりだったんだけどね」


400年前と縄張りが変わっちゃったのかな。レアは立ち上がった。


「ちょうど良いわ。ケンさんのレベル上げに利用しましょう」

「良いね〜!」

「俺かよ!?」

「皇帝として箔がつくわよ?」

「暇だしちょうど良い余興よ〜」

「……バトルジャンキー……」

「「何か言った?」」

「何でもありません」


ケンはため息を吐いて立ち上がった。

甲板には騎士達が集まっていた。飛龍はいわゆるワイバーンだ。かなりお怒りだった。


「これは縄張りに入っちゃった感じかな〜」

「そんな感じの怒り方よね」

「やれやれ……氷魔法で良いか?」

「そうね」


ケンは面倒臭そうに指輪に魔力を流す。そして……


【コキュートス】


かざされたケンの手から氷の吹雪が放たれ、飛龍を一瞬で凍りつかせる。


「……うん。討伐完了だな」

「何だ。弱いじゃん」

「つまんないの〜」

「お前らな?この時代で飛龍は立派な災害級だぞ?」


拍子抜けの弱さで文句を言うレアとアンリ。ケンは頭が痛い様でこめかみを押さえる。


「400年前の飛龍だってケンさんなら単騎討伐できたけど、これならうちの弟子でも討伐できたわね」

「残念ね〜。もっと良い戦闘見れるかと思ったのに〜」

「……まあ、俺も拍子抜けしたのは事実だがな」


400年前の飛龍は狡猾で、魔法も避けられる事が多かったのだ。空中戦は見応えもあって良い。刺激の少ない移動中にはちょうど良い娯楽だと思ったのだが……


「師匠」

「ええ、もう一体いるわね。あれもワイバーンだわ」


奥からもう一体のワイバーンが現れた。番だったのかな?


「カミーユ、パスカル、ヤン。せっかくだから討伐してみない?」

「ひ、飛龍をですか!?」

「流石に飛龍は……!」


カミーユとヤンは驚いている。しかしパスカルは少し考えている。


「……さっき見た。氷魔法は無理だけど、雷魔法は使える。飛んでるモンスターは耐性でもない限り雷魔法は効果が高い、ですよね?」

「そうね」

「僕が騎士さん達と一緒にカミーユとヤンのサポートして、2人に止めをさして貰えばいい」

「まぁ……」

「不可能ではないけど……」

「師匠達の様に一瞬で必要な魔力を集めるのは無理だけど、僕と騎士さん達で時間を稼いで、2人が必要な魔力を集めたらいける」

「……分かりました」

「まあ、これを放っておく訳にもいかないよね」


ちなみにパスカルが攻撃に加わらないのは、攻撃魔法は使えるが得意ではないから。剣術は得意だが、どちらかと言うとサポート要因なのだ。しかもレアの側にいたのもあって冷静な状況判断ができる様にもなっている。軍師としての才能もありそうだ。

カミーユは色々と諦めた様だ。ヤンも苦笑いをする。


「雷魔法の難点は狙いを定め辛い所にあります。騎士さん達はあの飛龍をあの場に留めてください」

「分かりました!」


近くにいた騎士が返事をする。今回の騎士達を束ねる団長だ。

騎士達によって魔法の砲撃が始まった。思い思いの魔法で砲撃をする。ワイバーンは咆哮し、炎を吐こうとする。


「数人!口に水魔法を!」


パスカルはそう言いながらワイバーンの口にアクアジェットを放つ。レアが教えた魔法だが、魔力を最小限にして高火力を発揮する。騎士数人も口目掛けて水魔法を放つ。ワイバーンにダメージはないものの、鬱陶しかった様で炎を吐けなかった。


「パスカル!良いよ!」

「砲撃、止め!」


合図と共に騎士達の魔法が止まる。次の瞬間、ワイバーンの頭上に巨大な雷雲が現れた。


【剛雷】


雷魔法の中でも上級魔法に分類される魔法だ。今回はヤンとカミーユの魔力をまとめてワイバーンの上空に集めてその魔力にヤンが雷の属性をエンチャントして行使した。本来は出来ない芸当なのだが、『魔導具術師』がいればできるのだ。レアなら1人で魔法使い達の魔力を全て集めて魔法にする事ができる。しかも属性化していない魔力を使う事もできる。

これは『魔力エンチャント』と言い、属性もついていない魔力に属性を付与する方法だ。武器に行う事もあるが、レアは昔から集めた魔力に『魔力エンチャント』を行う事が多かった。集めた魔力を分割してそこに別々の属性を付与し、並列起動させることが可能となる。魔導具術師の真骨頂とも言える。

ワイバーンは墜落した。流石に回収はレアがやった。


「うん。よく出来ました」

「う、うまくいって良かったぁぁ!」

「魔力回復ポーションです」


ほっとしている一同。魔力が枯渇寸前でぐったりしているヤンにカミーユはポーションを渡す。騎士達もポーションを飲んだり汗を拭いたりしている。


「良い作戦だったわよ。パスカルは軍師の才能があるわね」

「ありがとう、ございます……」

「ヤンもカミーユも上手になったわね。雷魔法は操作の難しい魔法。魔力操作の上手いカミーユが魔力を集めて操作。その魔力をエンチャントの得意なヤンが雷魔法に変換する。適材適所で良いと思うわ」

「ありがとうございます、師匠」

「えへへ、褒められちゃった」


しなやかな身のこなしでカミーユは頭を下げる。ヤンは嬉しそうに笑う。弟子達の成長はやはり嬉しいものだ。


「『魔力エンチャント』教えたんだ!」

「うん。武器を使ってる子でも使えるからね。大体、魔導具術師の真価とも言える技術だもの。魔力操作をある程度できる様になったら教えるわよ」

「なるほどね〜」

「魔石を武器に使わなくても魔導武器にできるからな」

「魔導具術師だけしか使えないのが難点だけどね。……ベラ。貴女の兄弟子達は強いでしょう?」

「うん」


ずっとレアに抱えられたまま状況を見ていたベラの目が輝いている。特に指揮を取ったパスカルに羨望の眼差しを向けている。

レアは周辺を見回して他に魔獣がいないかを確認する。


「……うん。いないわね。凍らせた方は解体して皇帝に渡しておいて。もう一匹は解体してうちで引き取るわ」

「かしこまりました」


魔獣の解体は時間がかかる。ワイバーンの様に大きな魔獣であれば尚のことだ。騎士達がいるのがありがたい。


「悪いな。解体まで任せちまって」

「良いのよ。この時代に空賊はいないし、騎士達も隙を持て余してたんだから。

……さて。お茶の続きをしましょうか」

「賛成〜」


後に『魔王を単騎で討伐した賢者レア』『海龍を三枚おろしにした海帝サラ』と共に『飛龍を一瞬で氷漬けにした氷の皇帝アルノー』と吟遊詩人の詩になりケンが頭を抱える事になるのだが、それはまた別のお話だ。






王国では帝国と水の国から皇帝と女帝が急遽いらっしゃったと言う事もあり大騒ぎとなっていた。


「賢者がいるからという理由で一国の王を動かすとは。流石といった所か」

「ただの気紛れに振り回されているだけなんですけどね……」


レアから報告を受けた国王は大笑いして言う。レアをここまで振り回せるのはケンとアンリくらいだろう。


「あの二人は昔から王族だという自覚が足りない所がありますから」

「ははは!余からすると、貴女も規格外である自覚が足りない気がするがな!」

「まあ、技術が衰退したこの時代において、私達の力や知識が常識外れなのは理解しているつもりです。とはいえ、私の抱えている技術を弟子達に教えていかないと400年前の王国復活はできませんし、そもそも私とあのお二人だけでは手が足りませんから」


そう、足りないのは技術力だけではない。単純に人手が足りないのだ。


「帝国も水の国もかなり衰退している様ですし、我らが王国だけでなく帝国と水の国も復興しないといけません。どの道、王国の復興には女帝と皇帝の力も必要ですし、帝国や水の国の復興も手助けする必要がありそうです」

「そう言うものなのか?」

「正直、この状態でどうしてこの世界が無事なのかがわからない程なのです」


ずっと不思議だった。どうしてこんな状態で世界の均衡が保てているのか。いや、ありがたいけど、何かが犠牲になっているとしか思えないのだ。


「ふむ。書庫にある400年前の王国についての書物を読んでいて私も思っていた。この世界は3つの国の魔力によって均衡が保たれていたと」


クリストフは言う。流石に賢いな。


「御慧眼です。そもそもこの王国には大きな龍脈柱があり、それを中心に国が建国されていました。そして、それは3カ国に一つずつあります。そこから龍脈を使用して世界の均衡を保っていました」


王国の中心にある城の直下にある龍脈柱と王国中に設置された魔導具によって王国を防衛していた。そしてそれは帝国と水の国でも同じ様なものが作られていた。その魔力を1箇所に集めて、そこにある世界最大の龍脈鉱に流し世界を維持していたのだ。裏を返せばそれがなければ世界の均衡も保てないはずなのだ。


「世界の均衡が保てないとは具体的に言うと……」

「この世界の自然に『魔素』と呼ばれる魔法を発動させるのに必要な魔力の源があるのはご存知ですよね?」

「ああ。魔素は自然に存在する魔力の源であり、魔力を必要とする魔獣達や獣人には必要不可欠。これがなくなれば獣人も魔獣も生きておられず、魔法使いも生まれなくなると聞く」

「その通りです。では、その魔素がどうやって生成されているのかはご存知ですか?」

「いや……しかし、その口振りからすると、龍脈が関係しているのか?」

「御慧眼です。世界の魔素を維持しているのは龍脈。そしてそれは自然に補充されるものではありません。そのため創造神の神託もあり、我々『魔導具術師』が技術を結集して国ごと魔導具にしたのです」

「国ごと……」

「つまり、それが現在は機能していないという事かの?」

「そういう事です。それでも魔法は使われる。魔素は消費される。龍脈から補充されないと魔素は当然少なくなっていく。でも、この世界の魔力は減ってはいない。つまり何処からか魔素が補充されているという事です」


陛下とクリストフは少し考えている。


「そもそも『龍脈』の存在すら城の書庫に貯蔵されている本で知ったからな……」

「龍脈にはその様な役割があったのか……」


その時、クリストフは何かに気がついた様に眉根を寄せる。


「3カ国の龍脈を集めていた龍脈というのは具体的にどの辺りにあるのだ?」

「海上ですね。王国からそこまで離れてはいませんが、3カ国の丁度真ん中ですからね」

「その辺は確か邪神が現れた辺りではないですか?」

「そういえばそうだな」

「……邪神」


ナニソレ?知らないんだけど?


「そうか。邪神戦争が起きたのは賢者様が魔王戦でお亡くなりになってからだな。

邪神のせいで世界の魔素が増えすぎ、魔獣達が暴走を始めた。我々人間達は魔獣から国を防衛するだけで手一杯だった。そこに姿をお見せになったのが創造神様だ」

「創造神様は世界に増えすぎた魔素を魔法に変えた。しかし、それでも邪神を倒すには至らず、結局は神託を受けた当時の王太子とその婚約者、数名の護衛と騎士によって海底深くに封印したという話だな」


約300年前の話だそうだ。


おい、創造神!また伝達ミスか!報・連・相!


というか、セバスチャンからもそんな報告なかった気がするのだが。


「魔王の影響についてにのみ絞ってご報告致しておりましたので、邪神戦争については報告が漏れておりました。申し訳ございません」


屋敷に戻った時に確認すると、セバスチャンはそう言って謝罪をする。確かにあの時の急務は魔王の事だった。それを責める訳にはいかない。


「邪神が現れて封印された場所って龍脈鉱がある所?」

「そういえばそうですね」

「もしかして、邪神が封じられた場所って龍脈鉱じゃないよね?」

「……確かにこの世界の魔素の量は私も気にはなっていました。300年前の邪神戦争の影響で一時的に魔素の量が増えていたとはいえ、100年も保つ量ではなかったはずです」


創造神さえ討伐できなかった邪神を封印する場所なんてそんなにない。その位置なら龍脈鉱以外に場所はないはず。

すると突然ドスンっと言う揺れと共にゴゴゴッという地鳴りが響き渡る。


「何だろう?随分違和感のある揺れだね」

「ただの揺れではないですね」


訓練していたエルフ騎士団が駆けつけてきた。


「賢者様!」

「大丈夫よ。ただの地震だとも思えないし、調査をお願いしたいの。場所は邪神戦争で邪神が封印された場所近辺。その辺にあるはずの龍脈鉱の調査もお願いね」

「はっ!」


彼らと入れ替わる様にアルバンが入ってきた。


「敷地内に異常はありませんでした。ペガサス達も動揺はした様ですが、混乱は起きていません。クロエ達が王都内の様子を見に行っています」

「ありがとう。セバスチャン、邪神戦争についての資料を集めてちょうだい」

「かしこまりました」


龍脈鉱に封印されているなら非常に面倒くさい事になる。お願いだから違う場所に封じられていてくれ。


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