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賢者レアの復活  作者: huwanyan
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400年で起きた事

外に出ると敷地内は結界が発動して守られている状態。上空には鳥の従魔に乗っている騎士達。


「あらー。敵認定されちゃったかな?」

「急なご帰還でしたからね。驚かれているのでしょう」


私達に気がついたのか、攻撃が止む。


『賢者レア様の屋敷に勝手に入り込む狼藉者よ!大人しく投降せよ!』


風魔法で声が伝わってくる。セバスチャンはため息を吐いて風魔法を使う。


『私はこの屋敷の管理を主人レア様より仰せつかっている執事セバスチャンと申します。

我が主人レア様が400年ぶりにご帰還なさったというのに『狼藉者』とは随分ですね。しかも一言もなく攻撃。これは迎撃をされても文句はないという事でよろしいでしょうか?』

『その手には乗らないぞ!賢者レア様は400年前に魔王をその命と引き換えに倒し、遺品も残さず消滅された!』

『では私の目は、主人が本物か偽物かの区別さえ付かない節穴だという事ですかな?随分と舐められたものですね』


返答は返ってこない。困惑している様だ。


「セバスチャン。迎撃は待ってね」

「承知致しております」


無闇に攻撃をしないのは分かっているけど、さっきからセバスチャンの殺気が凄いからね。敷地内を飲み込んじゃってるよ。この執事、私に忠実なのは良いんだけど、私に不敬を働かれると簡単にキレるからなぁ。

少しすると騎士の1人が降りてくる。まだ若いが、騎士団長になったばかりだろうか。剣は携帯しているが、拳士用のガントレットを装備している所を見ると魔導拳士か。騎士には珍しいな。


「久しぶり……いえ、貴方は初めましてかしら。400年前の騎士団長ディオンは仲良かったけど」

「……まだ信用はしていないぞ」

「まず、屋敷の主人でないと出入りできない扉を潜っている時点で察していただきたいけど。まあいいわ。いらっしゃい。どうせ、400年の間に何が起きていたのかを知りたいからね。ついでに他の騎士達も降ろすといいわ。飛びっぱなしは従魔もかわいそうだもの。セバスチャン。魔獣用の食事などを用意してあげて」

「かしこまりました」


そう言って屋敷の中に入った。

1人降りて来た騎士団長はウジェーヌと言うそうで、ディオンの末裔だそうだ。そして、彼らは突然この屋敷が開門された事に気がつき、敵襲だと思ったそうだ。


「自分達が過去に下賜した屋敷の、自分達の手で施した防衛を信用しなさいな」


ウジェーヌは動揺を隠せていない。自分よりも幼く見えるこの小柄な女は、ゆったりと紅茶なぞを嗜み貫禄を見せている。しかも王国指定冒険者達を黙らせている。決して脅されているような空気はない。アルバンはいつも腕を組んでいる。それは冒険者としての風習からナメられない様にするため。国王の前以外は基本腕を組んでいる。それが膝に両手を置いている。これは完全に相手に対して屈服している証だ。女性は右手を左手で隠し、男性は親指を拳の中に隠す。これは相手を攻撃する意思がないことを示すものだ。


「失礼します。ご主人様、お持ち致しました」


セバスチャンが持って来たのは『魔王の塊』だった。


「こ、これは!」

「私が相打ちで倒した魔王のドロップアイテム『魔王の塊』よ。400年経ってるとはいえ、今の魔王でもこれをドロップする程は復活してないでしょうね。それと……」


魔石に隠れていた剣を手に取る。ウジェーヌは目をひん剥いた。


「王国に魔導飛行船を提供した時に見返りとして下賜された宝剣『エクスカリバー』よ。私にとってはこれが貴族の証しにもなっているわ。これで証明は出来たかしら?」


宝剣『エクスカリバー』。王道の名前だが、性能としては中々の物。この世でたった一つしかない光属性の魔剣で、これで初代魔王が討伐されたのだ。ちなみに製作者は私。魔王は闇属性の魔族。闇属性のモンスターは光属性の魔法を付与した武器でないと倒せない事からこれを制作した。魔王討伐後、国宝として、魔王討伐の象徴として国に寄贈されたのを、飛行船の報酬として国から下賜されたのだ。なんだか違和感がある話しだが、魔王以外ではオーバーキルもいい所だし、使い所に困る武器なのだ。よって宝物庫行きであった。

椅子に座っていたウジェーヌと後ろに控えていた騎士達は揃って土下座状態になる。


「大変申し訳ございませんでした!どうか!どうか!私の首一つでお許しを!」

「いや、あんたの首はいらないし、そんな趣味はないわよ」


首を並べて数を数えて悦に浸る趣味はないのだ。その代わりに、400年で何が起きたのかを教えて欲しい。


「もちろんです!

王国では貴女が消滅したと聞き、特に王太子であったアレクサンドル様が大変悲しんでいらっしゃったと伝わっています」


ああ。あのヤンデレ君ならありえるねぇ。幼い時に母を亡くしているから、私を第二の母として慕ってたものね。


「その悲しみ様は凄まじく、レア様のお作りになった魔導具を国中からかき集め、それを作る事を法律で禁じた程でした」


え。何それ。


「どうしてそうなった……」

「何でも、『我が母の魔導具を作っていいのも見ていいのも私だけだ!』と言っていたそうです」


うわぁ……ヤンデレだぁ……


「魔王戦に間に合わなかった騎士達の事も処刑してしまったそうです」

「あの子、相当暴走したのね……。申し訳なかったわ」

「いえ!賢者様のせいでは!」


確かに私のせいじゃない。そうだとは思っていたけど、きっかけは私だから責任を感じてしまう。まさか、そこまでアホだとは……


「結局アレクサンドル様は国王になり暴君と化し、賢者様を失った怒りと悲しみで憤死したそうです。そして第2王子アルフレッド様が国王になられました」


暗殺されたな、絶対。『憤死』の多くは『暗殺』だと相場が決まっている。


「という事は正妻になったアニエスは王妃になったのね。まあ、あの子なら出来たでしょうけど」

「アニエス、ですか?」


あれ?知らないわけないでしょ?第2王子に嫁いだんだから。


「もしかして、あの無才のアニエスですか?」

「無才?」

「私の知っているアニエスはエルフで魔導具がなければ魔法が使えない無才の女ですが」

「私が言っているのは、ハイエルフで、私の一番弟子で、魔導具を作らせたら私より天才だったかもしれない子よ?第2王子の第一夫人として嫁いだ」


騎士達は固まっている。何かが根本的に食い違っている。何処だ?何処が食い違っているんだ?

黙って話しを聞いていたアルバンは少し考えて口を開く。


「無才というのは職業が『魔導具術師』。魔導具によってのみ魔法を行使できる。しかし、魔導具がなければ魔法は使えず、身を守ることさえできないため『無才』と呼ばれています」

「……セバスチャン」

「引き取りを申し出ましたが、一度嫁いだ方を城から出すというのは世間体が悪いと。ハイエルフですし、生きてはいると思います。……無才の話しに関しては私も呆れ返ってしまい、それ以上の情報は収集しておりません」

「そう……」


今度はレアの殺気が溢れ出す。その場の全員が背中に冷や汗を流す。殺気というものはレベルによってその重たさが変わる。魔族であるセバスチャンの殺気が重たいのは当然なのだが、それよりも遥かに重たい殺気をこの小柄で可愛らしささえ感じる女性が発している。そんな現実に誰も思考が追いつかない。


「け、賢者様?」

「すぐに城に向かいます。セバスチャン、準備して」

「かしこまりました」

「騎士団長。すぐに私が行く事を国王に知らせなさい」

「は、はい!」


ウジェーヌは慌てて立ち上がり、他の騎士達と食堂を出る。


「さて、囚われのお姫様を救出に行きますか。……アルバン」

「はい」

「一つ相談があるの」


私は国王との謁見の前に作戦会議をする事にした。


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