もう1人の転生者
数時間後、帝都の真ん中に聳え立つ城に到着した。城の前には多くの騎士が集まっている。
「お待ちしておりました、レア・フォン・アラベール様、エクトル・フォン・オクレール様。帝国騎士団長を任されております、ブリュノ・フォン・オードランです」
「うむ。皇帝に謁見する前にひとつ伺いたい」
オクレール公爵はそう言って自分の騎士に合図を送る。最後尾の馬車から捕縛された帝国騎士が引きずり出された。
「帝国は国賓相手に問答無用で刃を向けるのがマナーなのか?」
「とんでもございません!王国からの来賓相手に刃を向けるなど!」
「そうか。ならば、今回の事はこの騎士達の独断、もしくは反王国派の貴族がやったという事か?」
「……そういう事になりますね」
騎士団長は困った顔で言う。本当かどうかは分からないが、少なくとも騎士団長はこの会談の意味を理解している様だ。捕縛された騎士達を地下牢に入れる様に指示した。ただ、それだけで水に流せる話ではない。本来、先代の皇帝が一方的に国交を断絶したのだし、それを認めた上で国交を再開させて欲しいという帝国側からの申し出なのだ。にもかかわらずこの扱いというのは、今後の交渉で帝国側が不利になるのは目に見えている。そこまで理解しているのはきっと騎士団長だけなのだろう。
「公爵、とりあえず皇帝に謁見しましょう」
「賢者辺境伯?」
「私の予想が正しければ、皇帝に謁見してからの方が話が早い気がします」
公爵は不思議そうな顔をしていたが、話が早くなるならばそうした方が良いと判断してかレアの提案に乗った。レア達は騎士団長の案内で謁見の間に向かう。
「バルバストル王国よりレア・フォン・アラベール様、エクトル・フォン・オクレール様がご到着です!」
騎士団長の声とともに大きな扉が開く。謁見の間には多くの帝国貴族と騎士達が集まっていた。奥の玉座にはまだ若い皇帝が座っている。……やっぱりそうだったか。
「よく来た。歓迎するぞ、賢者レア」
「ご無事で何よりです、皇帝陛下」
最敬礼するレアに皇帝は穏やかに歓迎の言葉を述べる。レアはふっと微笑んで言う。周囲はなんの事だか分からない様だ。当然だろうが。
「私とレア殿の仲だ。硬い話はよそう」
「いえ、今は公式の場ですので」
「それもそうか。いや、皇帝になると色々と面倒だな」
「皇子の時も変わりませんよ。陛下がざっくばらんだっただけで」
「そうか?まあ良いか。とりあえず、うちの騎士達が悪かったな。裏で糸を引いている貴族は分かっているからな。厳正な処分を約束しよう」
「お願い致します」
やはり早かった。まあ、早いのは良い事だ。
サクッと公式謁見は終了し、レアとオクレール公爵は談話室に案内された。
「賢者辺境伯。あの会話は一体……」
「面倒な腹芸をせずに済んだという事ですよ」
紅茶を頂きながら話していると、皇帝が入ってきた。立ち上がって出迎えると、手で制してドカッと椅子に座る。
「面倒な挨拶はなしにしよう。いい加減うんざりだからな」
「相変わらずですね、ケンさん」
「まさか貴女も復活していたとは思わなかったな、レア殿」
皇帝は豪快に笑う。人懐っこくも見えるが、皇帝に相応しい器の大きさもうかがえる笑顔だ。
「全く。本物かを確かめようとしたのは分かりますけど、もう少し穏便にできないものですか?」
「奴らには少しお灸を据えたかったんだ。全く、俺が若いからって勝手なことをしやがって……」
「利用したって事ですか」
「これで少しは大人しくなるだろう。本物の賢者殿なら相手にもなりゃしないだろ?
さあ、400年前の続きをしよう!貴女の事だから、色々と計画はしているのだろう?」
「話が早くて助かります。帝国所有の魔導飛行船を1機作って交易しましょう。設計図はそちらにあるでしょう?」
「ああ、技術者が必要だけどな」
「ならば後日改めて派遣しますよ。貿易の内容はお任せします。今も昔も必要なものは大差ありませんからね」
「海に生息するモンスターと魔獣の素材、それと帝国と貿易をしている水の国から輸入しているものの輸出。『海卵』の輸出だな」
「ですね。航路は今でも?」
「再開させた。ずっと滞ってたらしい」
「人魚族はそんなに気性の荒い種族ではありません。何をしたのですか?まあ、『ナニ』をしようとしたのでしょうがね」
「想像通りだ。人魚の姫を攫った上に言うことを聞かないから殺してその肉を食ったのに不死にならなかった!って理由で人魚の国と国交を断絶した暗愚がいたらしい」
「心中お察しします」
どこの国にも暗愚の君は現れるもの。そしてそのシワ寄せは後世の王や民に来る。彼はそれをどうにかしようとしているのだ。
「俺が皇太子になってから大変だったんだぞ?このおかしくなった帝国を立て直すの。極めつけがスパイの国王暗殺未遂だ」
「こちらも似た様なものよ。当時の宰相が私に敵意をむき出しにしていたのには気がついていたけど、まさか『魔導具術師』を『無才』の位置に落としていたとは思わなかったわ」
「俺もそれは聞いた。貴族が勝手をするのは、俺が『魔導具術師』だって言うのもある様だからな。ったく。俺達の苦労も知らないで……」
「せっかく発展させた技術もここまで衰退していては、あの頃の状態まで戻すのにどれだけ時間がかかるやら分かりませんね」
「「はぁ……」」
皇帝とレアは深いため息を吐く。パスカル達はキョトンとしているが、オクレールは何かを察した様だ。
「もしかして400年前に亡くなった皇子が……」
{彼です。今世では無事に皇帝になった様ですがね」
「俺の魂が無事だったのは賢者殿のおかげだった様だがな」
「そうなんですか?」
それは初耳だ。レアのおかげでとはどういうことだろう?
「単独討伐だったのもあって魔王の魔力を削っていく戦法だったのだろう?そのおかげで『最後っ屁』の威力が少なかったらしい。そのおかげで魂は無事で、創造神が俺達を復活させられたらしい」
「なるほど。そういう事だったんですか」
単騎討伐だったための苦肉の策が功を奏したのだろう。
「ちなみに、水の国に『アンリ』さんがいるぞ」
「あ、彼女も復活してたんですか?」
「そうらしい。交易を復活させるのに助かったよ。今じゃ女帝だからな」
「ご挨拶しないと駄目ですね」
「帝国にいるうちに面会の場を設けるか?」
「お願いします」
結局、今夜の夜会で水の国も参加する事が決まった。
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