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エピソード9 私の屋敷とお店

 快復した私は、後宮を出る事になった。

 後宮近くに屋敷を頂いたのだ。


 王が健在の間は、私とルーベルトの屋敷になる予定だ。

 今は、私が自由に使ってよいらしい。


 後宮の部屋から去る時、アデール様が見送りに来て下さった。


「シャローラ様、王子の事を、よろしくお願いいたします。あの子が恐れるのは、あなたの心が離れる事だけ。そうならない限り、必ず、あなたを守るでしょう」


 アデール様は、私にそう言った。


「馬鹿王子…いや、ルーベルト殿下は私が一人前にしてみせます。ご安心を」


 私は、正直な気持ちで答える。


「あなたは、見た目だけでなく気丈なところまで、亡き王妃殿下にそっくりですね。よろしく、お願いしますよ」


 アデール様は、私の手を取り、そう念を押した。




「ふう…」


 新しい屋敷への荷物の運び込みが終わって、新居のリビングで一息ついていた。

 ルーベルト王子が人をよこしてくれたので、体力的に大変な事は無かった。

 しかし、家具の置き場所や調度品など、女には色々なこだわりがある。

 全て終わるには、1週間ほどかかった。


 そこに、両親が訪ねてきた。


「おお、我が娘よ。よくぞ王子との婚約を決めてくれた」


「さすがは、私の娘。貴族として育ててきたかいがあります」


 両親は、口々に私を褒めてくれた。

 実際の話を聞いたら、卒倒してしまうかもしれない。

 私は、適当に話を合わせた。


「もう体の方は、大丈夫なのか?」


「そうですよ、もう大丈夫なの?」


 両親は、私の体を案じてくれていたようだ。


「手紙に書いた通り、宮廷魔導士様が治療して下さったので、大丈夫よ」


 私は、そう言った。


 両親は、安心して帰っていく。

 これだけでも、愛の無い婚約を王子としただけの事はあった。

 幾分、肩の荷が下りた気がする。


「シャローラお嬢様、ルーベルト殿下がおいでです」


 メイドのアンナが、私に声を掛ける。

 両親は、家で私の世話をしていたメイドのアンナを連れてきてくれていた。

 今日から、ここで私のメイドとして働いてくれるそうだ。


 赤毛の地味な女の子だ。

 歳が私と近く、色々と相談にも乗ってくれる。

 私の、お気に入りのメイドだった。


「分かったわ。入っていただいて」


 私は、アンナに言った。


「ようやく落ち着いたようだなシャローラ」


 彼は、そう言って部屋に入ってくる。

 相変わらず、見た目だけは憎たらしいほど、かっこいい。


 私達は、子供の頃のように、お互い呼び捨てを許した。

 その方が婚約者らしいからだ。

 ただ、他人がいる時は、私からは”殿下”だ。


「そうね、これでまた商売が出来れば最高なんだけど」


 どうせ無理だと分かっているが、ついつい口から出てしまう。

 王子の婚約者が、商売をするなんて聞いた事が無い。


「何がやりたいんだ?力を貸そう」


 ルーベルトは、私の軽口を真に受けて、あっさりと承諾する。


「え?いいのかしら、ルーベルト」


 私は、目を丸くする。


「君には、何でも自由に力を発揮してもらいたい。今だから出来る事がある」


 ルーベルトの言う通りだ。

 本当に王子と結婚してしまったら、制約は多くなる。


「では、化粧品や洋服を扱う、お店がやりたいですわ。美容院を併設して、出かける前の女性達が美しく着飾る事が出来る場所にしたいです」


 私は、商会で本当にやりたかった事を口にする。


「ほう、さすが具体的だな。店舗を探してみよう。仕入れ先を考えておいてくれ。手配する」


 彼は昔から、素晴らしい行動力の持ち主だった。

 特に私の為には、何でもしてくれる。

 それが、時々お節介に感じる事のだが。




「まあ、なんて素晴らしい!ここは、理想的な立地です」


 数日後。

 私は、ルーベルトが用意してくれた店舗の前に立って、感嘆の声を上げた。

 そこは、王都の大通りに面した、最高の場所だった。

 広さも充分で、私の思い通りの店作りが出来そうだ。


「そうか、ではすぐに契約しよう。後、店作りに協力してくれる方を、君の屋敷に呼んである。会ってくれ」


 ルーベルトは、さっそく契約を決める。

 私に依存は無い。

 ただ、彼は私の事に関しては後先考えないところがある。

 失敗しないように、私が気をつけねばと思った。


 それにしても、協力してくれる人というのは誰だろう?

 私達は、屋敷に戻った。



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