エピソード7 不本意な再会、絶対ぶっとばす!
次話は、16時にアップします。
私は、婚約の件について、問いただす為にアデール様に頼んで、ルーベルト王子を呼び出した。
本当なら一生会いたくない相手。
こちらから呼び出すなど、とんでもない屈辱だ。
しかし、このままでは無理矢理に結婚させられてしまう。
遺恨の残る王子と会うのも、致し方なかった。
布団の中の私は、ルーベルト王子に、どんな文句を言ってやろうか思案していた。
色々な思いが、ぐちゃぐちゃになり、自分でも信じられないような暴言を次々と思いつく。
この私が味わったドン底を、全て味合わせてやりたい。
例え王子に責任が無かったとしても、そうでなければ気が済まない。
部屋の扉を叩く音がする。
「お入りください」
返事をすると、アデール様が長身の男を連れて入ってきた。
私より、頭2つは背が高い。
黒髪に目鼻立ちが整った美男子。
黒い儀礼服に、黄金の刺繍のほどこされたマントと剣帯を身に付け、腰には白い鞘のサーベル。
肩幅が広く、なんとも言えない威厳を漂わせている。
あれは、私を修道院から連れ出した人。
やはり、あの方は、ルーベルト王子だったの?
いけない!
私は、彼の威厳あるたたずまいに、さきほどの決意が揺らぎそうになるのを必死で堪える。
「回復してきたようで良かった」
彼は、ベッドの横の椅子に座り、私の手をとると、優し気な目をしながら、そう言った。
その時、私の両目から涙が溢れる。
何故泣いたのか、理由は分からない。
でも、止めようがなかった。
「馬鹿…私は、あんたが嫌いなのよ。婚約なんて、一人で想像しておくだけにしなさい…」
私は、泣きながら、考えていた事の一部を口にした。
「すまない。ここに、あなたを招き入れるには、他に方法が無かった。どうしても、あなたに最高の治療を受けてもらいたかった」
ルーベルトは、本当にすまなそうな顔をした。
そこには、私に謝る昔の彼の面影が確かにあった。
「あんたも、本当は、こんなところにいちゃいけないでしょう?」
呼んでおきながら、私は変な言いがかりをつけた。
「すまない。本当は、成人した王子が後宮に入る事は出来ないのだが、アデレードに頼んで入れてもらっているのだ」
彼は、そう言った。
「ママのおっぱいが忘れられない、お子ちゃまね。もう分かったから、さっさと帰りなさい…」
私は、扉を指さす。
これが、今の私の精一杯。
それ以上、文句を言う事は出来なかった。
「分かった。婚約の件は、君が回復したら何とかしよう。今は、養生してくれ」
彼は、そう言うと一人で部屋を出て行った。
「うわーん!」
婚約を何とかするという言葉を聞いて、何故か無性に悲しくなってしまった。
ウイリアム公爵に婚約を破棄された時と同じような気持ちが、胸の奥から溢れてくる。
私は、子供のように大声で泣き出した。
アデレード様は、私の肩を抱き寄せて、胸を貸してくださる。
色々な思いが噴き出して、よく分からない気持ちで私は泣き続けた。
よろしければ、評価とブックマークいただけると嬉しいです。
励みになります。