エピソード43 バージンロード
数カ月後、私とルーベルトの婚礼が行われた。
私は、自分でデザインしたウェディングドレスに身を包んでいる。
職人達が述べ3000時間かけて手作りした豪華なオートクチュールの白いドレス。
10万個の本物のクリスタルや真珠を使って、薔薇の刺繍がほどこされている。
25mあるベールを後ろで持っているのは、なんと先に婚礼を済ませたレオドール王太子とミネルヴァ王女。
彼等の婚礼では、逆に私とルーベルトがドレスのすそを持った。
ルーベルトに、おねだりして、教会も彼等と同じブロワーヌ大聖堂にしてもらった。
この国で一番大きな教会だ。
教会に入る前、母が私のウェディングベールを降ろしてくれる。
父のエスコートで、これからバージンロードに向かう。
「今まで心配かけて、ごめんない。お父さん、お母さん、私、幸せになるね」
父と母に言った。
母は、涙ぐんでいる。
父は、緊張でガチガチだ。
オーケストラの生演奏で、ウェディングマーチが流れるバージンロードの上を、父のエスコートで歩いていく。
この曲を聞くと、なんとも幸せな気分になって、にやついてしまう。
教会の中に座る全員の視線が私に集まる。
オーレッド公爵夫人、王様、王妃アリエッタ様、アデール様、ドナシエル宮廷魔導士様、店の従業員のみんな、多くの人が私を見ている。
こんなに恥ずかしい思いは初めてだ。
でも、一生のうちで一番綺麗な私を、みんなに見て欲しい。
バージンロードの先には、白いモーニングを着たルーベルトが待っている。
この国で一番かっこいい旦那様。
そして、世界で一番、私の事を愛している旦那様だ。
私は、その元へ、永遠の愛を誓いに歩いていく。
ルーベルトと牧師様が立っている、少し高い場所に上がる時、会談でスカートのすそを踏んでしまった。
「どあっ!」
私は、思わず声を出して転びそうになった。
一歩前に出たルーベルトが、私の体を支える。
「おお…」
会場中から、安堵の溜息が聞こえる。
恥ずかしい!
私は、強く目を閉じた。
目を開けると、視線の前にルーベルトの顔があった。
彼を見上げる私。
「今日こそは、僕と一生の愛を誓ってもらうよ」
ルーベルトは、真剣な目で私にそう言った。
「今日だけだからね!もう一生言ってあげないんだから。後、キスは頬。人前で口になんかしたら、許しませんからね!」
恥ずかしくなった私は、思わずそう言ってしまった。
ファーストキスは、おあずけだ。
そして、私達は永遠の愛を誓った。
もう二度と離れる事はない。
いや、彼が私を離す事はないだろう。
今世も来世も…。
婚礼の後の晩餐会で、レオドール王太子が挨拶する。
「兄は、子供の頃からシャローラ姫の事しか頭にない人でした。彼女が結婚してくれなかったら、傾国の王子と呼ばれていた事でしょう。兄と結婚してくれて、本当にありがとう、シャローラ姫!」
会場に笑い声が広がる。
そうよ、もっと感謝しなさいルーベルト!
私は、横に座るルーベルトに視線を飛ばした。
彼は、バツの悪い顔をしている。
「うふふふ」
閉店後の私の店。
ウェディングドレスを見て、私は幸せな気分になっていた。
あの日のウェディングドレスは、私の店の一番いい場所に飾られている。
これから先、半年はレンタルの予約で一杯だ。
そうしないと、こんな豪華なドレスは作れなかったし、沢山の女性が幸せになる為の手伝いが出来るなら、このドレスも本望だろう。
横には、ルーベルトが一緒にいる。
二人の指には、結婚指輪が輝いていた。
彼は毎日、私に愛していると言ってくれる。
私は…まあ、秘密だ。
私のブランドは国際的に有名になり、支店が各国に作られた。
私自身も、王妃になれなかった女という不名誉な噂もあるが、王妃とそっくりの美女と言われ、本物以上に美化されて有名になってしまった。
何もかもが、うまくいっている。
「後、5回くらい結婚式をしようかしら」
私は、冗談を言う。
「何回でも」
ルーベルトは、笑って言ってくれた。
いや、もちろん冗談ですよ?
しばらくインターバルを置いて、婚礼の疲れの取れた私達は、明日から新婚旅行に出掛ける。
といっても旅行先は、私の実家だ。
二人の思い出の湖、美しい山と川が私達を待っている。
私は、今日も幸せだ。
この幸せが永遠に続きますように。
素直に、そう思った。
完結です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございますした。
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泣き虫高飛車バツ2令嬢の熊髭騎士団長様
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