エピソード4 もう一生、誰とも結婚しない
次話、20時アップ予定。
私は、一晩泣きとおした。
ダニエラとルーベルト王子への怒り、まだウイリアムを信じたいという馬鹿な気持ち。
頭の中が、ごちゃごちゃ。
どこに気持ちを持っていっていいのか分からなかった。
次の日、私は、両親に応接室に呼び出された。
「王子との噂は、すでに貴族中に流されているようだ。自分達の保身の為に、なんという薄情な連中だ!あのような男と、お前との結婚を許すべきではなかった。許してくれシャローラ」
父は、泣いて私に謝ってくれた。
「こうなっては、王子に責任を取っていただくしかあるまい」
父が、そう言う。
「しかし、王子とシャローラでは身分が違いすぎます。とても、こちらから申し出る事は…」
母が、言った。
「王子は、シャローラを好いておられるのだろう?そうであれば身分など考える必要はあるまい」
父が反論する。
「やめて下さい!あの王子のせいで婚約を破棄されたのですよ!今になって、その王子に擦り寄るなど、私の誇りが許しません!そのような申し込みをされるなら、私は死にます!」
私は、思わず、そう叫んだ。
「しかしだシャローラ。噂が広まっている上に不義密通で婚約破棄されたとあっては、もはや他の縁組は望めんぞ」
父が、私をなだめる。
「私は修道院に参ります!もう、一生誰とも結婚いたしません!」
私は、そう宣言した。
数日後、私は部屋で、修道院へ向かう準備をしていた。
「シャローラ、ルーベルト王子がお見えになっている。お前に謝罪がしたいと。何か出来る事はないかと仰せだ」
父が、部屋をノックし、中の私に声を掛けた。
「会うものですか!すぐに帰っていただいて!」
私は、大きな声で言った。
「そうか、分かった…」
父が、部屋から離れていく足音が聞こえる。
あの馬鹿王子め!一生許さない!!
私の中に、怒りの気持ちが蘇る。
私は、修道院に向かう馬車に乗り込んだ。
走る馬車の横に、新たな馬の足音が聞こえてきた。
「迷惑をかけてすまないシャローラ!ウイリアム公爵に考え直すように頼んだのだが、受け入れてもらえなかった!私に何か出来るなら言ってくれ!」
場所の外から、ルーベルト王子の声が聞こえてくる。
「…」
私は、一切答えない。
彼のいる方に顔を向ける事は、一度も無かった。
諦めたのか、やがて馬の足音は離れていった。
山の奥に建てられた修道院での生活が始まる。
街から断絶された禁欲生活。
何不自由なく暮らしてきた私には、辛い毎日だった。
そもそも神への信仰心からやってきたわけではない。
修行に身が入るわけがなかった。
陰鬱な日々を送るだけ。
ただ、ウイリアムとの幸せな日々を思い出して、人知れず泣くだけ。
このまま、老いて朽ちていくだけなのだろうか?
父の様に商売で成功したかった。
母の様に幸せな家庭を築きたかった。
ダニエラとルーベルト王子への恨みの気持ちを捨てる事が出来ない。
彼女の方が、地位と金があっただけ。
違う。
彼女は私より若く美しく、気立ても良かった。
私は彼に愛されて、商売も上手くいって調子に乗っていた。
婚礼を伸ばされている時に気付くべきだった。
彼の愛が、すでに冷めていた事に。
気が強くて、計算が早いだけの元商人の娘。
そんな私より、同じ公爵の身分の彼女の方が気が合ったに違いない。
違う。
そこまで私が責任を感じるのも、おかしい話ではないか?
裏切られたのは私。
まだ、彼等を祝福する気にはなれなかった。
そんな日々をすごしながら、1年の時がすぎた。
私は21歳になっていた。
しかし、私の中でウイリアムを愛する気持ちは、消す事が出来ない。
ルーベルト…私も、人の事は言えないわね。
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