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エピソード39 彼を破産させて大利益!?

 私の屋敷では、婚約お披露目舞踏会に出世する貴族の女性達を集めてのドレス受注会が行われていた。

 店の在庫のドレスが広間に所狭しと並べられ、貴族の女性達が品定めに夢中になっている。

 後輩の従業員達が、その接客に追われている。


「これは、凄い売り上げになりそうだな」


 それを私と一緒に見ていた、ルーベルトが言う。


「そうね、何着売れるか分からないけど、とてもいい宣伝になるわ」


 私は、満足だ。


「いや、良い宣伝になるなら、ここに来て下さった淑女の皆様には無料でドレスを提供するのはどうかな?」


 ルーベルトが、そう提案してきた。


「ええ?大変な、お金がかかるわよ?」


 私は、目を丸くする。


「これも、先々への投資というものだ。おそらく売り上げとして10倍になって返ってくると感じている。もちろん、費用は私が出そう」


 ルーベルトは、自信ありげだ。


「本当!?嬉しい!!」


 私は、ルーベルトの腕に飛びついた。


「…」


 貴族の女性達の視線が、集まる。

 私は顔を赤くして、そそくさとルーベルトから離れた。


「さあ、ここに集まって下さった淑女の皆さん!婚約お披露目舞踏会に着用する1着に限り、シャローラブランドのドレスを無料で提供いたします!ここにある分だけですよ!すぐに、お気に入りのドレスを押さえて下さい!他の方に先を越されてしまうかもしれません」


 視線が集まったところで、ルーベルトが宣言する。

 貴族の女性達は、色めき立って慌ただしくドレスを吟味し始める。


 ここに集まっているのは、王家の婚約パーティーに呼ばれる有力な貴族の女性達だ。

 その中でも、センスが良く、人気のある女性達を選んで呼んでいる。

 その影響力は、大変大きい。

 私のブランドが、一流として認めらえるチャンスだ。


 ルーベルトの投資のおかげで、そのチャンスが最大化される。


「本当に大丈夫なの?」


 私は、彼に耳打ちする。


「実は、破産しそうなんだ。しっかり稼いでくれよ。君のセンスを信じてる」


 ルーベルトは、笑顔で言った。


「そうね!私達の財布は、一緒になったも同じ。必ず投資分は、回収するわ!」


 私は、胸を張る。


 ここにいる貴族の女性達に加えて、ミネルヴァ王女、オーレッド公爵夫人、私が、新しいシャローラブランドのドレスを着る。

 婚約お披露目舞踏会は、シャローラブランドの新作発表会と言っても、差し支えない。


 うまく行けば、この国だけでなく来賓である周辺国の貴族や王家の方々にも、ブランドの名前は広まるだろう。

 私のシャローラブランドと店は、国際的に有名になる。


 ルーベルトは、見込みのない投資をしたわけではない。

 これは充分取り戻せる投資だ。


 ルーベルトは、商売のセンスもよく、これからも頼りになるパートナーになってくれそうだ。

 もちろん、美形でファッションにも理解がある。

 今度は、男性向けにも手を広げようと、考えをめぐらす。


 彼の協力があれば、成功するに違いない。


 控室の準備も万端。

 舞踏会1週間前、全てのドレスや装飾品が控室に揃う。

 メイクや髪のセットを行うスタッフも準備出来た。




 舞踏会直前、私達は、後見人であるオーレッド公爵夫人の王都での別宅にお招きいただいていた。


 オーレッド公爵は、背が低くて太った紳士だった。

 常に、にこやかで物腰も大人しい。


 彼は、メモを取りながら、私達の話を聞いて婚約の挨拶を考えていた。


「…というわけで、ルーベルト公爵がバルコニーに立つシャローラ姫に愛の告白をして、それを受け入れたのが二人の馴れ初めという事でいいかな?」


 公爵夫人よりも、二周りほど年上のオーレッド公爵が、老眼鏡を動かしながら言った。


 実際には、ルーベルトのしつこさにブチ切れて、怒ったんですけどね。


「まるで戯曲の様なロマンチックな告白ね。素敵だわ。まあ、私達の方が熱々だったけどね」


 公爵夫人が、オーレッド公爵の腕にしがみつく。


 ああ、他のカップルからは、こう見えるんだ。

 人前で絶対こんな事は、しちゃいけないな。

 私は、ジト目で二人を見つめる。


「何を言ってるんだ。今でも、熱々だよ」


 オーレッド公爵が、夫人を抱きしめようとする。


「駄目よ、人前です」


 夫人が、オーレッド公爵を制止する。


 いや、どっちもどっちですよ公爵夫人。


「しかし、こんなに嘘だらけで大丈夫なんですか?」


 たまらず、私は言う。


「いいのよ!愛の物語は、嘘と夢で出来てるの。あなたも、国民の憧れの存在になりたいでしょう?口裏は、ちゃんと合わせておかないと」


 公爵夫人は、私に注意する。


「いいじゃないか、何なら私は、前世から君を思っていたという設定でもいいぞ」


 ルーベルトは、ノリノリだ。

 彼は、恋愛については夢想家だった。

 何しろ子供の頃から、私しか好きになった事がないのだから。

 困った、お坊ちゃんでしかない。


「私は、今世の恋愛だけで精一杯だわ。大体、前世から好きなんて犯罪よ!ストーキングです。本当に愛しているなら、もう相手を解放しなさいよ」


 私は、言いたい放題言った。

 どうせ、何を言ってもルーベルトは、私を愛し続けてくれる。

 その自信だけは、充分にあった。

 だって、ルーベルトなんですもの。


「すまない、シャローラ。言いすぎた。前世から好きって話は、ふざけすぎだ」


 ルーベルトは、素直に謝った。


「では、シャローラ姫は、夜のバルコニーで、彼の愛を受け入れたという事でいいかな?」


 オーレッド公爵が、にこやかに言う。


「はい、その方向で」


 ルーベルトが、返事をする。


「まあ、とりあえずは仕方ないわね」


 私は、そう答えた。


 明日は、いよいよ国民への婚約報告、そして婚約お披露目舞踏会だ。

 私のブランドと、お店の運命もかかっている。


 そして、明日こそルーベルトに私の気持ちを伝えなければならない。

 もう、逃げ回ってばかりはいられないのだ。

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