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エピソード38 戦う、お姫様

「ここは、譲れません」


「ここは、私の案でいかせてもらいます」


 私とミネルヴァ王女の視線が、バチバチと火花を飛ばす。

 オーレッド公爵夫人が、溜息をついた。


 私とルーベルト、レオドール王太子とミネルヴァ王女、オーレッド公爵夫人が、顔を合わせて婚約お披露目舞踏会の打ち合わせをしていた。


「こんなどうでもいい事、さっさと決められないんですか?」


 レオドール王太子が、後見人であるオーレッド公爵夫人に耳打ちする。


「ただでさえ、婚約や婚礼の準備は色々と揉めるものです。それが二組同時では、揉めて当たり前。これもカップルの最初の共同作業ですから、いい加減にしていると一生言われますよ。後になってみれば、いい思い出になるので付き合って下さい」


 公爵夫人が、レオドール王太子に、そう返す。


「舞踏会での立食メニューは、ブロワーヌ王国風でいかせてもらいます。我が国の社交界で行事なので!後、私の家の領地の名産であるアプリコットはデザートとして外せません」


 私は、きっぱりと言った。


「この舞踏会の立食メニューは、インぺリア王国風で揃えると約束して下さったではないですか。それに、デザートはインぺリア王国の名産で私の好きなベリー系にすると。何とか言って下さい!」


 ミネルヴァ王女が、横に座るレオドール王太子の袖を引っ張って言う。


「ははは…」


 レオドール王太子が笑って誤魔化そうとすると、ミネルヴァ王女の鋭い視線が彼に突き刺さる。


「料理は、両国どちらのものも出す。デザートも両方。それでいいな!」


 しびれを切らしたルーベルトが、強く言う。

 私達は、渋々従う。


「よし、終わり!次は会場の飾りつけの花だ」


 ルーベルトが、てきぱきと話を進める。


「花は、白百合の生花を。それにツタの緑をそえて」


 ミネルヴァ王女が、言った。


「赤とピンクの薔薇の生花をふんだんに使いましょう!」


 私は、そう主張する。


「嫌ですわ!派手すぎて、下卑ています」


 ミネルヴァ王女が、反対する。


「私達の晴れ舞台ですよ!ここで派手にいかなかったら、いついくんです!」


 ここで引くわけにはいかない。


「どちらにしても、生花を会場全体に使うと大変高価になります。よろしいですか?舞踏会の費用は、王家と、女性の両家で分担の予定ですよ」


 オーレッド公爵夫人が、簡単な見積もりを言う。


「ええ!私の家も払うんですか!?」


 私は、驚いて言った。


「無名の家柄なら別ですが、貴族や王家ならば当然の事です。払わせないと、あなたの家とインぺリア王家に恥をかかせる事になるので」


 オーレッド公爵夫人が、説明する。


「では、私とルーベルトの席に薔薇の生花を…」


「私達の席には、白百合の生花を」


 私とミネルヴァ王女は、自分達のテーブルにだけ生花を置く事にする。


「では、その他は備え付けの造花という事で、よろしいですね」


 オーレッド公爵夫人が言った。

 私達は、頷く。


「次にティアラを頂く儀式ですが、シャローラさんが白にモノトーンの装飾をしたドレス。ミネルヴァ王女が、インぺリア王家の正装である白のローブに青いマントと聞いております。それは、いいとして、別に舞踏会用のドレスを2着用意していただきます」


 オーレッド公爵夫人が、新たにドレスを2着用意するように言った。


「はあ?舞踏会中にドレスを着替えるのですか?」


 レオドール王太子が、目を丸くする。


「これだから男性は分かっていない。国民への婚約発表にティアラ授与、いつもと違い舞踏会は1日中続きます。その間、主役である女性は1日中、人に囲まれて笑顔を振りまかねばなりません。着替えている間だけが休める時間なのです。その間に簡単な食事などをして、しのいでもらいます。これだけ長尺になりますと、2回くらいは休息が必要でしょう?」


 オーレッド公爵夫人が、ドレスが2着必要な理由を言う。


「なるほど。男は、その辺を気にせずに人前で食事したりしますからね」


 レオドール王太子が、納得する。


「そうです。高価なドレスを着た女性は、人前でパクパク食べたり出来ません。配慮が必要です」


 オーレッド公爵夫人が、言う。


「後は、貴族達が会場に入る時の順番、御祝への返礼品、国民への挨拶文、貴族向け挨拶文、宮殿に向かう馬車の飾りつけ、会場で流す曲、等々を決めてまいりましょう」


 オーレッド公爵夫人が、これからの準備を説明する。


「はぁ」


 ルーベルト公爵とレオドール王太子が、大きな溜息をついた。


「婚礼に比べれば、楽なものです」


 公爵夫人は、表情一つ変えない。


「はいはいはい!提案があります!」


 私は、手を上げて言った。

 この場で発表しようと考えていた計画があるのだ。


「幸いな事に、参加される貴族の女性達の多くが、私の店でドレスを新調して下さるそうです。そこで、彼女達に一人づつレッドカーペットを歩いてもらって、ドレスをお披露目してもらいたいの」


 私は、そう提案する。


「は?あなた達の婚約お披露目なのですよ?」


 オーレッド公爵夫人が、疑問を呈する。


「だって、こんなによい宣伝の機会は無いんですもの。その順番や、流す曲、着替えやメイクアップの為の控室も用意しないと!もちろん、この費用は、私の店が持ちます。それに、最高の余興になるわ!」


 私は、そう宣言する。


「私は、別にどちらでもいいですけど。ただの舞踏会が続くのでは、つまらないわ。休息出来そうですし」


 ミネルヴァ王女は、反対しない。


「仕方ないですわね。あまり羽目を外さないように」


 公爵夫人は、了承してくれた。



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