エピソード37 ルーベルト公爵は入り婿
いよいよ、婚約お披露目舞踏会の日程が、2カ月後に決まった。
レオドール王太子とミネルヴァ王女に便乗する形にはなってしまったが、私の檜舞台となるのは間違いない。
ルーベルトは、公爵となる事が決まった。
さらに、私の父の申し出で跡継ぎとして領地を受け継ぐ事になる。
私以外に子供のいない父が、入り婿としてルーベルトを迎える事にしたのだ。
父はルーベルトに当主の座を譲り、我が家は子爵から公爵に格上げになる。
私の屋敷に、両親と私、ルーベルトが集まった。
「お嬢様を、王太子妃にする事が出来ず、申し訳ありません。しかし、必ず幸せにするよう努力します」
ルーベルトが、父に頭を下げる。
「いやいや、我が家には後継ぎがおりませんでしたので、この話は渡りに舟。これで、我が家にも王家の血が入り、真の貴族となって格が上がったというもの。シャローラも、胸を張って姫を名乗れる立場になれました」
父は、満足気だ。
「これからは、私が、あなたを食べさせますから、入り婿としての立場をわきまえて頑張って下さいね」
私は、冗談めかして言った。
「ルーベルト公爵に失礼な事を言わない様に!まったく、幼馴染だからといって王家の方に、なんて事を!もう子供ではないんですから、わきまえるのは、あなたですよ!」
母が、私を叱る。
私は少し、しゅんとする。
「いえいえ、私にも政府の役人としての仕事の報酬はありますが、シャローラさんは社会に出て働く女性。頼りにしております」
ルーベルトが、そういう。
実際、まだルーベルトの役人としての報酬の方が、私の収入よりも多い。
それに王家出身のルーベルトには、それなりの財産が分与される予定だ。
領地も追加で与えられ、我が家の領地は倍増するに違いない。
しかし、最近の店とブランドの収益の伸びを考えると、将来的には私の方が稼げるようになる可能性は充分あった。
子供の頃から対等に接してきた私としては、負けたくはない。
それは置いておいて、将来的には私の育った屋敷に戻って暮らせるのは嬉しかった。
かっこよくて優しい、お婿さんを貰う。
貴族の娘なら、一度は憧れるシチュエーションだ。
家の為に不本意な結婚をさせられる貴族の娘が多い中、これは素晴らしい結婚話だった。
元々平民出身の父は、一人娘の私の自由にさせてくれていたが、最高の縁談を父にプレゼント出来たと思う。
両親と私は、ずっと一緒にいられるのだ。
「ところでルーベルト公爵。婚約お披露目舞踏会の前に、大通りを馬車でパレードするはず。娘の為に、オープントップの馬車を我が家で新調しようと思うのだが」
父が、提案する。
「いいえ、それはレオドール王太子とミネルヴァ王女の馬車に便乗しようと思いますので…」
ルーベルトが、断ろうとする。
「嫌よ!別の馬車にしましょう。百歩譲って、ミネルヴァ王女の後ろを走らせてもいいわ。でも、馬車は別にして!それも、決して王女に負けない馬車で!」
私は、はっきりと言う。
「ええ?もう王太子ではない私と君の馬車で、そんな豪華な馬車を!?無駄遣いは、いけないよ」
ルーベルトが、驚いて言う。
「ルーベルト公爵、一つアドバイスしますけどな。婚約や婚礼は、女の為のもの。好きにさせないと、一生恨まれますぞ」
父が、ルーベルトに忠告してくれる。
「なうほど…肝に銘じます」
ルーベルトが、納得して頷く。
「分かった、好きにするといい。ただし、隊列は私達が後ろ。馬車代は、半分私が持つ」
ルーベルトが、私に言う。
「そういえば、城での舞踏会の前に、国民への婚約発表の席があるでしょう?リリアンヌ宮殿で。ブロワーヌ王国の娘ならば、みんな憧れる場所。楽しみだわ」
私は、うっとりと天を見つめる。
「いや、あの場所は、王太子の婚約発表の場所と決まっている。私達は、やらんぞ」
ルーベルトが、さらっと言う。
「ええ!?何とかして!レオドール殿下とミネルヴァ王女に差をつけられるのは嫌よ!」
夢だった場所が使えないと聞いて、私はショックを受ける。
「分かった…それでは、ランシール宮殿が使えないか交渉してみる。王女が他国から王子を婿に迎える場合に使われる場所だ。そこなら、格的にも充分だろう」
ルーベルトが、頭を押さえながら言う。
「仕方ないわね、日時は王女達より後でいいわ。同時だと、来る人が少なくなりそうで寂しいから」
私は、妥協する。
「そんなに、王女に負けない様にしなくてもいいと思うんだがな」
ルーベルトが、やれやれという顔をする。
「駄目よ。王太子妃の立場を譲って、婚約お披露目まで負けたくないですから!」
私は、そう答える。
「これは、婚約お披露目舞踏会まで、打合せが大変そうだ」
ルーベルトと父が、苦笑いした。
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