エピソード36 公妾アリエッタ様の説得
私はアデール様とルーベルト、レオドール辺境伯と一緒に、後宮にいる公妾アリエッタ様の元に王との再婚をお願いに向かう。
何故か、ミネルヴァ王女も呼び出されていた。
後宮の奥に建てられた小さくて地味な屋敷に、公妾アリエッタ様の部屋はあった。
彼女は決して贅沢をせず、とても質素な暮らしをされているらしい。
私と王女は、アリエッタ様の部屋の前に待たされる。
アーデル様とルーベルト、レオドール辺境伯が、先に部屋に入っていく。
私は、聞き耳を立てる。
「それは、出来ません。ルーベルト殿下が戻られた以上、長兄であるルーベルト殿下が正当な第一王位継承者。私が、私利私欲の為に息子であるレオドールを王位に着けようとしていると思われれば、息子の為になりません」
王との再婚を勧めるアデール様とルーベルトに、断りを伝えるアリエッタ様の声が聞こえる。
「それは違います母上。私達は自分の愛と幸福の為に事を成そうとしているのです」
レオドール辺境伯の言葉が、聞こえる。
「入って下さい、シャローラ様、ミネルヴァ王女殿下!」
中から、入室を促がすアデール様の声が聞こえた。
私達は扉を開け、中に入る。
アリエッタ様は、噂通りの清楚な方だった。
黒髪をシンプルにまとめ、薄い緑のシンプルなドレスを身に付けている。
高そうな貴金属などは、つけていない。
全て安そうな物を選んでいる。
「彼女達が、我々の愛する婚約者です」
ルーベルトが、私の横に立ち、腰に手をやって言う。
ミネルヴァ王女の横にはレオドール辺境伯が立っている。
「そういう事ですか、大体の事は察しました」
アリエッタ様が、溜息を一つ。
「しかし、私は亡き王妃の侍女だったのです。王も私も亡き王妃を裏切る事は出来ません。ましてや、下級貴族出身の私が王妃などと…。何より、王が愛していたのは王妃様だけ。私は、王妃を亡くされた王を、お慰めしただけです」
彼女は、固辞する。
「その様な事は、ございません。王は、あなたを心から愛されています。そして、何より私共の時代の話よりも、未来を生きる子達の為を考えていただけませんか?あなたの愛する王の息子達と、その未来の妃達の為に」
アデール様が、仰った。
「確かに、この姫達は亡き王妃に瓜二つ。神が、王妃の代わりに彼女達を幸せにせよという事かもしれません。…分かりました。我が息子レオドールと、ルーベルト王子の為、王と今一度、話をしてみましょう」
私達の姿を見たアリエッタ様は、アデール様の提案を受け入れる。
私達は、後宮を後にする。
1カ月後、王が公妾アリエッタ様と再婚する事が発表された。
国民からも貴族達からも、それを反対する者は、ほとんどいなかった。
皆、王とアリエッタ様が、実質的な夫婦であると知っていたからだ。
それよりも大変だったのは、レオドール辺境伯が王太子になる事。
ミネルヴァ王女の心を射止めて婚約なさる事の方だ。
そして、ルーベルト王子が私との婚約の為に王太子の権利を捨てた事は、大変なスキャンダルとして国民に広まった。
今や、私達4人は、世紀のラブロマンスの主人公だった。
社交界でも街を歩いていても、きゃあきゃあと女性に騒がれ、男性からは意味深な笑顔で見られる。
色々と話に尾ひれがついて、私とルーベルトは物凄いドラマチックな恋愛の後、深く結ばれたと噂されている。
私の店も、にわかのファンで大熱狂状態だ。
繁盛するのは嬉しいが、ある事ない事聞かれて恥ずかしい。
営業スマイルで誤魔化す毎日だ。
劇的だったのは間違いないかもしれないが、私はまだルーベルトの気持ちに、はっきりと答えていない。
それに、新たに設定されたレオドール王太子とミネルヴァ王女の婚約お披露目に便乗させてもらう形になった私達の婚約お披露目舞踏会への準備も、再開しなければならない。
ああ、このままでは、ストレスでまた太ってしまうかもしれない…。
よろしければ、評価、ブックマークいただけると幸いです。
励みになります。




