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エピソード3 彼と私の門出のはずが

次話、16時アップ予定。

 公爵となったウイリアムは、王都に商会の本部を建て、私はそこを任された。

 色々な商品を扱ったが、もっとも売りにしていたのは私がプロデュースした化粧品や洋服だ。

 それらは、貴族の娘達の間で大流行し、商会の利益は、どんどん大きくなった。


 事務や企画の仕事に追われる毎日。

 2年後、20歳になった私は、貴族学校の後輩の娘達をアドバイザーとして迎え入れる事にした。

 彼女達は、事務や企画は出来なかったが、品のある売り手として評判になる。


 その中でも公爵令嬢のダニエラは、働くだけでなく、家のお金で商会に投資もしてくれた。

 私より2歳年下で、若く美しい彼女は、商会でも営業の主力になっていった。


 ある日、後輩達と一緒に、お茶を楽しんでいた時。


「シャローラ様、ウイリアム公爵との挙式はまだですの?」


 ダニエラが、そう聞いてきた。


「今は二人共、商売に夢中なの」


 正直、待たされている事に私も不満だったが、ここは、そう答えておいた。


「へえ、こんな美しいシャローラ様を、いつまでも待たせるなんてウイリアム様もひどいわね」


「そうですわね」


「そうそう…」


 ダニエラの言葉に、後輩達が同意する。


「そうなのよねー」


 私は、思わず同意の言葉を発した。

 その言葉に場が盛り上がる。


 それからは少しの間、皆でウイリアム公爵への陰口を言ってストレスを解消した。




 そんな事があってから1カ月ほど経った、ある日。

 私は、休暇で実家の屋敷に戻っていた。

 そこにウイリアムから、重要な話があるので、私の両親を交えて話がしたいと手紙が着た。


 いよいよ婚礼の申し込みだ!

 私は、そう考えて、天にも昇る幸せな気持ちになっていた。


 私は、いつにも増して化粧や身だしなみに気をつけて、両親と共に彼を待った。


 ウイリアム公爵は、私の予想外の人物と共にやってきた。

 それは、公爵令嬢のダニエラと、その両親だった。


 何かが、おかしい。

 話の流れを予想して、私は体の奥がカッと熱くなった。

 応接室で彼等を出迎えた私は、ダニエラを睨んだ。

 彼女は、涼しい顔で目線を外す。


「彼女に、不義密通の疑いがあると聞き、婚約の破棄を願い出に参りました」


 ウイリアム公爵は、私の両親にそう言った。


「私の娘に限って、その様な事は!」


 私の父が、声を荒げる。


「彼女は、ルーベルト王子からの贈り物を受け取っていたそうですね」


 ウイリアムは、今まで私に向けた事の無い冷たい目で言う。


「それは、王子が一方的に」


 父が反論する。


「さらに、夜中に王子を屋敷に招き入れて逢引きしていたとか。既に、あなたの屋敷の者から言質は取ってあります」


 さらに、ウイリアムが父に言う。


「なっ!その様な事は決してない!それも、王子が勝手に忍び込んだだけだ!」


 父が、大きな声を出した。


「ほう、公の場で王子に向かって、その様な物言いが出来ますか?王家の者が、自分の屋敷に無断で忍び込んだと?」


 ウイリアムの横にいた、ダニエラの父親が、そう言う。


「ぬぬぬ…」


 私の父は、黙ってしまった。


「はっはっは、よいではないですか、王子に見初められるとは羨ましい。これで、貴殿の家の栄達も決まったようなもの。ウイリアム君には、私の娘を婚約させましたので、後は安心ですぞ。このまま婚約破棄して下されば、賠償は求めないそうです」


 ダニエラの父親が、笑って言う。


「…!」


 私は、拳を握りしめる。

 あの馬鹿王子、あなたのせいで私は婚約を破棄された!

 いや、違う。


 ウイリアムは、すでにダニエラに奪われていたのだ。

 そして、ダニエラの父親はウイリアムの商売に投資して、利益を得ようとしていた。


 しかし、全てを私のせいにして婚約破棄されたのは、あの馬鹿王子のせいだ。

 私の中で王子に対する黒い気持ちが、むくむくと大きくなる。


 私は、まだウイリアムを愛していた。

 王子とダニエラへの怒りだけが、私の心を支配する。

 ぶるぶると体が震えた。


「王子様に愛されるなんて、なんて羨ましい。商会は、私が引き継ぎますので、ご安心を」


 ダニエラが、嫌味たっぷりに私に言った。


「何ですって!この泥棒猫!!」


 私は紅茶のカップを持つと、中身をダニエラに、ぶっかけた。


「きゃあ!なんと恐ろしい。商人上がりの家の者は野蛮ですわね!」


 ダニエラは、そう叫んだ。


「なんですってぇ!」


 私は、逆上する。


「やめなさい!シャローラ!!」


 父が、私を叱った。


「う、うう…」


 私は、泣きながら応接室を飛び出した。

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泣き虫高飛車バツ2令嬢の熊髭騎士団長様

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