エピソード29 紛争地帯での捜索
紛争地帯での、ルーベルト王子の捜索が始まった。
ミネルヴァ王女、レオドール辺境伯の個人的協定で行われる、公式には認められていない捜索だ。
ミネルヴァ王女と、レオドール辺境伯、両国数十人づつの兵士、そして私が参加する。
とはいえ、王女と辺境伯は既に王子の行方不明を知っており、ある程度は捜索を完了している。
森林地帯や山の中、探しにくい場所だけが捜索地域だ。
私は昔、王子と二人で遭難した時に、川辺にいた事を思い出す。
それを王女と辺境伯に伝え、山と森の中の川沿いを中心に捜索を進めた。
動きやすい服装で、馬を利用しているとはいえ、森の中の捜索は辛い。
田舎育ちで体力はある方だと思ったが、子供の頃とは違うと感じた。
どうしても王子を助けたいという気持ちが体を動かす。
捜索を始めてから1週間。
川沿いの捜索は、ほぼ終了した。
疲労だけが蓄積し、諦めの気持ちが捜索隊に広がる。
「森の中に、泉などの水場はありませんでしょうか?」
私は、捜索隊キャンプで、王女と辺境伯に聞いてみた。
「確かに、それならば我々の知らない場所があるかもしれません。しかし、森全体を捜索するのは我々だけでは困難…」
レオドール辺境伯が、言った。
「とりあえず、水場の多い低地や洞窟を中心に当たってみましょう」
ミネルヴァ王女が、提案する。
次の日から水場を探して捜索を始める。
そして、山中に洞窟を発見する。
「います。あの洞窟から、確かに王子を気配を感じます」
ミネルヴァ王女が、言った。
「おお!」
捜索隊から、喜びの声が上がる。
私達は、洞窟に向かって走る。
洞窟の中に沸いた泉の横で、ルーベルトが力なく横たわっていた。
顔には不精髭、服はドロドロに汚れている。
右足を傷めているのか、自分で作ったであろう添え木が括り付けてある。
「ルーベルト!」
私は叫んで、駆け寄った。
ミネルヴァ王女が、彼の上半身を抱き起して回復魔法をかけ始める。
「シャローラ、どうしてここに?」
ルーベルトは、ミネルヴァ王女を見て言った。
「馬鹿!私は、こっちよ!」
私は、ルーベルトに抱きついて言った。
「おや、シャローラが二人…。ここは天国か?」
彼は、力なく言った。
ルーベルト王子は、敵から逃れて洞窟の中でずっと過ごしていたらしい。
足を骨折して動けなくなってしまったようだ。
すぐに、ブロワーヌ王国につれて帰りたかったが、彼の足の状態は放置された為に非常に悪く、レオドール辺境伯の元には今の彼を完全に治療出来る者はいなかった。
このままでは、足を切り落とさねばならないかもしれない。
彼を救うには王女の力に、おすがりするしかない。
インぺリア王国のミネルヴァ王女の持つ屋敷の一つに、ルーベルト王子は運びこまれた。
1週間ほど彼の側に付き添ったが、これ以上私と王子の存在を隠すのは難しくなり、私は先にブロワーヌ王国に帰る事になった。
「どうか、殿下の事を、お願いします」
馬車の前で私は、ミネルバ王女に彼の事を頼んだ。
「紛争相手の国の王子とはいえ、完全に国交が無いわけではありません。彼は私の叔母の息子。王子に危害を加える事はないでしょう。治療後に、必ずブロワーヌ王国に返します。この私が、約束しましょう」
王女は、ルーベルトの身の安全を約束してくれた。
私は、後ろ髪を引かれながら、インぺリア王国を後にする。
この時感じていた不安は、現実のものになる。
それは、私と王子の関係に大きな危機となった。
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注)前回、国名に入れ違いがありましたので修正しました。




