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エピソード25 湖畔のプロポーズ

 両親への挨拶を終えた私とルーベルトは、夕食後に思い出の湖畔を歩いていた。


 いつの間にか、自然に手をつないでいる。

 こんな事が出来るようになったんだ。

 そう思いながら、彼の横顔を見る。


 子供の頃は、ルーベルトがいつ手をつないでくれるのか、やきもきした。

 結局、そんな事はなかったのだが、今は自然に手をつないでいる。

 あの頃のルーベルトを好きだった気持ちが、少しだけ蘇ってきた。


 彼の手が、少し汗ばんでいる。

 緊張が伝わってきた。


「もしかして、こうやって女性と手をつないで歩くのは初めて?」


 私は、少し意地悪を言った。


「手を引いてエスコートした事はあるが、つないだのは初めてだ」


 彼は、恥ずかしそうに言う。


「そうよね。あなたに、そんな度胸あるはずないもの」


 私は、笑った。


「待たせて、すまなかった」


 ルーベルトが、そう呟いた。


「待ってなんていません。全然、期待なんてしてないですから」


 私は、そう言った。

 嘘ではない。

 子供の頃は憧れたが、そんな気持ちは忘れてしまっていた。


 でも、ルーベルトは、私をずっと思っていてくれた。

 その事は、とても嬉しい。




「聞いてくれ」


 ルーベルトが、私の方を向き、両手を取っていった。


「もう一つ、遅れていた事がある。君に私の口から、結婚を申し込みたい」


 彼は、真剣な眼差しで私を見つめる。


「君を一生、愛し続ける事を誓う。どうか、僕と結婚してくれ」


 彼は、私の手を取ったまま膝まづき、そう言った。


 彼の美しい顔を、月明かりが照らしている。

 湖面に、月と星々の光が映って、キラキラと輝いていた。


 私の心臓に大量に血が流れ込んで、動悸が止まらなくなる。

 こういう時は、顔を赤くするものだと思っていた。

 しかし、逆に真っ青な顔になってしまった。


「駄目!!」


 私は、反射的に、そう言ってしまった。

 いや違う。

 咄嗟に出たこれが、正直な気持ちだ。


「…!」


 渾身のプロポーズをかわされたルーベルトの顔も、血の気が引いていくのが分かる。


「どうして?」


 ルーベルトも、少しは自信があったのだろう。

 力なく聞いてきた。


「だって、怖いの!平民出の娘が、王子と結婚とか考えられない!」


 私は、言った。


「…」


 彼は、黙って聞いている。


「やっと調子が出てきた店も続けたいし!私に王太子妃とか務まるわけないし!」


 私は、まくし立てた。


 そんな私を、彼が抱きしめる。


「大丈夫だ。全て私が何とかする。だから、安心してくれ」


 彼が、私の耳元で言う。


「駄目、そんなの無理に決まってる…」


 私は、彼の胸に顔をうずめながら言った。




「ちょっと、そこ!待ちなさい!」


 暗闇の中から、突然声がした。

 オーレッド公爵夫人と両親が、現れる。


「え?何でついてきてるの?」


 私は、ルーベルトから離れて言った。


「若い二人に間違いがあってはいけませんからね!」


 公爵夫人は、言った。

 いや、あなたも私と同い年くらいですよね?


「そこは、OKするところでしょ!あなたのせいで台無しよ!」


 公爵夫人が、怒って言った。


「殿下も、殿下です!そんなに軽々しく女の我儘を引き受けてはいけません!」


 彼女は、ルーベルトにも言う。


「シャローラさん、王太子妃として振る舞いや身だしなみは、私がみっちり教えるので大丈夫です!商売は、続けても構いませんが、店には部下を立たせない!」


「はい…すいません」


 彼女の剣幕に押されて、私は、思わず返事をした。


「では、ここは若い二人に任せて、我々は退散しますか」


 父が、そう言って助け舟を出す。


「では、ごゆっくり」


 笑顔で、母が言う。


「OK。OKしかありませんからね、シャローラさん!なんて羨ましい…」


 公爵夫人が、名残惜しそうに言う。


 3人は、そのまま去って言った。




 私とルーベルトは、顔を見合わせて、笑ってしまった。


「仕方ない。続きはまた今度だね」


 彼が、そう言う。


「そうね、少し考えさせて下さい」


 そう返す。


 私達は、手をつないで夜の湖畔の散歩を、今しばらく楽しんだ。

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― 新着の感想 ―
シャローラもルーベルトの事が子どもの頃から好きだったんですね!なんか嬉しくなっちゃいました!
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