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エピソード19 ザッカーニ公爵領へ

 私とアンナ、ミネルヴァ王女、レオドール辺境伯の4人は、護衛の騎士数人を連れて、ルーベルトと私の思い出の湖にやってきた。

 ダニエラが、ルーベルトに精神操作の魔法をかけたと思われる場所だ。


「ボートに触れて下さい」


 ミネルヴァ王女が、私に促す。


 私は、ダニエラとルーベルトが乗っていたボートに触れる。

 なんともいえない苦々しい気持ちになった。


「精霊よ、ルーベルト王子を真に愛する者の心に答えて、ダニエラの罪を明かせ…」


 ミネルヴァ王女が、そう呟くと、小さな光の輝きが何個も現れる。


「この者、シャローラがルーベルト王子を真に愛している事を認め、ダニエラの罪を明かしましょう」


 小さな光の輝きから声が聞こえる。


 いやいやいや、コレは何の羞恥プレイ?

 私は、そこまで思っている自信はない

 いい加減にして!

 頭の中が混乱して、自分でもよく分からなくなる。


 私が、そう考えた瞬間、小さな光は消えてしまう。


「残念ですが、これ以上は探れないようです。しかし、ダニエラという者が何らかの罪を犯しているのは分かりました」


 ミネルヴァ王女は、そう言った。


 これ以上探れなかったのは、私のせい?

 でも、自分の心には嘘はつけない。


「この様な、美しい御令嬢に真に愛されているとは、兄は幸せ者だ」


 レオドール辺境伯が、私を見て言った。


 いやいやいや、真の愛とか人前で言わないで!


 ルーベルトは、大切な幼馴染。

 今、私の中で大きな存在になりつつあるのは認めるしかない。

 しかし、真の愛とか言われると、そこまでの自信は無い。


 私は、恥ずかしくなって、ぎゅっと目を閉じた。


 馬鹿!!私がルーベルトを真に愛していれば、もっとダニエラの罪を探れたかもしれないのに。

 ごめんなさい、ルーベルト。


 私は、うずくまって泣き出してしまった。


「泣かないで下さいシャローラ。あなたの婚約者は、必ず助けます」


 ミネルヴァ王女が、私の肩を抱いて慰めてくれた。


「行きましょう、ザッカーニ領へ。そして、兄の目を覚まさせるのです」


 レオドール辺境伯が、私の手を取って言った。




 次の日、私達はザッカーニ公爵領にある公爵家の屋敷に向かう馬車の中にいた。


 ザッカーニ公爵領は、王都のすぐそばにある。

 大きな荘園を持ち、王都への生鮮食糧品の供給地として重要な場所だった。

 果樹園や野菜畑、牧場が、延々と続く。


 馬車から見える景色は、本当は、のどかなのだろう。

 しかし、私には、暗い風景に見えた。


「シャローラさん。あなたは、自分にも嘘がつけない人。それを恥じる必要はありません。今は真の愛とは言えないかもしれません。しかし、その素直な気持ちをぶつければ、必ず害悪魔法に打ち勝てます」


 馬車の中で、向かい合わせに座るミネルヴァ王女が、私に言った。

 じっと私を見つめる、その目は、私の心の中を見透かしているようだった。


「私は、家や面子の為にルーベルト王子と婚約したんです。彼に、愛は無いと言ってしまいました」


 誰にも言った事の無い、婚約の秘密を王女に話してしまった。


「何を恥じる必要がありましょうか。私も、王女として、やがては政略結婚のコマになるでしょう。その時は、相手が誰であれ愛するつもりです。家の為に結婚した、あなたは立派です。それに、あなたはルーベルト王子を愛しているでしょう?そうでなければ、精霊が答えるはずがありません」


 王女は、そう言った。


「すいません、まだ自分の気持ちに自信が持てないんです…」


 王女は立派な方だ。

 しかし、私は、まだ意固地になっている。

 でも、気持ちの問題は、どうにもならない。


 素直に言っても、まだ私はルーベルトを心から愛していないのだろう。

 でも今は、彼を助けたい。

 それだけは、はっきり言える。


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