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エピソード17 第3王女の来店

 ルーベルトは、ダニエラの父親であるザッカーニ公爵の領地に入り浸りで、王都での仕事もままならないらしい。


 私は、ダニエラとルーベルトの事が気になって仕事にならない。

 しかし、今の私には何も出来なかった。


 ドナシエル様が、色々と尽力して下さっている。

 その報告を待つしかなかった。


 軌道に乗り始めた店を閉めるわけにもいかず、私は店を開き続けた。

 特に今日は、VIPが店を貸し切り予約しているので、休むわけにはいかない。


「いらっしゃいませ!」


 私は、精一杯の笑顔でVIP客を出迎える。


 何人かの護衛の騎士に囲まれて店に入ってきたのは、隣国インぺリア王国の第3王女ミネルヴァ様だ。

 私達のブロワーヌ王国とインぺリア王国は、領土を巡って何回も紛争を繰り返している。

 しかし、最近は何とか停戦状態が続いていた。


 ミネルヴァ様は、特使としてブロワーヌ王国との友好を深めにいらしたらしい。

 そして、お忍びで私の店に買い物に来られたのだ。


「…!」


 ミネルヴァ様の顔を見て驚いた。

 どこかが、私に似ていたのだ。

 歳も同じくらい。


 しかし、その物腰はとても優雅。

 容姿も少し違っている。


 顔つきや骨格は似ているが、髪は黒く腰まで伸びていて、瞳の色も黒い。

 両方栗色の私とは、違った。


 髪は、よく手入れされていて、きらきらと光って見える。

 私より大きな瞳に、すい込まれそうになる。

 お忍びの為か、服はとても庶民的で地味だった。


 どこをどう見ても、私よりも高貴さと美しさを感じる。

 やはり、王女は違うと思った。


「はじめまして、シャローラさん。この店とブランドの噂は、インぺリア王国の社交界にまで聞こえてきています。貴族の娘達は、皆が興味津々のようです。直接、お尋ね出来て幸せですわ」


 ミネルヴァ王女は、笑顔でそう言った。


 オーレッド公爵夫人も美人で気品があるが、この方の持つ高貴さは特別だ。

 私と似た顔なのに、ここまで違うなんて…。


 彼女は、私の案内で店のアイテムを色々と見て廻り、高価なドレス数着と化粧品を購入してくれた。


 店に置かれた接客用のソファとテーブルで、彼女にお茶をお出しする。


「ブロワーヌ王国の社交界では、皆さんこんなに素晴らしいドレスを着ていらっしゃるのね。インペリア王国よりも、華やかなようで羨ましいわ。今日は、とても良い買い物が出来ました」


 彼女は、お茶を手にしながら、満足気に言った。


「実は、私の叔母は、インぺリア王国との友好関係を深める為に、この国の王家に嫁がれたのです」


 彼女は、そう言った。

 王子の母である、亡くなった王妃は私に似ていたそうだ。

 彼女が言っている叔母とは、その王妃の事だろう。


 彼女と私が似ている理由も分かった。

 王子と、ミネルヴァ王女は、いとこ同士なのだ。


「さあ、特使として以外に、私は、この国で仕事を残しております。その仕事の前に、あなたに会っておきたかったの」


 彼女は、そう言った。


「それは、どういう意味で?」


 私は、疑問に思う。


「ふふふ、それは後ほど分かるでしょう。私達、長いお付き合いになりそうだわ。仲良くして下さいね。さあ、そろそろ、おいとましましょう」


 彼女の表情が、急に厳しいものになり、不敵な笑みを浮かべる。

 立ち上がると、騎士達を引き連れて出口に向かっていく。


「は、はあ、よろしくお願いします」


 店を贔屓にしてくれるという意味ではなさそうだ。


「またの、お越しをお待ちしています」


 私は、ちょっと不安になったが、作り笑顔で彼女を見送った。

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