エピソード15 王子の見合い
次話は、12時にアップします。
ある日、私の屋敷に深刻そうな顔をしたオーレッド公爵夫人がやってきた。
「シャローラ!大変よ。王子が浮気よ!」
応接室に入った途端、公爵夫人は、興奮気味で言った。
「えええ!?」
私は、思わず変な声を出してしまった。
「いやいやいや、あのルーベルトに限って、そんな事はしないと思います」
自惚れだが、ルーベルトは私にベタ惚れなのだ。
にわかには信じられない。
「ダニエラよ!彼女の父親のザッカーニ公爵が、娘を王子の正妻にと王に頼み込んだらしいの。二人は、3日後、お見合いするらしいわ」
公爵夫人の口から、ダニエラという言葉が出る。
私は、頭の血管がプチプチ言うのが、聞こえた気がする。
また人の婚約者に手を出す気?
あの女なら、やりかねない。
今度こそ、絶対に阻止しなければ。
「私、ダニエラに本気で怒っています」
そう言った。
「そうね!ダニエラとザッカーニ公爵め、後見人である私の顔にも泥を塗るつもりかしら。とにかく、まずはルーベルトを問い詰めましょう!」
公爵夫人と私は、手を取り合った。
「はい、何も言わずに、別の女性と見合いしようなんて、ルーベルトも許せません!」
私と公爵夫人は、ルーベルトを呼び出して問い詰める事にした。
「お二人共、貴族の女性なのですから、ほどほどに…」
後ろで見ていたアンナが、ため息をついた。
その夜、私達に呼び出されたルーベルトが、私の屋敷にやってきた。
「ルーベルト!ダニエラを正妻にするつもりなの!?」
彼が扉を開いた時、開口一番、私は言った。
「殿下!まさか、オーレッド公爵より、ザッカーニ公爵を上に見ているわけではございませんよね!?」
続いて公爵夫人が、言う。
「とりあえず、中で話そうか?」
ルーベルトは、その勢いに押されながら言った。
「その話なら、確かに見合いはするが、もう断る事は決まっている。ザッカーニ公爵の影響力を考えると、形だけでも会わないといけなくてね」
応接室に入ると、彼は言った。
「それにしても、大切な婚約者に知らせないとは、どういう事ですの?まさか、後見人である私を軽んじておられるのでは?」
公爵夫人が、ルーベルトをたしなめる。
「すまない。どうせ断る話だ。余計な心配をかけたくなくてね」
彼は、私を見て言った。
「いいのよ、気にしないで」
私は、笑顔を浮かべるが、怒りで顔が引きつっているのを感じる。
「ところで、どこで見合いを?」
公爵夫人が、たずねた。
「シャローラの実家近くの湖で…既にシャローラの父上にも許可は得ている。ダニエラ嬢のたっての願いで仕方なく」
申し訳なさそうに彼が言う。
「いいのよ、気にしないで」
私は、そう言ったが、全然よくない。
あの泥棒猫め、まさか私とルーベルトの思い出の地で見合いとは。
どこまで、嫌味な女なのかしら。
頭から湯気が出そうだ。
しかし、ルーベルトが断ると、はっきり言ってくれたので少し安心した。
王子が、別に妃を得るのは仕方ない事かもしれない。
だが、ダニエラは嫌だ。
あの女と後宮で顔を合わせるなど、考えられない。
「まったく!あなたは、昔からそうです。謝ってばかりで、肝心なところで女性の気持ちが分かっていません!すいませんと言ったら何でも許されるわけではありませんよ!この私の気持ちも分かっていたでしょうに!?」
怒った公爵夫人が、ルーベルトを責める。
「いや、それは本当に知らなかったんだ。何となく、そんな気はしていたが、ずっとシャローラの事を考えていたので…」
ルーベルトは、公爵夫人を相手にすると、たじたじだ。
「まったく、その通りです!気持ちを伝えるなら、もっと早くしてくれれば良かったのに。私に婚約者が出来てから言うなんて、遅すぎます!どんなに私が大変な思いをした事か!」
私も、その怒りに便乗する。
「すまない!とにかく、この件は必ず断るので」
そう言い残すと、這這の体で彼は帰っていった。
「よし!万が一の事もあります。私達で、見合いを監視しましょう」
公爵夫人が、提案してくる。
「そうですね!アンナ、すぐに準備を。」
私は、同意する。
「まったく…。どうなっても知りませんよ」
アンナは、また、ため息をついた。
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