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エピソード14 展示会

 私は、屋敷の大広間で展示会を行う事にした。

 立食パーティーを兼ねた豪勢なものになる。


 セレクトショップ・シャローラのオリジナル商品は、人気を博している。

 そこで、私オリジナルの化粧品やドレス、洋服の数々を”シャローラブランド”として売り出す事になった。


 沢山の店や商会が、シャローラブランドを買いたいと言ってきている。

 展示会は、それらの関係者が自由にやってきて商品のサンプルを確認、品定めが出来る。


 展示会が成功すれば、私の店はファッションを扱う商会として発展する事が出来る。

 ウイリアム公爵と一緒に失った商会経営の夢。

 それを取り戻せるのだ。




 展示会当日。


 大広間に、私のデザインしたドレスや化粧品が並ぶ。

 次々と洋服店や商会の人間がやってきて、商品を確認していく。

 思った以上の人出で、私は満足していた。

 私は、お客様の対応に追われる。


 展示会も終盤、外は暗くなってきている。

 やっと私は一息つく事が出来た。


 やれやれ。

 私は、ワインのグラスを片手に、展示会の様子を見ていた。


「シャローラ」


 私は、意外な人物から声を掛けられる。

 そこには、ウイリアム公爵がいた。

 青い顔をしていて、以前より痩せている。


「ウイリアム?」


 手が震えた。


「今からでも、私のところに帰ってきてくれないか?」


 ウイリアム公爵の口から、信じがたい言葉が出る。

 気が動転して、頭がくらくらしてきた。


「いまさら、何を?」


 私は、なんとか言葉を絞り出す。


「実は、あれから商会の経営が、芳しくない。君の力が大きかったんだと思い知らされた。経営が傾くと、ダニエラは婚約を解消して去ってしまった。ダニエラの父も、投資を引き揚げてしまったんだ。商会を立て直すには、君の力が必要だ」


 この人は、こんなに情けない人だったか?

 あまりに勝手な事を言っている。

 しかし、一度は愛した人。

 私は、言葉が出ない。


「シャローラ!」


 ぼーっと突っ立っている私の腕を、声を荒げたウイリアム公爵が引っ張った。


「嫌っ…」


 私は、小さく呟く。

 ワイングラスが手から滑り落ちて、床に転がった。


「”私の婚約者”に何か用ですか?ウイリアム公爵」


 私の後ろに、いつの間にかルーベルトが立っている。

 彼は、ウイリアム公爵の腕を掴んで、私から引き離す。


「あら、私が後見役を務める彼女に何かあれば、許しませんよ」


 ルーベルトと共にやってきていた公爵夫人が、ウイリアム公爵をたしなめる。


「い、いえ、失礼いたしました」


 ウイリアム公爵は、そう言い残すと展示会から去っていった。


 ルーベルトの胸に顔をうずめて少しだけ泣いた。

 その時、はっきり分った。

 ウイリアム公爵よりも、ルーベルトが大切な存在になっている事に。


「あらあら、お可愛い事」


 公爵夫人が、そう言う。


「もう、からかわないで下さい!」


 私は、公爵夫人に文句を言った。

 涙を拭き、お客様への対応に戻っていく。


 後日、ウイリアム公爵の商会が破綻し、大きな借金を抱えた事を知った。

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