表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/43

エピソード10 社交界の人気インフルエンサー

次話は、12時にアップします。

 私とルーベルトは、屋敷に戻る。

 応接室には、既に来客が待っていた。


「久しぶりだね、イリヤ」


 ルーベルトは、待っていた女性に親し気に声を掛ける。


「お元気そうね、ルーベルト」


 女性も、ルーベルト王子に気さくに返事をする。


「婚約者が横にいるのに、別の女性に随分と親し気ね、殿下」


 私は、ジト目で彼を見た。


「ははは、彼女は私の幼馴染でね。オーレッド公爵夫人だ」


 私は、そう教えられて夫人を、じっと見る。


 髪型も化粧も非常に地味。

 しかし、黒髪は綺麗に手入れされて美しい。

 とても小さい顔は、まるで人形の様に整っている。


 背は低いが、全身が非常に細く、恐ろしくスタイルがいい。

 私と同じくらいの年齢のはずなのに、この違いはなんだろうか?


「彼女が本当に、今、社交界で最も美しいと言われるオーレッド公爵夫人!?」


 私は、舞踏会で見た夫人の印象と違いすぎて、思わず声を上げる。

 舞踏会での彼女は、もっと華やかな印象で、大きく見えた。

 確かに美しいが、こんなに地味な女性ではない。


「印象が違いすぎますか?今は、カツラも付けてませんし、化粧も地味にしていますからね。ヒールも低いし、ドレスも地味。始終、盛っているのは疲れますから」


 夫人は、笑顔で言った。


「オーレッド公爵夫人の社交界での人気は、知っているね?彼女が身に付けたものは、多くの貴族の女性が欲しがる。店に置くアイテムのセレクトのアドバイスをしてもらえるぞうだ。宣伝にも協力していただけるそうだ」


 ルーベルトは、夫人が店に協力してくれると言った。

 オーレッド公爵夫人の後ろ盾があれば、社交界での私の店の評判は間違いなく上がる。


 今の私は、王子と不義密通を行った娘として、社交界での信用は地に落ちている。

 この協力は、涙が出るほど嬉しい。


「ありがとう、殿下!」


 私は、感謝の言葉を口にする。


「それと、もう一つ…」


 ルーベルトが、思わせぶりに溜めた。


「…?」


 私は、その目を心配そうに見つめる。

 こういう時の彼は、言いづらい事を口にする事が多い。


「3カ月後に、君を私の婚約者としてお披露目する舞踏会が開かれるのだが、それまでに君を相応しい淑女として訓練して下さるそうだ。同時にドレスなどの装いも協力していただく。これは彼女の、たっての希望でな。以後、この婚約については、彼女が君の後見人となる」


 ルーベルトの言った事は、予想外に嬉しいもののはずだった。

 夫人が私をプロデュースして下さるという事までは嬉しい事なのだが、婚約者としてお披露目?

 しかし、今の私の社交界での評判を考えると、気が重い。

 私に相談なしに勝手な事を!


「あー」


 私は、反応に困って、少し呆けた。


 その時、私の横に夫人がやってきて耳打ちする。


「わたくし、子供の頃からルーベルト王子をお慕いしておりましたの。しかし、あなたのせいで、まったく振り向いてもらえなかった。その、あなたが、王子にふさわしい淑女でなければ気が済みません。覚悟して下さいね」


 私は、その言葉の迫力に背筋を伸ばす。

 こんなに美しい婦人よりも、私を選んだ?

 私にとっては迷惑な話だったのだが、誇らしい気持ちにもなった。


「がっしりとした健康的な体つき。胸とお尻は発達していますが、ウエストは太目。顔は小さくはないが、そこそこ美形。髪や肌は丁寧に手入れしている。ドレスのセンスもいい。これは、鍛えがいがありそうです」


 顔を離した夫人は、私を足元から頭までチェックする。


「どうだい?オーレッド公爵夫人。やれそうかい?」


 ルーベルトが、夫人に尋ねる。


「勿論、お引け受けします。王子の婚約者を指導するなんて光栄ですわ。店の方にも、私の懇意にしている仕立て屋全てから在庫のドレスを納入させます。支払いは、売れてからで結構でしてよ」


 夫人は、そう言った。


 ありがたい!簡単なシャツでも、庶民の10日分の給金に相当する値段だ。

 ましてやドレスは、半年から1年分の給金に相当する高価なもの。

 それを後払いで仕入れられるとは素晴らしい。

 私は、夫人とルーベルトに感謝した。


「ありがとうございます、オーレッド公爵夫人。これで、洋服の仕入れは安心です!」


 私は、そう言った。


「他にも、君に合わせたい人達がいるのだが。アンナ、彼女達をここへ!」


 ルーベルトが、扉の向こうにいるメイドのアンナに指示する。


「シャローラ様!」


 扉が開くと、ウイリアム公爵の商会に従業員として呼んだ貴族学校の後輩達が入ってくる。

 もちろん、ダニエラの姿は無かったが。


「シャローラ様、お元気になってよかったです!」


 彼女達は、口々に私を心配していた事を告げる。


「店を始めれば、従業員が必要だろう?私が声を掛けておいた。皆、ダニエラよりも、君の元で働きたいそうだ」


 ルーベルトが、彼女達を呼んでくれたようだ。


「私達は、シャローラ様に呼ばれて商会に入ったのです。先輩を裏切ったダニエラの元でなんて働けません!」


 後輩の言葉に、私は涙ぐむ。


「ありがとう、みんな。また一緒に頑張りましょうね」


 私と後輩達は、抱き合って再起を誓った。

よろしければ、評価、ブックマークしていただけると嬉しいです。

励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ