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エピソード1 公爵との婚約

 私の名はシャローラ。

 ナルマー子爵家の長女だ。


 16歳の時。

 子爵であるお父様が、私の社交界デビューの為に、ささやかなパーティーを開いてくれた。


 私は、ソファーに座って、貴族の来客達のダンスを眺めていた。

 横には、私の婚約者であるモーガスト公爵家の長男ウイリアムが座っている。

 美しい金髪に、優しそうな青い瞳。

 2つ年上の彼。

 私の理想の男性だ。


 王都の貴族学校で出会った私達は、すぐに恋に落ち、親の許可を得て婚約者になった。

 まるで夢の様な、お話。

 私は、幸せの絶頂にいた。


「シャ、シャローラ嬢。私と一曲踊っていただけませんか?」


 私の前に、黒髪の男の子が現れた。

 彼は顔を真っ赤にして、私をダンスに誘っているようだ。

 私より背が低く、可愛い顔立ちをしている。


「ルーベルト王子」


 私は、その男の子の事を思い出した。

 父の領地は、このブロワーヌ王国でも有名な高原の避暑地だった。

 この日の5年ほど前、王子が王妃に連れられて、私の屋敷に避暑に来られた事がある。

 私より幼く見えるが、同い年だった。


 その時は、私がボートやハイキングに連れ出して、遊んであげたものだ。


「お久しぶり。大きくなられましたね」


 私は、弟を見る様な目で彼に笑いかけた。


「可愛い王子様の誘いを断るわけにはいかないよ」


 横に座っていたウイリアムが、悪戯っぽい笑顔で私に誘いを受けるように促す。


「あら、私を取られても知りませんわよ」


 私は、にっこり笑うと、王子に手を差し出した。


「失礼します…」


 王子は、恥ずかしそうに私の手を取ってリードする。


 広間の中央に出た私達は、音楽に合わせて踊り出した。

 彼のステップは正確で、気持ちよく踊る事が出来る。


「あら、ずいぶん上達されましたね」


 私は、王子に耳打ちする。


「あなたは、相変わらず美しい。私が、もう少し早く生まれていれば…」


 王子は、少し涙ぐんだ。

 これでは、私を好きだと言っているようなものだ。

 可愛い王子様の態度に、悪い気はしない。


「立派な王子なら、私の婚約を祝福して下さいませ」


 私は、そう言った。


「…」


 王子は目を伏せ、何も答えなかった。

 その日、私達は、そのまま話さずに別れた。


 後々彼は、まったく違う姿の超イケメンになるのだが、それは後の話。




 それからというもの、王都の貴族学校の宿舎に毎日の様にルーベルト王子からの手紙が届くようになった。

 内容は、私に会いたいというものばかり。

 色々と理由を付けて、誘い出そうとしてくる。


 あまりに面倒なので、一切誘ってこないようにと、父から王子に手紙を書いていただくように頼んだ。

 しかし、相手は王子。

 身分的に何も言えないと、父は断ってきた。

 気にせず無視しろと言うだけだ。


 その後も、色々と贈り物や手紙が届いたが、全て内容を見ずに処分するように宿舎や家の者に伝えた。

 どうせ子供な王子のやる事だ。

 無視しておけばいいだけ。


 やがて、そんな事も忘れ、先に貴族学校を卒業したモーガスト公爵家の長男ウイリアムの仕事を手伝う事になる。

 彼は、慣れない商売に四苦八苦していた。


 私の家は商人上がりで、貴族の地位を買った家系だ。

 父が商売をするのを見ていた私は、彼の商売にアドバイスした。

 ウイリアムは商売に成功し、以前よりも羽振りが良くなっていった。

 彼は、若くして公爵家を継ぎ、私は公爵の婚約者になる。


 私と彼は、最高のカップルだと思えた。

 やがて18歳になった私は貴族学校を卒業し、後は彼から婚礼の申し込みを待つだけになっていた。


 それが、あんな事になるとは…。

 私はまだ、知らないでいた。





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泣き虫高飛車バツ2令嬢の熊髭騎士団長様

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