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素早く手向きを変えて懐に入り柄を向けると鳩尾を思いっり突き上げる。


「ぐはっっ」


思いの外めり込んでしまいました。

人間の鳩尾はとても深いのでしょうか。


回帰1回目から鍛え上げてきた剣筋ですからそこら辺の騎士には負けませんのよ。

ましてや稽古を怠ってきた貴方は到底私に勝てませんわ。


手から離れた剣を床に落とせば顔面から倒れこむ。


あら、とても鈍い音がされましたけれどお鼻が折れたのでしょうか。

鼻か口かどちらか分かりませんが血がすごい出ておりますね。まるで私が斬ったかのごときです。


じたばたと這いずり回るのは死にかけの虫のようですわね。

床を見ながら悲痛な表情が出てしまいます。



なんてお可哀想な―――剣。



握る者のせいでかように落とされて、、、。

私の足元で汚く叫ぶものに同情など湧きません。

言われなき罪で100回も貴方に断罪されて99回殺されているのですもの。あ、最初を合わせますと100回も殺されていますわね。

むしろ殺さないだけ私の寛大な心に感謝してほしいものです。


「お返ししますわ。」


差し出した剣を騎士に返そうとすると小さく悲鳴をあげられたのですけれど。

こんな女一人に騎士とあろう者が何を怯えていらっしゃるの?


「ほら。貴殿の剣ですのよ。」


ずいっともう一度差し出すと慌てて剣をかっさらい逃げていかれました。


なんですの。公爵令嬢にひどい態度ですわね。


「公爵令嬢。怒っていらっしゃるの?」


ああ、終わりではないのですか。

初めての展開に今しがたその存在を忘れておりました。


ヒロイン登場という文字が頭に大きく掲げられているようですわ。


「怒るもなにも。刃を向けられて臨戦していなければ私は死んでおりましてよ?あのまま棒立ちしていろと?」


なにもせず王子の剣で中途半端に刺され、痛みにもがき苦しみながら死ねば良かったのにと言っているのでしょうか。


なんという残酷さ。

想像するだけで血の気が引いていきますわ。


「あ、そのようなことを言ってはいないのです。ただ王子への仕打ちが酷くて。」


何を至極当たり前と王子を労る心優しい令嬢をやっておられるのですか?

相変わらずですわね。


「これですか?」


未だ足元で悶えているいる元婚約者を目だけで見下ろす。


「私は正当防衛でしたわよ。ねえ皆様方?」


声を張り上げて尋ねてみましても賛同の声は得られません。


はあ、これが悪役令嬢というものですわね。


先刻私へ浴びせていた罵詈雑言。

無防備な女性に剣で飛びかかってくる非道さ。


貴女、王子のすぐ隣で止めることもなく見ていたでしょう?


「このような大勢の前で言われもなき罪を並べて名誉を傷付け、剣でこの身を貫こうとされた私への仕打ちには同情してくださらないの?」


それですわ。その目。


真意を突かれて反論できないと分かれば、瞳に涙を蓄え「違うの。」と首を振る。


何が違うのか私には1ミリたりとも分かりません。

分かりたくもありません。


「王子は少々大げさにしてしまっただけですの。」


「少々?」


今少々と申されましたの?


慈悲深いと言われているヒロインがこの惨状を少々と申されますか。


悪役令嬢(ワタクシ)に対する常識バロメーターが壊れていますの?



ブックマークありがとうございます。

次で最終話になります。

どうぞお楽しみに!


「ヒロインの涙は劇薬ですわね。」by悪役令嬢

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