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お手にとっていただきありがとうございます。
こちらの作品R15をつけさせていただいております。
血の描写などが苦手なお方はそっと閉じてくだされば幸いです。
「ここで貴様を断罪する!」
ここはきらびやかな舞踏会。
群衆の中心で一人佇む私に婚約者の王子が声高らかに宣言される。
これで100回目。
はいはい。断罪ですね。
「この伯爵令嬢に対する数々の愚行を知らないとは言わせないぞ!」
ああ、左様ですか。
そんなことしていませんけど私がしたという愚行は全て知ってはいますのよ。
「伯爵令嬢に私へ近づかないように脅した。こけさせたあげく立ち上がらせる手を貸さなかった。舞踏会で私にエスコートされているのに嫉妬しーー。」
「嘲笑った。でしたか?」
「っは。自覚しているのか。なら話は早い。」
自覚も何も、これを聞くのは100回目ですから嫌でも覚えますわよ。
この続きは知っているから羊でも数えておこうかしら。
羊が1匹、
羊が2匹、
羊が3匹、
ーーーーーー羊が100匹。
「ーーーであるから貴様とは婚約破棄だ!」
やっと終わりましたか。
してもいない罪を100回も聞かされる身にもなってほしいものですわ。
毎度思いますがよくそんな風につらつらと私を罵倒する言葉を出せるのか。
そのお口が開かぬように固定してやりたいと思っていたのは何度目の回帰まででしたでしょう。
「言いたいことは全て言われまして?」
「あ、ああ。」
「ならば失礼させていただきます。」
こんな場所に長居する理由はありませんから。
次の回帰では何をしようかしら。
今回で記念すべき100回目ですから悪役令嬢の役目も放棄させていただきましょう。
町で普通の生活を送ってもよし。
気ままに旅をするのもよし。
それとも敵国に亡命してこの国を滅ぼしてさしあげましょうか。いえこれでは悪役令嬢のままですわね。
まあ、今決めてしまうのは勿体ないでしょうから次でじっくり考えましょう。
101回目の回帰はきっと薔薇色になるわ。
早くここから追放されて殺されなくてはいけません。
扉を開けば、新たな人生の門出。
待っていて私の薔薇色の人生!!
「待て!終わっていないぞ!」
あら?
99回中99回とも呼び止められませんでしたのに。
何か変わるようなことしたかしら?
うーん。
どうせ殺されるのですし門出を祝って最期のお付きといきましょうか。