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美貌の王太子は、孤独な娘を逃がさない  作者: Aki


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23 妹から見た兄とその相手

 晴れた、気持ちの良い日のことだった。


 ドロニア国のヴァロンティア王家の十六歳になる第三王女・ラトニータは、庭を歩きながら、兄・アリヴィアンが連れて来た女性のことを考えていた。



***


 元第三王子で、現在は王太子のアリヴィアンは、ラトニータにとって昔から特別視している兄だった。



 王と王妃はわずか十五歳で結婚し、それ以来数年おきに子供を産み続けたおしどり夫婦だ。結果、生まれた子供は十五人、そのうち五人は幼い頃に夭折(ようせつ)してしまっているから残った兄弟姉妹は十人。

 その十人のうち、三人がついこの前の戦争中に死んだ。王太子だったエドアルドも、この時に逝った。


 結果、王家の子供は七人。

 七人のうちアリヴィアンだけが男子で、あとの六人は女子だ。

それもあってか、唯一の生き残った兄王子・アリヴィアンの結婚相手が気になるのは当たり前というもの。




「兄さまは女性に人気ですしね。どの方を見初められるのか楽しみですね」

「でもアリヴィアン兄さまが女性に興味を示したことなんてなくてよ? どんな方が好みなのかしら」


 ラトニータの双子の姉・第二王女セシリアと、その事についてよく語り合っていた。


 二人にもそれぞれ婚約者はいるが、所詮政略結婚で決められた相手だ。

 王女だからこそ、二人は将来の伴侶を自由に選べる立場にない。結婚相手は全て王や家臣たちが決定すること。それもあって相手を選べるアリヴィアンが羨ましかったし、アリヴィアンの相手選びがまるで自分達のそれであるかのようにワクワクとしながら、お茶を飲みつつよく話題にしていた。


「アリヴィアン兄さまにはご結婚相手を選べる自由くらいあっていいものだわ!エドアルド兄さま達が亡くなって、その重責は全てアリヴィアン兄さまにかかるのだからね…」


 双子の姉のセシリアがぽつりと呟けば、ラトニータも静かに頷く。



 アリヴィアンは家族の誰にも似ていなかった。

 家族全員、黒の髪を濃い茶色の瞳なのに、アリヴィアンだけが金髪碧眼なのだ。ご先祖の女性がそれだったというから先祖返りだと珍しがられたものだが、アリヴィアンは自分の容姿が嫌いだった。その事を、家族はよく知っている、


 そして王家一番の美貌の持ち主だ。

 女性達がその虜になるのは当然で、アリヴィアンの周りにはいつも女性が群がっていた。


 そこで誰かを好きになれば良かっただろうに、生真面目で変なところが潔癖であるアリヴィアンは、誰かを好きになるどころか女性を避けるように騎士団に入ってしまった。


 ラトニータはいつも思っていた。


(アリヴィアン兄さまほど、気難しい人はいないのかもしれないわ)


 自分のお友達にも良き令嬢がいて、是非紹介したい。アリヴィアンにそう伝えたこともあったが、すらりとかわされてしまったわけで。



 そんな風にやきもきしている間に、なんとアリヴィアンは「妻にしたい女性がいる」と言い出したものだから家族中が大騒ぎになった。父と母も喜び、妹たちもどんな女性なのかワクワクしていた。





(だと言うのに……!)




 紹介された時は誰しも開いた口が塞がらなかった。


 アリヴィアンが連れて来た女性は、長い黒髪の小柄な女性だ。それはまだいい。

 問題は、彼女の目に包帯が巻かれていたことだ。転ばないようにアリヴィアンがその手を引いて、誘導している。その女性が盲目であることを明確に示していた。


「エステル・マハノヴァと申します」


 静かにそう名乗った女性はエステルと言うらしい。ラトニータは少しばかり目を吊り上げて、アリヴィアンとエステルを睨みつけた。


(え…?アリヴィアン兄さま…ご冗談でしょう?その方を王妃になさるおつもり?)


 アリヴィアンは苦労が多い兄だ。だからこそ好意を持った女性と幸せになって欲しいと願っていた。政略結婚が当たり前の王族の中で、その程度の自分の要望を通すくらい別にいいだろうと。心から兄の幸せを想っていた。

 

 しかしこれ(・・)は流石に許容範囲を越えやしないかとラトニータは心の中で叫んだわけで…。



 アリヴィアンはエステルと席に着いた後、彼女との出会いを全て語ってくれた。


 それは驚きの連続だった。

 

 戦時中行方不明となったアリヴィアンを介抱してくれていたのは目の前の盲目の女性で、しかもそのエステルは洞窟の中でずっと一人で暮らしていたと言うではないか。

 マハノヴァ侯爵家縁の者だと言うのに、平民以下の暮らしを強制された哀れな女性。でも誰も恨むことなく、明るく生活をしていたと。

 アリヴィアンもそんなエステルに惹かれ、そして隣にいて欲しいと思うようになったと。そう語った。


 ラトニータだけでなく、そこにいた誰しもエステルには同情した。アリヴィアンが惹かれる理由も理解した。


 だがそれと未来の王妃の件は別物だ。やはりどう考えても、エステルは王妃にはできないと誰しも考えた。


「アリヴィアン…。そのご令嬢がマハノヴァ辺境伯家の関係者だということは分かった。分かったが…、はっきり言って厳しいぞ」


 案の定、王は静かに告げる。


 アリヴィアンは表情を変えなかったが、エステルはその身を更に縮める。その様子を見ていたラトニータは、流石にエステルが気の毒になってしまった。


(アリヴィアン兄さまに見初められた幸運な女性…という感じがしないですわー…。もしかしてアリヴィアン兄さまの片思い?強引に連れて来たって感じですよねえー…)


 皆がハラハラする中で、ラトニータはじいっとエステルを眺めていた。




「父上ならばきっとそう仰るだろうと思っていました。勿論、今すぐにエステルと婚姻をするのは厳しいと私も分かっております。準備期間が長くはなると思いますが…それでも私は諦めたくはありません」


 結局、アリヴィアンの強い意志に周りの者達が譲歩した。

 取り敢えず二年間でエステルは王妃教育を終わらせること、そしてアリヴィアンも王太子としての仕事を覚えて完璧にすることを約束される。


 エステルは聞かれた事には素直に答えていたが、その声は小さく震えていた。


 可哀相だが、彼女はアリヴィアンの妻にはなれない。二年経たずに元の場所に戻るか、王宮を出ることになるだろうと、そっとラトニータは思ったのだった。


【登場人物紹介】

●ラトニータ……16歳。第三王女。ドロニア国の第六子。


●セシリア………16歳。第二王女。ドロニア国の第五子。ラトニータの双子の姉。

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