1 王太子の恋人
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ドロニア国の王太子・アリヴィアンは、美しい金髪の髪を風に靡かせて王宮の長い廊下を歩いている。
アリヴィアンは二十四歳になったばかりの、誰しもが振り返る程の美青年で、王宮を歩くだけでチラリチラリと他者の視線を集めてしまうくらいだ。
その美貌と王太子という権力に釣られる女性は後を絶たなかったが、当の本人は長年、恋人も婚約者もいない。
もしかして男色なのではと心無い噂が流れたこともあるくらい、アリヴィアンは美しい貴族令嬢たちに全く見向きもしなかった。
しかしそんな女っ気が全くなかったアリヴィアンが、つい先だって女性を連れて来た。
当然王宮中は騒ぎになり、アリヴィアンに見初められたご令嬢はどこの誰だと誰しも興味丸出しとなったのだが、アリヴィアンとその側近たちはその女性の名前や素性を未だ公表していない。
その女性は、王族と一部の側近たちしか入れないという、「薔薇の宮」と呼ばれる離宮にいるという。
元々は約百年前の王が建てた公妾のための宮だが、近年は王族が、公務がない時にゆったりとプライベートな時間を過ごすためのものとして使われている。
アリヴィアンは全ての公務を終えた今、その宮へと足を運んでいた。勿論、愛しき女性と時間を過ごすためだ。
二十四歳の王太子もこれでようやく王妃を迎えになると、王宮の者達はほっと一息ついていた。
が、その女性を知る者達は何とも言えない複雑な想いを胸に秘めていた。
女に興味を示さなかったアリヴィアンがようやく誰かを好きになった。それはとても喜ばしい。
しかしあの女性を心の底から歓迎できるかと問われれば、決してそうではない。王妃にできるかと言われれば、「無理だ」と口をそろえて言うことだろう。
そのくらい、アリヴィアンが連れて来た女性は問題があるのだった。
【登場人物紹介】
●アリヴィアン・セミョーノフ・ヴァロンティア……24歳の、ドロニア国の王太子。金髪碧眼の超絶美青年。