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第1章 第18話 どうやら妖精でも特殊らしい

オルタスは、その両手に持った大剣の切っ先を“死人モルス”に向けた。


横目でちらっと、若き騎士ルースの様子を窺う。

どうやら、瀕死の状態ではあるも息はあるようだ。


モルスとは、過去に軽く手合わせをした覚えがある。

モルカット王国の騎士兵団長として、その実力は確かなものではあった。


しかし、オルタスにとって敵ではない。


いまはとにかく時間がない。

一撃で決める。


オルタスは両足を前後に大きく開くと、踏み込む力を溜めた。

そして、両腕に力を込めて大剣を大きく振りかぶる。


「ゆくぞっ! 鉄甲斬アイアンブレード!!」


振り下ろした大剣は、稲光のような閃光を放つ。


「グガガガガァ・・・・ァァ」


死人モルスの身体は、脳天から真っ二つに分かれて地に落ちた。


オルタスが手にする大剣は、ポルファス王国の国宝“ミスリルの大剣”である。

希少金属ミスリルを素材にして、ここまでの質量を使って作られた武器は他に存在しないであろう。


オルタスは、この貴重な国宝をポルファス国王より下賜されていたのであった。


「ルースっ!」


オルタスは、虫の息となっているルースに駆け寄った。

その身体を抱きかかえると、すぐに回復薬を使用する。


「ぐ、ぐはっ、ぐは、すいません、軍団長・・・。」

「しゃべるな!まだ傷口は完全に塞がってはおらん。」


回復薬の効果は確かなものではあるが、瀕死の状態から完全回復するような代物ではない。

何とか一命を取り留めたという程度だ。


ルースをこのままにするのには不安があるが、他の供回りの騎士たちが窮地に陥っている。

オルタスはどうするべきか迷った。


「お、俺は、だ、大丈夫です・・・みんなを。」


ルースは状況を理解していた。

自分が足を引っ張っている場合ではない。


オルタスはルースに頷くと立ち上がった。


いつの間にか“死人となった村人”と同じくらいの数の“死人の騎士”が現れている。

その無数の敵に圧されて、1人、また1人と供回りの騎士が雨に濡れた泥の地面に崩れ落ちた。


オルタスは渾身の力を込めて大剣を振り回すと、複数の敵を一度に切り伏せた。

そして、倒れた王国騎士に駆け寄っては回復薬を使う。


残りの回復薬はこれが最後であった。


こうなると、自分が殿しんがりとなって、無事であった村人を連れて撤退するしかない。

オルタスはそう判断した。


「オルタス軍団長、自分が殿しんがりを務めます!」


供回りの騎士の1人が叫んだ。


「貴殿の勇気は認めよう!だが、殿しんがりは“私”だ!」

「しかし!軍団長!」


その時。

オルタスは、自身が深い暗闇に引き摺り込まれるような、とてつもなく嫌な気配を感じ取った。


「何者だっ!」


その気配に大剣の切っ先を向けた。


場は静寂に包まれ、雨音だけが鳴る。


「へえ。死の騎士デスナイトを一刀両断できる者がいたんだ。」


嫌な気配を漂わせた声の主は、ゆっくりとその姿を現した。


濃い緑色のマントで全身を覆っており、“異形な仮面”の奥には赤く輝く眼が冷たく光っている。

その声音から察すると初老の男であろうか。


その纏う雰囲気は明らかに異常。

云うなれば“死を纏う者”である。


オルタスと供回りの騎士たちは、その場を微動だにできずにいた。


死を纏う者は、地面に横たわっていたルースを慈悲もなく踏みつけると、その手に持つ槍をルースの身体に突き刺した。


「ぐはぁっ・・・。」

「ルースっ!!」


ルースの命の輝きは一瞬で消え失せた。

それでも死を纏う者は、何度も何度も槍を突き刺す。


「貴様が死人使いかっ!!」


オルタスは、自身にも死が迫るのを予感していた。

それでも、自分が刺し違えてでも、この“絶対的強者”を止めなければならない。


「我の名は、ポルファス王国騎士軍団長!オルタスっ!」


オルタスは、不安を振り払うかのように大声で名乗りを上げた。


「クフフフ。」


死を纏う者は不気味に笑う。


「何が可笑しい!」

「そうか、そうだね。ここでお前を殺しても良いけど、もう少し楽しまないと。」


「?」

「クフフフ。いまは見逃してあげる。帰って王に伝えな。あんたに逃れられない絶望が迫っているよって。」


「貴様!何者だっ!」

「そうか、そうだね。復讐は名乗らないと面白くないね。私の名は“シモン”、お前たちに絶望を与える者さ。」


そう名乗ると、死を纏う者は高らかに笑う。


シモン・・・オルタスには、その名前に聞き覚えがあった。


確か50年は昔のことだが、ポルファス王国出身の勇者として魔王を討伐した元勇者の名だ。

その後、国を危険に冒す罪を企んだことによって処刑されたはずである。


「貴様!かつての反逆者シモンかっ!?」

「あっ?・・・・クフフフっ。愉快。本当に愉快。」


死を纏う者は一瞬怒りの表情を見せたが、すぐにまた高らかに笑った。

そして、そのまま後ろを向くと、ゆっくりと歩き去っていく。


すると、死人の騎士、死人の村人が“事切れた”かのようにバタバタと倒れだした。


オルタスと供回りの騎士たちは唖然としていた。

そして、この場には降りしきる雨音だけが響いていたのであった。


**********************


少し時は戻る。


異世界免許教習所ココカラ


僕は仮免落ちのゼフェルと対峙していた。

まずは、冷静にゼフェルのステータスを見ている。


《ゼフェル》

■系統種族:妖精系-コモン  ■年齢:15  ■レベル:1

■経験値:50/2000

■HP:40/40  ■MP:0/0

■攻撃力:4  ■防御力:1  ■魔力:0

■ちから:4

■みのまもり:1

■すばやさ:2

■きようさ:5

■かしこさ:4

【スキル】なし

【ジョブ】なし

【称号】異世界免許教習所に雇われし者・見習い


あれ?

これ、僕とほとんど一緒じゃね??


「妖精系でコモン!? そんなの聞いたことないわっ!」


後ろでミアが叫んだ。

妖精系のミアが知らないということは、ゼフェルは特殊な存在なのであろうか。


僕は懇願する目で、コマゾーに問いかけた。


「あの、やっぱり殴り合いをしないとダメですかね?」

「これは、あくまで組手だにゃ。」


組手と殴り合いでは、何が違うのだろう。

そしてゼフェルは、何となく女の子に見えなくもない。


「ミライさん、行きますよ。」


ゼフェルの方は、なんだか楽しんでいるようにも見える。

君、どこかちょっとズレているんじゃないかと思うよ。

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