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第1章 第16話 どうやら痛い思いをしなくて良かったらしい

ポランが正拳突きを繰り出す。

そして、素早く身体を回転させると後ろ回し蹴りをゴーレムに当てた。


「必殺!メガトンダブルパンチでやんス!」


ポランは両手を組んで振りかぶると、木のゴーレムに打ち下ろした。


ゴンッ!


木のゴーレムにはヒットしたものの、どうやらノーダメージのようだ。

攻撃したポランの方が、手を痛がって涙目になっている。


その姿を見ながら、僕はミアに聞いた。


「木のゴーレムのステータスが、なぜか見れないんだけど。」


「さっきのお掃除ゴーレムと一緒よ。知恵を持たない者にはステータスはないわ。」

「そうなんだ・・・。」


ミアは、オデコにできた大きなタンコブを痛そうに抑えている。

不服そうな顔をしながら、自分で自分に回復をかけていた。


ゴツンっ!

木のゴーレムが振り下ろした右手チョップが、ポランの頭にクリーンヒットした。


ピヨピヨピヨ・・・。

ポランは目を回しながらくるくる回ると、ポテッと倒れた。


「ふむ。2人ともこの程度とは、ちと情けなさすぎにゃ。」


コマゾーは右足で耳元を掻いた。


「次はミライの番だにゃ。」


僕は覚悟を決めて木のゴーレムに対峙する。


木のゴーレムはどう見ても堅そうだ。

きっと殴れば手が痛いし、蹴れば足が痛いだろう。


さて、これはどうしたものか・・・と僕は悩む。


「そんな消極的じゃダメにゃ。ほれ、悩んでいるうちにゴーレムが仕掛けてくるにゃ。」


木のゴーレムは、僕に向かって真っすぐ歩いてきた。

そして、木のゴーレムが左手を突き上げる。


「!?」


僕はとっさにかがんで、頭を守る防御の姿勢をとった。


・・・・・。


あれ? 木のゴーレムからの左手チョップが来ない。


そぉっと見上げてみる。

木のゴーレムは、その身体から伸びていた枝に1つだけなっていた実をとって、僕に差し出していた。


「くれるのかな?? ありがとう・・・。」


僕がその実を受け取ると、木のゴーレムは後ろを振り向いて、そのまま歩き去ってしまった。


「ふにゃ?」


コマゾーが首を傾げる。


「あの、何か、実を貰っちゃいました・・・ははっ。」


たぶん、かつての僕が作ったゴーレムだから、僕には攻撃をして来なかったのじゃないかと思う。

コマゾーには、僕のかつての姿のことについて伝えた方が良いかな。

僕は、そのことをコマゾーに説明することにした。


**********************


その頃。


- 魔素の世界 -


空は厚い雲に覆われて、大粒の雨が降り注いでいる。


その雨の中、ポルファス王国の王国騎士軍団長のオルタスと供回りの騎士たちは、馬を駆けて自国に戻る道のりを急いでいた。


滅亡したモルカットの領土にあった小さな町は散々たる状態であった。

小さな子供までもが犠牲となっており、生存者は誰一人として見当たらなかったのだ。


「オルタス軍団長!あちらを!」


供回りの若き騎士が左前方を指さす。


煙だ。

煙が何本も立っている。


ここは、すでにポルファス王国の領土内に入っている。


あの煙は、この近くにある“ワクニ村”で問題が起こっているに違いない。

オルタスは嫌な予感がした。


「このまま、ワクニ村の確認に向かうぞ!」

「はっ!」「はっ!」「はっ!」


「思い過ごしであれば良いが・・・。」


オルタスは、心なしかその手に握る手綱が重く感じるのであった。


**********************


一方、その頃。


オリオン捜索の仕事クエストを指示されたウォルス、ジーニャ、エレンの3人は、異世界免許教習所ココカラにある“転移の間”から転移して、すでに魔素の世界に足を踏み入れていた。


「いきなり大雨とは、ついてないさね。」


ジーニャは、その銀色の髪が雨に濡れるのを嫌ってフードを深く被った。


「さてと、MAPマップを見てみるかの。」

「残念ながら、近くには青い印はないようね。」


ウォルスとエレンの2人は、この魔素の世界の出身である。


その為、この世界の地理には詳しい。

しかし、いま見ているMAPマップには、不思議なことに現在地の地名が一切表示されていない。


「はて? 何でMAPマップに地名が表示されておらんのかの?」


ウォルスは、そのでっぷり太ったお腹を掻きながら首を傾げた。


「エレン、一体どこに転移するように設定したのさね?」

「不思議ね。モルカット王国の王都付近に転移するように設定したはずだけど。」


3人の立つ位置からは、モルカット王国の城は見えている。

その城がある場所が王都であり、その地名がMAPマップにされるはずである。


そのモルカット王国は滅亡していた。

その為、MAPマップからは、国と土地の表示が消去されていたのであった。


**********************


異世界免許教習所ココカラ


かつての自分は、異世界免許教習所ココカラの初代所長であった。

そのことを僕はコマゾーに説明していた。


「ふむ。いつまでもゴーレムが作り手のシンパシーを感じるとは・・・ワシも初めて聞いたにゃ。」


コマゾーは、右足で耳の裏を掻いた。


「ミライだけ痛い思いをしなくて済むのは、ずるいでやんスっ!」

「そうよ!そうよ!ミライもデコピンされるべきだわっ!」


おいおい。

君たちは仲間では無かったのかね。


僕は、ミアとポランを白い目で見た。


今更だが、コマゾーのステータスを見ていなかったな。

大賢者であるからには、きっとビックリするくらいにレベルが高いのだろう。


そう思って僕は、コマゾーのステータスを見てみた。


《コマゾー》

■系統種族:妖精系-ケットシー  ■年齢:1234  ■レベル:79

■経験値:2501000/2550000

■HP:700/700  ■MP:3500/3500

■攻撃力:40  ■防御力:40(+300)  ■魔力:2200(+800)

■ちから:40

■みのまもり:40

■すばやさ:50

■きようさ:50

■かしこさ:220

【スキル】強運

     重力操作

     瞬間移動

     全属性攻撃魔法・全属性範囲攻撃魔法

     全状態異常付与魔法・全範囲状態異常付与魔法

     全補助魔法・全範囲補助魔法

     全召喚魔法

     全属性耐性

     全状態異常耐性

【ジョブ】大賢者/マジックキャスター/スピリットサモナー

【称号】異世界免許教習所に雇われし者・隠居

    導きたる者


超絶チートだ。

もう“ぶっ飛んでいる”としか思えない。


その時、後ろの方から若者の声が聞こえてきた。


「いま、戻りました。」


MAPマップには青色の印が表示されている。

するからには同僚であろう。


「ふむ。ちょうど良い時に戻ってきたにゃ。」


コマゾーが、声の主をこちらに手招きする。


声の主がこちらに歩いてくる。


「誰?」

「誰でやんス?」


どうやら、ミアとポランも誰か知らないらしい。


「お主らに紹介するにゃ。仮免堕ちの“ゼフェル”だにゃ。」


「えっ!?」

「ヘッ!?」

「エッ!?」


僕らは、この目の前の若者が仮免堕ちと聞いて絶句した。

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