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第1章 第13話 どうやら時間はわかるらしい

スケルトンが僕の顔面を殴ってくる。

ぺち。


今度はゾンビが襲い掛かってくる。

ぺち。


ついには、スケルトンとゾンビが一斉に襲い掛かってきた。

ぺちぺち。


あれれ??思ったほどに痛くない。


夢か。


どうやら僕は、ぺちぺちと頬を叩かれているようだ。

夢心地であった僕のまぶたが、無理やりこじ開けられる。


「ふが~っ!」


「おっはよ~ん。」


僕の両目のまぶたを無理やりこじ開けた犯人がそこにいた。


「ミアっ!」


「おはようでやんス。」

「ポランっ!」


2人がいた。

2人とも元気そうだ。


「ミライ、お腹空いたから朝食を食べに行くわよっ!」

「お腹ペコペコでやんス。」


「え~。まずそれ?」


僕は、無事に再開できた喜びを分かち合いたかったのだが・・・。


ポランに手をとられて、僕はベッドから引き起こされた。

急いでパジャマから村人Aに服を着替える。

そのまま、寝癖を直す暇もなく、2人に部屋を連れ出されてしまった。


僕の部屋を出ると、目の前にはゴーレムが立っていた。

銅のような素材で作られているようで、全体的に銅色をしているゴーレムである。


背丈は僕より低く、見た目は若干のロボット感が感じられる。

その手にはタオルを持っており、背中には掃除道具を背負っているようだ。


「毎朝、ゴーレムが着替えやタオルの補充、部屋の掃除までしてくれるんでやんス。」

「たぶん、あれも昔のあんたが作ったゴーレムよ。」


銅色のゴーレムは立ち止まると、じっと僕を見ている気がする。


同じ型のゴーレムは、他の部屋でも何体か動いていた。

そのゴーレム達も、やはり僕の姿を見ると立ち止まり、じっと見てくるのであった。


「はやく行かないと、朝食の時間が終わってしまうわ!」

「ミライは寝坊スケでやんス。」


僕はそのゴーレム達が気になるものの、ミアとポランに手を引かれてその場を後にした。


僕らは食堂までの道すがら、互いの無事を喜びながら昨日の出来事を確認していた。


「ほんと、2人が無事で良かったよ。」

「そうでやんスか。ミックが助けに来てくれたでやんスね。」

「ミッチーには借りができたわね。それにしても、助けを呼べた私ってすごくない??」


へえへえ。

と僕とポランは答えた。


「何それ?もっとほら。もっと、わたしに感謝してくれても良いわよ。ほら。」


そう言って、ミアは手を腰にあてると胸を張ったポーズをして偉そうにする。


へえへえ。

と答え、僕とポランはお互いを見合って笑った。


それを見たミアがプリプリと怒って、笑った。

こうして、また3人で笑っていられることが嬉しい。


ミックに感謝しないと。


食堂に着いた。

すでに朝食のピークタイムは過ぎたようで、食堂の中はポツポツと誰かがいる程度だ。


食堂の中にいた同僚は、僕らの姿を見るとみんなが集まってきた。


「おう。お前ら、えらい目にあったらしいな。」

「聞いたヨ。よく無事だったネ。」

「もう歩いて大丈夫なのか?」

「上席教官以上は、みんな朝から所長に呼ばれたそうだぜ。」

「おっ。君は新入りかい?」


食堂の中にいた同僚たちが集まってきた。


●獣人と思われる人と狼を掛け合わしたような姿の者。

●背中に大きな亀の甲羅を背負ったタヌキのような姿の者。

●全身に草や葉っぱを纏っていて不思議な仮面を顔につけた姿の者。

●立派な翼を持った二足歩行するタカのような姿の者。

●どこからどう見ても河童カッパの姿をした者。


どうやら、みんなが心配してくれたらしい。


ミアとポランは、集まってきたみんなと談笑を交わしている。

食堂の中には、残念ながらミックの姿は見当たらない。


僕は、揉みくちゃにされている2人の分を含めて、ツクモガミにオーダーをお願いした。


「3つでお願いします。」


トントントンッ。

ザッザッザッ。

ジュー。

ガチャガチャガチャ。


僕たちの朝食が、手際よく調理されていく。


************************


同じ時刻。


- 魔素の世界 -


魔素の世界では異変が起きていた。

ほんの一夜にして、この世界に存在する国の一つが滅んだのである。


その滅んだ国の名は“モルカット王国”という。


モルカット王国の初代の国王は聡明な人物であったが、初代国王亡き後は腐敗政治へと変化し、貴族による搾取と圧迫から国民の生活が常に困窮していた国であった。


そのモルカット王国内で、何らかしらの反乱が起きたという情報は一切ない。

国の滅亡と共に国民までも惨殺されている。


魔素の世界には、魔王が統治する国が存在している。

しかし、ここからその距離は遠く離れており、これが魔族の仕業であるとは考えにくかった。


原因不明である。


「これは、あまりにも酷い惨状だな。」


大柄で身なりの良い騎士は、馬から静かに降りた。

その姿を見て、まわりにいた騎士たちも馬を降りる。


「オルタス軍団長、これは魔物による仕業なのでしょうか?」

「いや、魔物の仕業にしては建物の被害が少なすぎるな。」


騎士たちは辺りを見渡した。

ここはモルカット王国の領土内に存在する小さな町である。

それが、見るも無残な姿になっているのであった。


一夜にして滅亡したモルカット王国は、地形的に魔素の世界で1、2を争う大国が隣接している。

その大国の名を“ポルファス王国”という。


彼らは、そのポルファス王国の精鋭騎士たちであった。


オルタスは、ポルファス王国が誇る屈強な王国騎士軍団の軍団長であり、その実力と名声はこの世界全土にまで広がっている人物である。

齢30にして軍団長を任されてから、40歳となった現在も彼に敵う者はポルファス王国内には存在しない。


隣国モルカットに異変あり。

深夜、そのオルタスの下に急な知らせが入ってきた。


その知らせを受けて、ポルファス王国の領土から最も近い場所に位置しているこの小さな町の様子を見に来たのであった。

急ぎであった為、供回りは少数精鋭に絞ってきている。


「生存者がいないか探すぞ。息がまだある者は全員保護する。」

「はっ!」


オルタスは、回復魔法を扱える魔導士を連れて来なかったことを悔やんでいた。


「手持ちの回復薬は少しか・・・ただ、この惨状では必要ないかもな。」


そう呟くと、オルタスは空を見上げた。

厚い雲が空を覆い始めており、すぐにでも雨が降ってくるであろう。


***********************


異世界免許教習所ココカラ


僕たちは朝食を終えて食器を返却棚に返した。


今日の朝食はパンと具沢山なスープであった。

そして、やはり野菜の味は薄かった。


「さて、大賢者のところに行くとするでやんスかね。」

「もうこんな時間!? ミライの寝坊スケのせいで、ちょっと遅くなったわね。」


ミアとポランが少し慌てだした。


「何で2人とも、いまの時間が分かるの??」


時計がないにも係らず、2人はまるで時間を把握しているかのようである。


「だって、MAPマップの中に表示されているじゃない。」

「へ?」


僕は改めて、MAPマップを見てみた。


確かにある。

左上に現在の時刻が表示されていた。


「目覚ましの機能もあるでやんス。」

「目覚ましの時間になったら、頭の中でベルが鳴り響くわよ。」

「うわぁ。ほんとにMAPマップは、何にでも便利だね。」


僕らの歩く先から、石のゴーレムが3体こちらに向かって歩いてきた。

その手には大きな木箱を持っており、それには農作物が箱一杯に詰まっている。

どうやら収穫してきたばかりのようだ。


石のゴーレム3体は、僕らとすれ違う際に立ち止まった。

そして、じっと僕を見てくる。


「あれかな?所長が作り手のシンパシーを感じるとか言ってたし。」

「ミライが、自分たちの作り手だと感じているんでやんスかね~?」

「やっぱり、そうなのかな~?」


因みにMAPマップには、ゴーレムを示す印は何も表示されてない。


MAPマップには、ゴーレムは表示されないんだね。」

「あー。知恵を持つ者でなければ、MAPマップには表示されないでやんス。」

「知恵を持つ生物とか精霊とか。そうね、他には霊体とかもね。」


「え。霊体って、もしかして幽霊??」

「何? もしかしてミライってば、霊体が怖いの?」


ミアが悪い顔をして、ニヤッと笑ってきた。


「いやいや。でも、得意では・・・ないかな・・。」

「因みに所長は規格外でやんスから、MAPマップにも大きく表示されるでやんス。」

「そうだと思ったよ。」


ミアがピンときた!という表情をして、僕に向かってニヤケながら言う。


「因みにここで教習を受けている生徒たちは、み~んな霊体よ。」

「・・・・・まじ?」


僕は、嫌な情報を聞いてしまった。


大賢者コマゾーがいるという建物に着いた。

しかし、MAPマップを見ると建物の中に青い印は見られない。


「お留守かな?」

「そういえば、さっき上席教官以上が所長に呼ばれたとか言ってたでやんス。」

「まあ。でも、あの大賢者だからすぐ来るでしょ。」


ミアとポランは、ズカズカと大賢者がいるはずの建物に入った。


「お邪魔・・・します。」


建物の中は殺風景であった。

僕は勝手に大量の本が積み重なった部屋をイメージしていた為、少し意外な感じがする。


窓の外にはグラウンドが広がっていた。


すると、背後に急に気配が現れた。


「おや。待たせたのかにゃ?」


声の主は、音もたてずに現れた。

MAPマップには、今の今まで周辺にはなかった青い印が、すぐ後ろで表示されているのであった。

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