衝動
「あ、ああ・・・そ、そんなっ!ミア!ミア!」
「彼女が出勤しないのでおかしいと思い、同僚が家を訪ねたのですが・・・」
ラプンツェルが組合に呼び出されて告げられた言葉。ミアが何者かに殺された。
その一言で彼女の頭の中は真っ白になった。
冒険者組合の受付をしている彼女とラプンツェルは同じ孤児院の出だった。
歳も近く親友と呼べる存在だった。
そんな彼女の死体・・・しかも明らかに拷問されたような惨殺死体を見てラプンツェルの心は荒れに荒れていた。
「絶対に許さない・・・絶対に・・・」
普段のラプンツェルからは想像もできない姿だった。泣き叫びうずくまり地面に拳を力任せに叩きつける。
そしてラプンツェルは生まれて初めて騎士の誓いを破る決意をした。
それは人を殺める決意。
「殺してやる・・・殺してやるッ!絶対に殺してやるッ!」
「落ち着いてください先輩」
「・・・セルちゃん・・・ッ!」
「騎士の誓いを破る気ですか?騎士とはいついかなる時でも法の下に平等の裁きを与えなくてはならない。私怨で動くなんて持っての他です」
「・・・わかってる・・・わかってるよ!」
「本当ですか?なら現場検証を行いますのでどいてもらえますか?」
「ッ!?触るなッ!」
セルギーの遺体へ無造作に伸ばされた手を叩き返した。
「なにするんですか?私は仕事で来てるんです。邪魔するなら帰ってください」
「・・・ぐぅぅぅ、お、おかしいっ!おかしいよっ!なんでっ!なんでそんなに冷酷になれるのっ!いくらなんでもっ!」
「これが騎士の仕事です。どいてください。邪魔です」
「ぅぅぅぅぅ」
「セルギー様、お言葉ですが少し乱暴ではありませんか?この方はラプンツェル様と同院の子です。少しのお時間を与えるくらいで捜査に影響はございません。ラプンツェル様の心情を理解されてはいかがでしょうか?」
「っ!?・・・そ、そうですね・・・少しやりすぎました。すみません先輩」
「ぐぅぅぅぅぅっ」
「ラプンツェル様大丈夫です。私が責任をもってこの方を丁重に扱わせていただきます。死者の尊厳を踏みにじる行為は決していたしません」
「・・・か、鑑識さん」
セルギーは居心地が悪くなりその場を離れる。
「セルギー様少しよろしいでしょうか?」
「な、なに?」
「どうしてあのような事をなさったのですか?」
「・・・わ、わたしは騎士として」
「はたしてそうでしょうか?本当に騎士として己に恥じない行動だったでしょうか?」
「そ、それは・・・」
「詮索は致しません。行き過ぎた真似をご容赦下さい」
「あ、謝らないで!悪いのは・・・わたしだから」
「もし謝罪の必要があるのであればラプンツェル様へ向けられては」
「そ、そうだねっ!」
セルギーはラプンツェルの元へ走り出した。
「・・・」
~
「ちっ、まだ完全に支配できるわけじゃないのか」
あの受付から情報を聞き出して殺した後運よく新なスキルが手に入ったから使ってみたがそんな便利なもんでもなさそうだ。
まぁいいさ、この世界の常識や冒険者組合の仕組み、運が良かったのは警備部隊にも詳しかったことだな。
「それにしても外のモンスターを倒してもLVが上がらねぇ、やっぱり人を殺さなきゃダメなのか・・・くそ、そのためには警備部隊が邪魔だ」
街の外の脆弱なくせに無駄にしぶといスライムを狩り続けても一向に上がらないLVにイライラしてきた俺はもっと効率よく人殺しができるシステムを考えていた。
「助けて下さい!そこの方!お願いします!」
「あん?なんだあいつ?」
俺がスライムと格闘していると栗色の髪の女が駆け寄ってきた。
「お願いします!追われてるんです!助けてください!」
美人局か?