異世界のクズ
「最近ここいらで強盗が出てるらしいぜ」
「スラムでもないのに治安が悪いな。警備隊はなにやってんだ?」
「なんでも神出鬼没で突然現れて突然消えるってよ」
「なんだよそれ?まるでゴーストじゃないか」
男達が談話している中、ある視線がその二人を射抜いていた。
その内の一人はここいらでも有名な商人だった。
「まぁあんたも気を付けなよ。狙われるとしたら金もってそうなほうだからな」
「おいおい怖いこと言うなよ」
二人は別れ商人は裏路地へと消えていった。
「俺も用心するかな。さて、冒険者組合に・・・えっ?」
商人を見送った男が踵を返すとその腹には深々とナイフがささっていた。
「お、お前・・・まさか噂の・・・」
ナイフが引き抜かれ鮮血が舞う。人通りが多いとは言えないにしても白昼堂々と人が殺された。
しかし周りは見て見ぬふり、いや、気づいてない様子だった。
「ひひっ、経験値ゲット!」
~
幸運だった。
まさかって感じだ。まさか、まさか、まさか。
俺は死んだと思った。死にきれなかったとしても警察病院のベットの上だろうと。
細心の注意を払って自殺した。裁判所で。
だけど気づいたらファンタジー映画で見たような草原の中だった。夢だと思った。
だけど夢じゃなかった。いや、いまだ夢かもしれないが、そんなことはどうでもいい。
俺に起こった異変はそれだけじゃない。まず己の肉体だ。
若返ってる。というより年齢そのままで極限まで鍛え上げられたようながっしりとした体格。
栄養失調だった前とは雲泥の差だ。軽く走っても息切れ一つしない。
それとまるでゲームのような画面。
最初何かの拍子に出てきたそれは。試行錯誤してるうちにどうやら頭で念じれば表示されるものだった。
田中 としあき
LV10 職業:人殺し
ライフ 10
スキル 運命操作
経験値特典(人型)
ゲームの中にいるみたいだ。
表示されたそれらを確認するために俺は実験した。
だがまず金と食い物が必要だった。草原から歩き続けると街を発見した。
そんな運よくたどり着けるものだろうか?という疑問はなぜかわかなかった。
後々分かったことだが、これは俺のスキルにある運命操作というやつだ。
俺はある程度自分自身とその周辺にいる奴の運命を導くことができるようだ。
俺が金と食い物が欲しいと念じると街へ着いた。
まるで神のお導きだ。
街へ入った俺は家屋へ押し入り皆殺しにして金と食料、それと衣類を奪った。
どうやらこの世界はファンタジーでしかも文明レベルが中世並だ。少し気を付けるだけで犯罪がやりたい放題だ。
しかも俺には運命が味方している。警備部隊という警察のような組織はあるみたいだが捜査はずさんだ。捕まるわけがない。
そこからもう一つのスキル。経験値特典(人型)を試してみた。と、いうより知らない間に結果が出ていた。
俺は人を殺すほどLVが上がるみたいだ。LVが上がれば体がさらに軽くなり、力も湧き上がってきた。
そこから今まで10人殺した。最初は金目当てだったが、金なんてどうとでもなる。今は力をつける時だ。
今俺の足元で転がっているこいつで11人目。白昼堂々の犯行だが周りは気づかない。
なぜか?それは俺が捕まる運命じゃないからだ。だから誰も気づかない。俺がこの場を離れるまで誰も気づかないだろう。
街のやつらは突然死体が現れたと恐怖する。監視カメラもないこの時代に俺の痕跡が残ることはにない。
田中 としあき
LV11 職業:人殺し
ライフ 11
スキル 運命操作
経験値特典(人型)
鑑定
LVが上がった。それにスキルも増えた。鑑定か。
試しに鑑定を使うよう念じてみた。
ラスケル(死亡)
LV2 職業:冒険者
ライフ 0
スキル 剣術2段
体術2級
他人の画面が見えるのか。
そして名前の横に死亡と書かれている。死んでるかどうか確認できるのは結構有用だな。
それとライフは0か。死んでいるのだから0なのか、0になったから死んだのか。はっきりしないな。
ミナト
LV1 職業:花売り
ライフ1
スキル 話術1級
違うやつを覗いてみるとライフは1だった。
他にもいろいろな奴を覗くがライフはすべて1だ。
中にはLV15というやつもいたがそいつのライフも1だった。
・・・どうやらこれは命の数って考えた方がよさそうだな。1回死ねば死ぬ。当たり前だが。
そうすると俺のライフは11だ。俺は11人分の命があるってことだ。
この世界で他人は一度きりの人生。俺はライフが尽きるまで遊んでられる。
それにLVが上がればライフも上がる。いや、他人の命を俺が頂いているのだ!
クックック、せいぜい有効活用させて貰おう。
本当に俺には神様がついてるみたいだな。