表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間のクズが異世界に行った  作者: まるいんこ
1/6

現代のクズ

この世が平等じゃない。


橋の下で身を潜めて空腹に耐えていた。ただ時間が流れることだけに身を置いている疎外感。


どうして俺だけがこんな目に合うのかと、考えるだけ無駄だと分かっていても頭の中にこびり付いた其れは定期的に俺の心を蝕んでいく。


腹が立つと腹が減る。だからできるだけ何も考えないようにしなくてはならない。




人間の欲と言うのは本当に底なしだと思う。


金持ちがいくら金があってもまだ何かを欲するように、底辺を這いずる俺にも人間の欲求が襲い掛かってくる。


腹が減る。眠くなる。さすがに性欲を感じることはほとんどない。常に腹が減り寝ては空腹で起きるの繰り返しだからだ。


いい加減ループから抜け出したい。早く救いが来てほしい。いや、神様なんてものが存在するなんて思っちゃいない。


神様がいるならなぜ俺はこんな目にあっているのかと考えてしまう。まぁ宗教家に言わせれば俺は前世で大罪を犯した罪人なのかもしれないが。


今の俺には関係ないことだ。



気づけば夜になっていた。俺は人の目を気にしながら身を起こして自分にかかっていたビニールシートをよける。


昼に動けば人の目があり、憲兵がやってくる可能性があるため俺は夜まで何もせず身を潜めている。


辺りを見渡すと人通りは少ない。俺はゴミ捨て場まで足を運んだ。



いつも通りゴミを漁って何か食べれるものがないか探す。俺の他にも浮浪者が同じようにゴミ漁りをしているが気にしない。お互い不干渉だ。


たまにある炊き出しがあれば万歳三唱で大喜びするが、いつもの食卓にならぶのは誰かの廃棄物しかない。


1時間ほど漁って元いた場所で残飯を食らう。今日はあまりいいものが無かった。


食べ終わった俺はまた寝床について考えるのをやめる。食べる以外は寝るしかないのだ。






周りから喧騒が聞こえる。誰かが騒いでるようだ。最悪だ。




「なぁ、本当にここにホームレスがいるのかよ」


「間違いないよ、ほらそこのダンボールで囲われてる所、あそこに住んでんだよ」


「マジで?キャハハ!きったねー」


「マジでやんの?警察とか来たらどうすんだ?」


「そんときゃ逃げりゃいいだろ」



少年ら3人が談笑しながら歩いている。


あいつら間違いなくここに来る気だ。


俺みたいな浮浪者にはたまにああいう危険が迫ることがある。大抵はバカにして動画でも取って時間がたてばどこかへいくのだが。


あいつらなんか持ってるな?なんだ・・・



「おいガソリン持ってきたか?」


「おーバイクから抜いてきたぞ?」


「すげーな。お前科学者じゃん!ガソリン手に入れるとか科学者じゃん」


「キャハハハハハ」



ちっ、マジか、あいつら。火をつける気か。


ホームレスをからかってそういう事件が起きてるのは知ってるが、まさか俺が被害にあうとはな。


しかも焼死ってのは一番苦しい死に方じゃねーか。しかも死にきれなかったら地獄だぞ?


クソガキが・・・でも三人か。丁度いいかもな。



「ん?中から人が出てきたぞ?あいつじゃねーの?」


「ああ、ホームレスだ。きもっ!」



ガキどもが俺を指さして笑ってやがる。



「お前ら、なんだ?ここになんの用だ?」


「うわっしゃべりかけてきたぞ!こいつ!」


「あ?なんだおっさん!きもちわりーんだよ」



高校生くらいか?・・・ちょっとやっかいだな。まぁいけるか。



「喋りかけてるだろ?なんだ?なんのようだ?言葉がわからんのか?あ?」



「おい、こいつなんか危ないんじゃねーの?」


「こっち三人だぞ?ボコっちまえばいいだろ」


「あ?やんのかおっさん!」



3人いれば1人はイキった奴がいるもんだな。



「・・・ちっ、クソガキが、死ねよ。しょうもな」



俺はイキったクソガキを指さして唾を吐いた。



「おいこら、やんのか?あ?やんのか?」



するとクソガキはこちらに近づいてきた。指をさされたら大抵腹が立つからな。それも俺みたいなクズに。



「おいシメんの?」


「こいつムカつくわ。おい、殺すぞおっさん!」



二人近づいてきた。一人は後ろの方か。


俺はそいつにずっと指をさして照準を合わせている。


するとそいつは俺の指をとって外側にひねってきた。その瞬間反対の手に持っていた包丁でそいつの腹部を刺す。



「・・・あ?」


「おい?どうした?」


ガキが腹を抑えて倒れる。包丁を掴ませないために素早く抜いて下腹部周辺を数回刺す。。


俺は続けざまに二人目のクソガキに向かってタックルをかまし、腹部を刺して捻り上げる。




「おい!なんだよ!こ、こいつ刺しやがった!」



刺した二人は腹を抑えてうずくまっている。


内臓を刺されたら声なんか上げられねーくらい苦しいからな。運動もしてねぇのに玉のような汗をかいてるな。青春してるじゃないか。


しかしもう一人、少し距離が遠い。やばいな。走られたら追いかけられない。



「おい、こいつら殺すぞ?金出せ」


「なんだよてめぇ!人殺しがよ!」


「まだ死んでねぇよ。ほら金出せよ。救急車呼ばなきゃほんとに死ぬぞ?」



俺はわざとクソガキの方へ包丁を投げてやる。



「え?」



すると反射的にそいつは包丁を拾いにかかる。


腹部に隠していたもう一つの包丁を取り出し、そいつ目掛けて走り出す。



「・・・は?」



え?とか、は?とか、語彙力が少ねーな。碌に学校も行ってないだろ。いや、ガキなんてこんなもんか。


最後のクソガキは前のめりに倒れた。屈んだ所に背中から肺がある部分目掛けて数回素早く刺した。じわっと血が衣服に広がっていく。


これで終わり。ちょっと賭けの部分はあったけど、未来ある若者3人を刺すことに成功した。





戦利品はポリタンクとガソリンと2万くらいか。結構もってるな。ライターとタバコもあるな。クソガキの鏡じゃねーか。


ていうかポリタンクにガソリン入れるとかアホか?気化して膨れ上がってるじゃねーか。蓋が飛んでいきそうだから少し緩めるか。



「ぅぅぅ・・・」



クソガキどもはまだ生きてる。3人を橋の下へ連れてきて人の目から遠ざけ持ち物を漁っていた。


しかし必ずしも人に見られないわけではないのでさっさと用事を済ませよう。



「ちっ、ガソリンなんか使えねーからこいつら焼き殺すか。金とタバコとライター・・・くらいだな」



「た、助けて、下さい。きゅ・・・救急車・・・呼んで、下さい・・・」



クソガキってのはヤクザとか半グレの前以外にも礼儀正しくなるんだな。


3人目を刺した後、追加で両足を複数回さして動けなくした。



「このクソガキが、元々俺の家燃やそうとしてたんだろ?自分が焼け死ね」



「・・・すみません、でした・・・たすけて・・・ください」



なんか俺が悪いことしてるみてーじゃねーか。胸糞悪い。


俺は三人にガソリンをかけて回って火をつけた。泣き叫ぶことはなかったが、煙が上がり辺りが臭くなってきた。さっさとこの場を離れよう。






しかし人間の欲ってのはすごいな。俺はガキども3人を殺したら自分も死ぬ気だった。ガキ3人の命を道連れにできるんだから儲けものだと思ったからだ。


だが今になってみればもう少し生きてみたいと思えるようになった。少しだが金も手に入った。服もガキどもからはぎ取って身ぎれいにした。


後は風呂にでも入って髪と髭をなんとかすれば街に溶け込めるだろう。


だが、俺は今殺人犯だ。すぐに警察が来て捜査されるだろう。さっきからパトカーや救急車や消防車がサイレンを鳴らして河川敷の方へ向かっている。


どうせもう終わりだ。この金でちょっと贅沢したら首をくくるか。


・・・いや、どうせなら最後まで悪あがきするか?しかしその場合、追い詰められた時に死ねるかどうかだ。


あいつらは死んで当然のクソガキだったが世間はそうは思わない。未来ある若者が犠牲になったとかなんとか好き勝手言いやがる。


俺は捕まったら死刑になるだろう。裁判から死刑執行まで反省する日々を送らされるだろうな。てめぇの躾ができないクソガキを始末してやったのに厚顔無恥にも俺を責め立てる遺族のゴミ共の顔が浮かぶ。


そんな胸糞悪いことになるなら死んだ方がいい。だが突然死ぬことには俺も自身がない。


さっきコンビニでかったおにぎりをお茶で流し込こむ。


とりあえず腹は膨れた。久しぶりにまともなもんが食えた。おにぎりを10個も食べたからか血糖値が上がって眠くなってきたな。


さっきのガキどもから奪った財布を漁る。中から免許証が出てきた・・・意外と近いな。行ってみるか。





テレビのニュースを眺める。今日俺が殺したガキどもの事件が報道されている。上空から空撮している。ヘリにも乗ってみてーな。


ソファーに腰かけて冷蔵庫にあったビールを飲む。風呂上りのビールはうまいな。髪もバリカンで刈って髭もさっぱりした。


俺は今クソガキの内の一人の家でくつろいでる。


チャイムを鳴らしたら誰も出なかったので窓を割って中へ侵入した。侵入するだけなら簡単だ。痕跡を残さないのが難しいだけで。


幸い本当に留守だったので中でくつろぐことにした。途中で鉢合わせしたら殺すだけだ。


すると玄関の方から音が聞こえてきた。どうやら鍵を開けているようだ。俺は息を殺して得物を構える。


わざとリビングの扉を開けてすぐそばで待機する。



「あれ?だれか帰ってるの?お兄ちゃん?」



女の声だ。お兄ちゃんってことは妹か。



「あれ?おにぃ・・・!?」



無防備にリビングへ入ってきたそいつの首に腕を回して得物を当てる。相当に驚いてるようだが、声を出させないように強めにチョークを入れた。



「おい、静かにしろ。殺すぞ」



コクコクを首を縦に振った。



「あ、あなた誰・・・お、お金ならありません」


「叫んだら殺すぞ、質問にだけ答えろ」


「こ、こんなことしても警察につかまりますよ?い、今ならまだ間にあいますよっ」



包丁をふとももに突き刺す。



「~~~~~~ッ!」



じたばたと暴れるそいつの首を強く占める。少しおとなしくなってきたので力を緩める。



「何人家族だ?また刺すぞ?」



「い、痛い・・・痛い・・・」



反対のふとももを刺した。また叫びそうになったので首を絞める。こいつさっきから俺のことを何回かひっかいてるな。


殺したら手首を切り落として隠ぺいしないとな。ちなみに俺の急所の部分にはガキどもの服を詰めているので漫画みたいに金玉アタックされる心配はない。



「何人家族だ?次は腹だぞ?」



「・・・・よ、4人ですっ・・・助けてください・・・」



多分嘘じゃないだろ。そこまでして隠す情報じゃないからな。


俺は心臓目掛けて複数回包丁を突き刺してそいつを殺した。








「被告人は罪もない少年3名及び関係のない少女1名の命を奪い・・・



あれから7年。俺は最高裁判所で今まさに判決を受けようとしている。後ろにはあのクソガキの遺族共がムカつく目で俺を見ている。


結局あの後家でくつろいでいたら眠ってしまい、そのまま警察につかまってしまった。


くだらない理由で終わりを迎えるのはまさに俺の人生って感じだ。


どうせ判決は死刑だろう。最高裁まで行っただけすごいと思う。弁護士ってのは俺が言うのもなんだが悪人だな。今もすかした顔をしてやがる。


まぁ・・・この7年で俺も色々考えることができたからありがたい。




「被告人最後に何か言いたいことはありますか?」


「・・・特に何も」


「では被告人を死刑判決とします」



俺は深呼吸し、肺の中の酸素をすべて出して限界まで息を止めた後、判決と共に舌を噛み切った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ