貴族の悩み
天皇様と一緒で、身分の高い人ってきゅうくつですよねえ。
悲しいなあ。
私は、ラナ・ハトリーネ。
貴族の娘だから、身分の高いカツネイア・チェルマン様と婚約している。
親に決められた結婚だし、好きではないのだけど、カツネイア様はなんと皇帝。
私が嫁げば、ハトリーネ家のためになる。
結婚とは、そういうものだ。
家のために嫁ぎ、一生愛していない人と暮らす。
つらいけど、それが掟というもの。
「ラナ様、カツネイア様がお見えになりました。」
「分かった。案内しろ。」
将来の夫とはいえ、まだ私は12歳。対するカツネイア様は13歳。
実質的な交際はないから、今日が初対面だ。
衣装を着て、髪飾りをつけた。
少しでも気に入ってもらうために。
うっ。この衣装、重いし苦しい。
私は広い部屋で正座をしていた。
前に一段ほど上にある席があった。
将来の夫とはいえ、相手はこの国の皇帝。
身分は高い。
「ラナ殿、顔を上げよ。」
「はい。」
私は顔を上げた。
カツネイア様の容姿はすばらしかった。
目はななめに切れ上がっていて、鼻が高かった。
「ラナ殿、そなたは将来の我の妻。元気にふるまってもよい。」
「ありがとうございます。」
ふん、元気にふるまうだなんてありえない。
というか、皇帝の妻だなんて、気軽に外出できないじゃない。
見損なったわ、口だけ男。
今はまだましよ。
対面が終わると、お忍びで街に出かけた。
おしゃれな物がたくさんあるし、最近話題のタピオカミルクティーもおいしそう。
「うわっ。」
誰かにぶつかった。
「ごめんなさい。怪我はありませんか?」
「大丈夫よ。」
大丈夫じゃなかった。
彼の目を見た瞬間、顔が熱くなるのを感じたからだ。
これが、彼と私の出会いだったのだ。