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1-1始まり

 

「・・・・」


 彼女らは少し困惑していた、たった今目の前でありえない戦闘能力を見せた拳悟の戦闘時とのギャップに。

 どこか不安そうな、頼りない様子で自身がなさそうに言葉を発する。

 極め付けはこちらと全く目を合わせようとしない、少し顔を下に向けている。


「あ、いえ、大丈夫です。」


 先ほどの光景とのギャップに困惑しつつも少女は言葉を出した。


「そうですか、そ、それは、よか....」


 拳悟は少し顔を上げたが再び顔を下げてしまった。


(やばい、目があった、)


 そんな拳悟の内心は2人には届かず少女は彼の顔を覗き込む。


「あの、失礼ですが、あなたは一体どういう人なのですか?」


顔を覗き込まれながらそう言われた。

拳悟は再び顔をそらしながら返した。


「そ、それが、その、えと、なんて、言ったら、」


「失礼、お嬢様、気になるのもわかりますがここはまだ危険です。街に戻りましょう。」


 拳悟が上手く言葉を発せないでいた時、もう1人の女性が口を挟んだ。

 痺れを切らしただけだが、拳悟にとっては助け舟だった。


(たすかった〜、けど街が近くにあるのか、どうしよう、案内を頼まないと、よし!)


「あ、え、えと」

「すみませんがあなたにも私達と一緒に来ていただきたいのですが、お礼がまだですし、」

「あ、い、いえ、喜んで、じゃなくて、その自分も街に案内していただきたいので、よろしくお願いします。」

「いえ、それと、命を救ってもらっておいて失礼だとは思うのですが、道中の護衛をお願いしたいのですが、よろしいですか?」

「も、もちろんです。」

「本当に、ありがとうございます、このお礼は必ず、」

「いえ、そんな気にしないでください、アハハハ、」








(しかし、珍しい髪色だな、服装もあんまり見かけないものだ。)


 歩きながら拳悟はそう思った。背が低めの可愛らしい少女は桃色のボブカットで黒いマントの様なもので首から下を覆っている、背が高めの美人な女性は紺色のロングヘアーでメイド服の様なものを着ている。

 珍しい上にとても美しいので見入っていた拳悟だったが不意に背の高い女性がこちらを向いたので、すぐに目線をそらした。



「失礼、あなた様のお名前を伺ってもよろしいですか?」

 振り返った女性は拳悟に問いかけた。


「あ、そ、そう言えば、すみません名乗りもせずに、か、神室拳悟(カムロ ケンゴ)と言います。」

「なるほどケンゴ様ですか、奇妙な苗字ですね、」

「あ、いえ、拳悟は名前で、神室が苗字です。」

「そうでしか、わかりました。私はレナと申します、苗字はありません、改めてよろしくお願いします。」

「よ、よろしくお願いします。」


 レナさんという紺色の髪の女性と自己紹介を済ませた後、桃色の髪の少女が言った。


「レナ、ちょっと硬すぎますよ、ケンゴ様が困っていらっしゃるじゃないですか、ケンゴ様、私はイリスと申します。改めて、危ないところを助けていただきありがとうございます。」

「い、いや、困った時はお互い様ですから、か、気にしないでください。」


 なんとか会話はできるものの彼は依然として少し顔を下げて目を合わせようとしない、そんなところをイリスとレナは不思議に思いながらも会話をしながら歩き続けた。


 そしてレナからある質問が飛び出した。


「すみません、ケンゴ様はなぜあの様なところにいたのですか?」

「あ、え、えと、それは、あの、」

「見たところ装備もつけていませんでしたから、その珍しい服が装備か何かなのですか?」

「ちょっとレナ、質問しすぎです!」

「い、いえ、大丈夫ですから、」

 彼は顔を下げたままイリスにそういうと、一拍置いてこう答えた。


「自分でもよくわからないんです、き、気がついたら、あの場所にいたんです。信じてもらえないかもしれないですけど、たしかに昨日は自分のベッドの上にいたはずなのに。」


 そう答えた彼はさっきよりも更に不安そうだった。


「そうだったのですか、安心してください、私たちはここであなたに救われました。ですからケンゴ様が不安なら迷わず私たちを頼ってください!そうですよねレナ!」

「もちろんです、お嬢様、ケンゴ様、あなたの言葉を借りますが、困った時はお互い様です。」

 2人はケンゴを励ます様にそう言った。


「あ、ありがとうございます。」


 拳悟は2人の優しさに嬉しく思いそう言った、しかし顔を下げたままなので2人には全く分からなかった。





「見えてきました!ケンゴさん、あそこが私たちの暮らす町、ノルンです!」


 それから数時間ほど歩き、ようやく町が見えてきた。


 イリスにそう言われて、拳悟は顔を上げて町を見た。



 そして彼の頭は真っ白になった。


 彼の目に飛び込んだのは町をすっぽりと覆うほどの高い、白いレンガでできた壁、そしてその中にある昔のヨーロッパの様な街並み。


 現代世界にこんなところがあるのだろうか?


 ひょっとするとここは....


 そこまで考えて、拳悟は思考を振り切った。

(そんな馬鹿げた話があるわけないじゃないか....)


 拳悟は2人について町の入り口に行った。









「・・・・では、出来るだけ早めに身分証を作ってください」


 そう門番の兵士に言われた拳悟はイリスとレナに続いて町に入った。

 本来、拳悟は全く素性のわからない者であり必ずトラブルが起こるはずであったが2人の必死の説得によりなんとかトラブルは起きなかった。その際わかったことなのだがどうやらイリスとレナは普通の身分ではないらしく、拳悟は門番の態度でわかった。









 町の中は中世ヨーロッパの様な街並みで門の前の通りは道幅が非常に広かった。そして道の両脇には野菜や肉などを売っている屋台が並んでいた。


「ケンゴ様、身分証の作り方はわかりますか?」

 街道を歩きながらイリスが訪ねてきた。

「いや、すいません、わからないです。」

 拳悟は申し訳なさそうにしながら言った。

「いいんです!いいんです!わからないのは仕方ないですよ!」

「身分証を作るのはそこまで難しいことでもありませんよ、中にはとても簡単な方法もありますから、ご安心ください。」

「そうなんですか、よかったです、」


 2人が必死になだめたことにより拳悟は少し安堵した。


 そんな2人に対し拳悟は言った。


「それでは、お二人ともご案内ありがとうございました。このお礼はいつか必ずします。」



 ****


「え、えっとどういうことですか?」

「ケンゴ様、一体何をおっしゃっているのですか?」

 2人は動揺した、今拳悟が放った言葉によって


「いや、ご案内ありが、」

「ケンゴ様は私達と別れて行くつもりなのですか?」

 驚いたイリスが少し強気でそう言った。


「え、えっと、あの、これ以上迷惑は、」

「失礼ですが、ここから一人でどうなさるおつもりですか?」

 続いてレナも拳悟に問う。


「んと、最悪、野宿でも、」

「それでは案内した意味がありません!」

「イリス様の言う通りでございます。野宿ならこの街に入らなくてもできます。」

「それに命の恩人をそんな扱いはしたくありません。」

 イリスとレナの剣幕に拳悟は押されてしまう。

「でも、どうすれば?」

 2人の言葉を聞いて顔を下に下げながら拳悟は言った。

 それを聞いたイリスは強く告げた。


「私達の家に来てください!」



"神室流奥義 大砲"

左手を前に出し右手を腰に据えた状態から右足の踏み込みとともに繰り出す右の縦拳。扱いやすく、威力もある。

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