#9
「そこ!止まるな」
「ほ~ら、お前ら歩け~」
ハヤテ、ジャガーは盗賊機からパイロットを引きずり出し、手錠をしてジープに乗せる為に誘導する。
他のメンバーも大破し倒れるコバルトのコックピットから、パイロットを引きずり出す。
中には抵抗し銃を発砲する者もいたが、ベンベンやエムジーに簡単に取り押さえられた。
カガミも自分の戦った盗賊機に飛び乗り、コックピット横のパネルを開き携帯端末を繋げハッキングする。
“プシュッ”と音と共に、コックピットのハッチが開くと
「うをぉぉぉ!!!」と怒鳴り声を上げながら、ベルナールはサバイバルナイフをカガミ目掛けて突き出す。
「あぶね!」と声に出したものの、カガミは直ぐに避けながらベルナールの手首にチョップをする。
すると「イテッ!」と声と同時にベルナールの手から、サバイバルナイフが落ちる。
今ので態勢を崩したベルナールの右腕を掴み、そのまま背中側に引っ張り上げ動きを封じる。
「イテテテテ!!!」と痛がるベルナールに
「殺す訳じゃないんだ!暴れるなよ!!」とキレ気味に言うカガミ。
「噓付け!お前らがいままでしてきたこと、無かったなんて言わせないぞ!!!」
「はぁ⁉なんの事だよ?」
「とぼけるな!ブムナ村の事だ!!コルレット所属のネクティアも同罪だ!!!」
「全く訳が分からない。そもそも俺達はネクティアとは、関係ないし」
「はぁ?アンタ等ネクティアの兵士じゃないのか?」
「さっきから言ってるだろ。俺等はアレだ…傭兵だ」
「そうか、だったら……」
ベルナールは一瞬カガミの拘束が弛むと抜け出す。
カガミも一瞬焦ったがベンベンの特訓のお陰でまた直ぐにでも、取り押さえる自身はあった。そもそもNPC相手に余程の事が無ければ、おくれを取るプレイヤーはいない。
ベルナールはカガミに向き合うと、こちらの予想している行動とはかけ離れた事をする。
カガミの前で急に土下座をしだしたからだ。
「おまっ、なんだよ…急に!?」
「頼む!捕まった仲間の事は勘弁してくれ。代わりに俺の首でも何でもくれてやるから」
「待て待て、話がさっぱり分からん。そもそも捕虜を捕まえて処刑するなんて話聞いた事がないぞ」
アーマード・ブレインでの捕虜の扱いは手錠を掛けた段階で捕虜になり、その後に暴行または殺害した場合、個人と所属コミュニティーにペナルティーが発生する。
度合いによるが、多額の罰金が発生するのが普通である。
アーマード・ブレインでは、弾薬・機体整備・医療アイテム・基地の維持費などに、かなりの金が掛かる。
その為か無暗に捕虜を暴行したり殺害するプレイヤーは少ない。
そもそも殺しが目的のプレイヤーは、相手が降伏しても容赦なく殺すのが普通だ。
兎に角リアルを追及するアーマード・ブレインでは金が掛かるせいか、ソロプレイでアーマード・ブレインをやる人間が少ない理由の一つだ。
ましてや捕まえた捕虜を処刑するなどアーマード・ブレインには無い設定であり、真逆の行為そのものだ。
いくら最近始めたばかりとは言え、この程度の事はカガミも知っている事だ。
「アンタ等ここらの人間じゃないな、普通王族に歯向かえば容赦無く殺される。そんで俺等の村は、その王族によって……コルレットの連中に滅ぼされたんだ」
「なぁ、そのさっきから言ってるコルレットって、ネクティアとどんな……」
カガミがベルナールにコルレットについて聞こうとすると、アキが来て
「カガミ君!そろそろ城塞に戻るよ。……どうしたんだい?」
アキはベルナールがカガミに土下座してる様子を見て
「カガミ君もウチのコミュニティーに、馴染んちまったなぁ~。……ゲスイぜ!」
アキは一瞬悲しむ感じで言っていたが、直ぐにニコやかな顔で親指を立てた。
「いや、違いますから!」と全力で否定する。
カガミはベルナールを立たせて、コバルトのからベルナールを連れて降りた。
「それにしても驚いた」とアキが言う。
カガミが「なにがです?」と聞くと、アキは捕まえた盗賊達の方を見ながら
「まさか敵が10代半ばの少年達とは……ね」
「あぁ、確かにそうですね。俺が言うのもなんですけど、機体から出てきた半分は12、3歳の子供が殆どらしいですから」
捕まえた盗賊の殆んどが幼さが抜けない子供で、リーダー格のベルナール含めた数人は20歳を迎えるか怪しいくらいの年齢だ。
「戦った後に言うべき言葉じゃないけど、正直あまり気持ちのいい戦いじゃなかったね」
「そう…ですね」
ジープまで行くと既に盗賊全員が捕まっており、荷台に乗せられていた。
「そいつが最後?」
ムックがアキとカガミに尋ねる。
「ジャガーさんとリュウちゃんは?」アキがムックに尋ね返す。
「先にネクティアの方に戻ったよ。さすがにもう満員だからね」
アキとムックが話していると、トシ・ベンベン・ダイ・ハルが別方向から戻ってくる。
「ちょっといいかい」とトシがアキとムックに尋ねる。
「なにか分かった?」
アキがトシに聞き返すと、トシはハルの方に向く。
するとハルは
「機体のデータ抜き出したら、こんな情報が出てきた」
ハルの携帯端末画面を見ると、数字が羅列されていた。
「これは?」
「多分合流場所の座標だな。そうだろ?」とハルは捕まえた盗賊達に聞く。
盗賊達は顔をそらして誤魔化したが、それが逆に答えになった。
トシは「当たりだな」と口にし、携帯端末を操作しだす。
「これからどうするんですか?」
カガミがアキに聞こうとした時だ
【その捕虜はこちらで預かる】
ネクティア方面から数機のコバルトが歩いて来た。
その先頭を歩いているのはスカル・ルージュ隊の指揮官、メグミ中隊長専用コバルトだ。
「おいおい、後から来て横から掠め取るなよ!」
「ダイ君はくれてやるから、捕虜は置いていけ!」
「コラ!仲間を売るんじゃねぇー!!」
ハルとハヤテがメグミの機体に向かって叫び、ダイが二人にキレる。
その横でカガミはアキとムックに近づき、小声で
「アキさん、ムックさん」
「なんだい?」「なに?」と返す。
「あの盗賊の連中、ネクティアに引き渡さないこと出来ますか」
「急にどうした?そりゃ出来なくないけど…」
「なにか理由がありそうだけど、向こうは意地でも連れて行きそうな雰囲気だね」
ムックがメグミ達の方向にむくと、ハヤテ・ダイ・ハルがメグミ達と揉めていた。
【いい加減にしろ!早く引き渡せ!!】
コバルトのビームガンが向けられているにも関わらず、3人は気にした様子もなく
「だからコレならやるって言ってるだろ」
「人をコレ呼ばわりするな!」
「仕方がない、俺がお姉ちゃん達の相手をしてやるか」
「ほれ見ろ!ダイ君が行かないから、ハルさんが暴走したじゃないか」
「人のせいにしないで!」「してねぇよ!」
【貴様ら!】
メグミの怒りが頂点に達した頃に、アキとムックがメグミのコバルトの前に出る。
その様子を見てメグミは
【ようやくこちらに引き渡す気になったか】と言葉にしたが、アキの回答は真逆のものだった。
「ごめんよ~、メグちゃん。そっちにこの子等を引き渡す気は無いんだ。あきらめて」
「まっ、アキさんがそう決めたから、彼等は渡せんね」
【なっ!ふざけるな!!それと変な名前で呼ぶな!!!】
他のカイヤナイトメンバーも、「いいじゃんメグちゃん!可愛いぜ」「いや、メグちゃんって感じの歳でもなだろ」「諦めろよ、メグちゃん」と煽る。
するとメグミのコバルトの銃口はアキ達に切り替わる。
カガミは身構えたが、アキとムックは気にした様子もなく、むしろ一歩に出る。
【引き渡す気が無いのなら、力尽くで連れて行くまでだ!】
「力尽くがいいならそれでもいいけど、本当にそれで良いのかい?」
アキはニヤリと笑う。
メグミが何故アキが余裕でいるのか考えていると、不意に機体が何者かに小突かられる。
【動くなよメグ子】とコバルトに乗ったトシが、メグミのコバルトのコックピット部分にビームガンを向けている。
【た、隊長】とメグミの部下がメグミを呼び、そちらを見ると
「やっほう~!」と声を上げ、スカル・ルージュ隊のコバルトのコックピットを開き、中のパイロットに銃口を向けているベンベンと、更に別の機体に同じようにしているエムジーがいた。
【いつのまに】と言っている間に、ハヤテ・ダイ・ハルもコバルトに乗り込み、メグミ達スカル・ルージュ隊に銃口を向ける。
「どうする、続けるかい?こっちは続けてもいいけど」
「俺達は面倒臭いよ~」
アキとムックはニヤリと笑う。
カガミは流石だと思いつつも、同じように自分も動けない事に悔しく感じていた。
【双方待たれよ!】
ネクティア方面からゴードン専用コバルトが、走ってくる。
その横には、ジャガーとリュウが乗ったジープもいた。
【メグミ中隊長、この件は彼等に任せると言ったはずだ】
【戦闘については、了承している。だが、捕虜の件は別だ!姫様に楯突いたこと自体が既に重罪!!それにこいつらは明らかにDキャンパーだ、殺されたとしても文句は言えまい!!!】
【捕虜の件も姫様から許可を得ている。全てカイヤナイトに任せるとの事だ。だから双方武器を下ろせ!】
しばしの間お互いに睨み合いが続いたが、メグミが”フン”と憤慨しつつもスカル・ルージュ隊がその場を去る事で、この件は落ち着いた。
その後捕虜を全員車両に乗せて、ゴードンが管轄する城塞南側にある南門基地からネクティアに入る事になった。
その道中カガミはアキ、ムックが乗るジープに乗り、盗賊のリーダー格であるベルナールに先程の話をさせた。
運転しているムックは、ジープの無線機をいじりメンバーと会話出来るように調整する。
その様子を見ながらアキは
「それは本当の話かい?今迄そんな話聞いた事がないけど」と言い
ムックは未だ片手で操作しながら
「色々キナ臭くなってきたね」とぼやく。
追従して歩くコバルトから
【それと気になったんだが、メグ子が言ってた”Dキャンパー”ってのはなんだ?ダイさんのキャンプの略か?】
【誰が俺のキャンプですか!肉なんて焼いてる覚えは無いですよ!!】
【ダイ君の奢りで、ステーキ肉食べ放題の略でしょ】
【貧乏人にたかるな!】
ダイがトシとハヤテにからかわれていると、先導するために一番前をコバルトで歩くゴードンが説明しだす。
【Dキャンパーとは、国家間戦争やキメラの襲撃に遭い、村や街を失い放浪している者達のことだ。そしてそこで生まれ育った者の大半に親は居なくて、名前も仲間から付けられるらしい】
「要は難民みたいなものか」
【難民か……少々違うな。Dキャンパーになった者達の殆どが、盗賊の様に物取りになるからだ。しかも集団でな。よくて傭兵紛いの集団になるのだが、お世辞にもガラが良いとは言えんし、信用して背中を任せるのは難しい】
「だからあの中隊長は、傭兵に良い印象を持っていなかったのか」
カガミが荷台の方でそう呟くと、ゴードンにも聞こえていたのか
【彼女の場合は、少々あってな……。8年前くらい前か、家族全員をDキャンパーに殺されているのだよ。妹と弟が救出されたものの、外傷が酷く救出3日後には亡くなったそうだ】
その話を聞いてアキやムックは成る程と言った感じだったが、ハルは不意に持った疑問を口にする。
【でもそれだとよ、アンタ俺等をよく信用する気になったな】
その言葉を聞いてトシも
【確かに。だいぶ矛盾してるよな】と怪しむ。
だがゴードンは
【それは簡単な話だ。貴殿等がDキャンパーでは無いと確信しているからだ】
「その根拠は?」とムックが尋ねると
【乗っていた機体だ】
「機体ですか?」
カガミが疑問を浮かべていると、ハヤテとダイが
【成る程な】【確かに見分けるには、合理的ですね】
「えっ?どうしてですか」
カガミの疑問に答えたのは、ハヤテだった
【さっきの話からして、Dキャンパー達には金がない。そんな連中が俺等の様な機体を持ってるのは考えにくいし】
「でも盗んだって線もありますよね?」
【だとしたら余計逆に、使うよりも売る方を優先するだろ。維持費が掛かるのは、武装を見れば分かるだろうしね】
「なるほど、そうなんですか?」とカガミがジープの無線機に向かって言うと、それを聞いたゴードンは、ハッハハハと笑った後に
【やはり私の目に狂いは無かったな、その通りだ。私の予想では貴殿等カイヤナイトは、大陸から流れて来た傭兵部隊だと思っているのだが、どうかな?アキ団長殿】
ニコやかに尋ねられたアキは苦笑いで返すのが精一杯だった。
城塞南側にある南門基地に到着し、各々借りた機体やジープを近くで待機していた兵士に返却している時だった。
「ウヲォォォー!ハヤテ先生、ジャガーさん!!ヤベーヨ!!!」とダイが、とある格納庫前で発狂していた。
ハヤテがダイの居る方向に歩きながら格納庫の中を見る
「ウッセェーな!なにを興奮してやが…ルゥゥゥー!!!」
ジャガーもカガミを連れて近づく
「二人共なにを叫んで…オォォォ!!!」とリアクションをとる。
カガミが気になり、格納庫を見るとそこには
「ゴミ溜め…ですか?!」
格納庫の中には大破した機体や、デカい大砲の残骸、アーマード・ブレインらしき錆が目立つジェネレーターが置かれていた。
「ここが夢の国ジパングですか!!!」と言いながら格納庫入り、近くのスクラップを手に取るダイ。
「おい、ダイ君!これってレブナント光学砲じゃないか!!!」と興奮しながらダイを呼ぶハヤテ。
ダイが「マジですか!」と叫ぶ横で
「これもまだ使える!これは修理すれば使える!!これは改造用に使える!!!」と選別しだすジャガー。
カガミは恐る恐る3人に
「これって……ゴミ…なんじゃ」と言うと
『ゴミなんかじゃない!!!』と興奮状態・怒り半分に、カガミに詰め寄り叫ぶ。
カガミは咄嗟に「ご、ごめんなさい!!!」と叫ぶように引き下がる。
近くに居た兵士も「ここの格納庫はスクラップの一時保管庫に過ぎませんぜ、旦那方」と奇妙な目で見ていた。
そこにハルとトシ、リュウが来て
「ま~た、ゴミ漁りをしてるよ。この3人は」
「おい、浮浪者ども!一応仲間だと思われてるんだ!!今すぐ止めろ!!!」
「落ち着け、ダイさん!」
3人を格納庫から引きずりながら、ゴードンに案内された基地の会議室に向かう。
その道中でも、アキに『報酬はあの格納庫の中の物全部にしましょう!』と叫ぶ3人の事は多分当分忘れないだろうと思うカガミであった。
会議室に通され適当に椅子に座るカイヤナイトメンバー。
アーリィの屋敷と同じ構造の会議室だ。
暫くしてハルとダイが
「腹減った…早くリアルに帰りてぇ~」
「止めてハルさん!いい感じに忘れてたのに」
カガミもそれを聞いて
「確かに思い出したらお腹が減りましたね」
するとゴードンが、部下を連れて部屋に入ってきた。
「すまんな。恩返しどころか、また助けてもらうとは」
アキは
「いいっていいって、困った時は何とやらさ」と片手を振りながら返す。
ゴードンの後ろに待機していた部下が、食事を各々の前にまで運んできてくれた。
「私はまた姫様の所に一度戻る。それまでは、食事でも取りながら待っていてくれ」
そう言い残し、部下と共に部屋を後にした。
テーブルの上には、ゴードンの部下が持ってきたミートスパゲティーが置かれていた。
「クソォ~、これが本当に食えればなぁ~」とハルがテーブルに伏せた状態で嘆く。
ハルが言っているのは、ここはあくまでアーマード・ブレインと言うゲームの中であり、飲食をする動作は出来ても、本当に食事をして腹を満たす事は出来ないと言いたいのだ。
だが二人だけ違う反応をするメンバーがいた。
それはリュウとベンベンだった。
リュウはスパゲティーの皿を取り、匂いを嗅ぎ
「これさ、匂いがあるよな」
ベンベンは皿の底を触り
「温かくね?これ」と不思議がる。
毎度の説明になるが、アーマード・ブレインはリアルを求めて作られたゲームである。
感触のような物を感じる事は出来ても、温度を感じる事は出来ない。
まして匂いは、専用のヘッドセットパーツを買わなくてはいけない。
そしてアーマード・ブレインにはそれが対応されておらず、カイヤナイトメンバーもそのヘッドセットパーツを付けているメンバーは居ない。
つまり……
「ありえないだろ。勘違いじゃないのか」とハヤテは言ったが、それを無視するようにリュウとベンベンは、テーブルに置かれたフォークを使いスパゲティーを口に運ぶ。
すると
『う、美味い!』
リュウとベンベンはシンクロする様にして感動する。
その場に居た全員が『そんな馬鹿な』と、フォークを取り食べ始める。
全員が口の中にスパゲティーを入れると
『これは!食えるぞ!!!』と反応し
ハルとダイに関しては、無言で頬張り直ぐに皿の上が空になる。
そして全員の食事が終わると、認めたくない現実と向き合う時間が訪れる。
最初に喋り出したのは、リュウだった。
「そう言えばさ、ココが襲われた時に飲んだ紅茶も、飲み物を飲んでる感じがあったんだよね。すぐに出撃しなきゃいけない状態だったから、気にしてなかったけど」
「これってやっぱり……そう言うことなんですかね…」エムジーが呟くように言い
「いやいや、アプデでそうなった可能性も……ないか」とダイが言葉にする。
暫くの沈黙した後にトシが
「俺等が通ってき来たあの穴に戻ってみないか?」
「あの穴を通って戻るって事かい?」
ジャガーがそう言うと、トシは頷き
「戻れる可能性が高い訳じゃないけど、試す価値は有るだろ」
その言葉を聞いてハヤテは携帯端末を取り出し
「場所はココだな」と言った後に全員の携帯端末に、場所が示されたマップが送られる。
「意外と近いな」
「俺等の機体で全速力で走れば、1時間ちょいってところか」
ハルとベンベンはルートと着くまでの時間と距離を計算していた。
だがカガミは少し気になることを口にした
「でもミッション放棄とかの扱いになりませんか?」
その言葉を聞いて全員が『あぁ~』と口を揃える。
そこでアキが「よし!」と声を出し
「周辺の偵察に出るって言おう」
ムックは疑問顔で「でもそれバレんかね」と携帯端末から顔を上げ、アキの方に向く。
「報酬さえ受け取らなければ大丈夫でしょ。それにミッション放棄扱いになったらなったで、その時はまた皆で別の方法を探せばいいさ」
アキの言葉を聞いてトシ・ムック・ダイ・ハヤテは
「全く行き当たりばったりだな」
「まっ、いつもの事でしょ」
「ヤバくなったら、そん時に適当に考えましょう」
「俺等らしいっちゃらしいけどね」
と言いつつも、決して不満からきているものでは無かった。
他のメンバー呆れ顔をしつつも、口元がフッと笑っていた。
それから暫くして、アキはトシを連れてゴードンの部下に周辺の警備に出ると説明をしに行った。
最初こそゴードンの部下からダメだと言われたが、そこはトシの交渉術でどうにか説得し、常に居場所の報告付きで許可が降りた。
すぐに全員で7番格納庫まで行き、各自の機体に乗り込む。
そしてネクティアの西門前まで行き、そこで警備兵に開門してもらう。
先導役として先頭をハルが歩きそれに全員が続く。
ネクティアの門が閉まるのを確認して、全機全速力で走りだした。
※
ネクティアから出発して1時間近くが過ぎていた。
道中ポーン級・ルーク級のキメラに出くわしたものの、止まること無くムックの月光が突進で踏み潰す事でだいたいのキメラは片付いた。
たまに後ろからキメラが追って来ることもあったが、機体の機動力と小回りが良いカガミとエムジーのイヅナとアルダートが遊撃する事で時間を無駄にすることなく進軍を行なえた。
【そろそろなんだがな】
ハルはモニター画面を見ながら操縦をしていた。
【夜と昼間じゃ風景変わりますからね】と後ろを走るダイが言う。
【風景もそうなんだけど…クソ、通って来た穴に座標設定されてる訳じゃなくて、俺達がお姫さん助けた戦闘場所の座標になってるから、ここから先は完全目視での探索だな】
それを聞いてリュウは【マジかよ】と嘆き
【確か俺等さ、崖から滑り落ちて来なかった】とベンベンは隣のハヤテに聞く。
【この上を登るのか】ハヤテは疲れたように言い、向いている方向に崖がそびえ立っていた。
【俺達ここを滑り降りてきたんですよね】とカガミも驚きながら、崖を見上げる。
【今から逆走するんだぜ、カガミン】隣にトシの機体が近づき、イヅナの右肩にヘルハンターの左手がのる。
【逆走って、まさかここを本当に駆け上がるんですか!?】
【出来れば面白いんだがな……やってもいいぞ】
【いや…やりませんよ】
カガミとトシが話ていると
【ここから登れそうだよ】と、アキが全員に知らせてそこに集まる。
そこは崖崩れになっており、アーマード・ブレインで登るには丁度いい段差になっていた。
そこを全員で登る。
【登りやすいって言っても、結構な勾配だな】
【ですね。機体にダメージとか入らないといいんですけど】とダイとカガミが話していると、二人の機体が何かに揺さぶられ、コックピット内の二人も大きく揺さぶられる。
【行け、カガミン!ダイ君より先に登り切れ】
【ほら、ダイ君サボるな。俺に楽をさせろ】
気付けばベンベンとハヤテの秋水・リベラルクリフトが、カガミとダイの2機の背中に跨っていた。
【ちょっ!ベンベンさん!?降りて下さいよ】
【えっ?カガミンって、俺のお馬さんじゃないの!?】
【違いますよ!なにを言ってるんですか!!】
その隣では
【ちょっと!そんなポンコツ機で俺の富嶽の上に乗らないで下さいよ!!富嶽がリベラルクリフトと同じ中古機になっちゃうでしょが!!!】
【おい!待て貴様、誰が中古機だ!!】
【すいません。欠陥機の間違いでした】
【言っておくぞ!同型機だからな!!】
そのやり取りを見ていたエムジーの乗るアルダートは、横を通りながら
【遊んでないで早く登って下さいよ、置いていきますよ】と言う。
すると4人は、悪戯をしていた所を教師に見つかり怒られたかのような反応で
『あっ、はい。サ~セ~ン』と謝り普通に登頂する。
登りきるとそこには森が暫く続き、更に奥の方に岩山がある。
【見つけた!あそこだ!!】とリュウが言った岩山の場所に、ブラックホールの様な歪んだ空間の穴があった。
【んじゃ、とっとと入って帰りますか】とハルのマークスマインが一歩前に踏み出した時だ。
全員のコックピット内に”ピー、ピー”と警告音が鳴り響く。
【待った!何か森にいる!!!】ジャガーが警告したのと同時に、マークスマイン目掛けてビームが飛んでくる。
それをアキの號龍がシールドで防ぐ。
【大丈夫か!ハル君】
【大丈夫、でも誰だチクショウ!】
全員が警戒態勢になり背中合わせで、森の中全体に目を向ける。
その間トシがレーダーの範囲と感度を上げ、索敵をする。
【敵反応……キメラじゃない…アーマード・ブレイン反応でもない!?】
トシの言葉に全員が困惑する。
【キメラでもアーマード・ブレインでもない?故障じゃないのかトシさん】
ハヤテの質問に答える余裕も無いように、トシは
【反応からして小型、数30……いや40…もっと多い】
アキ・ムック・リュウの3人が先頭に立ち、持っている武器を構える。
【来るぞ!!!】とトシが言ったのと同時に、木や草叢の中から7メートル程の機体が出てきた。
本体と思われる四角い形をしたボディーに、そこから6本の尖った足が横から出ており、
そして四角いボディーの中央部分の上に、卵状の頭部兼武装と思われる砲塔が付いている。
砲塔の横には、照準器なのか赤く光るカメラが二つ付いていた。
【なんだありゃ!?見た事ないぞ】
リュウが困惑している横でアキは
【ハヤテさん・ダイ君・ジャガーさん】と、カイヤナイトのメカニック担当3人に尋ねたが、帰ってきた言葉は
【知らない機体です。ダイ君は?】
【俺もないですね。ネットなんかでもあんな機体紹介されたこと無いですよ】
【そもそもアーマード・ブレインなのかな?あんな小型機なんて、アーマードブレインには無かった設定機だよ】
そんな会話をしていると、正面で隊列をなしていた6足歩行の機体が一斉に砲塔からビームを撃ち襲ってきた。
【うをぉぉぉ、撃ってきた~!!!】とアキは言いながらシールドでビームを防ぎながら、腰にマウントされているアサルトライフルを取り出し撃ち返す。
【ハヤテさん!】【了解!】とハルは敵の位置情報をハヤテのリベラルクリフトに送る。
位置情報を受け取ると、リベラルクリフトのバックパックのミサイルポッドが上空目掛けて、小型ミサイルを大量に発射し敵に命中する。
殆どの機体は爆散しつつも、足を数本被害にあった程度の機体は、前進しハヤテの機体に飛びつく。
【うわぁ、ウゼェ!】と言いながらライトマシンガンで撃ち倒そうとすると、更にそのライトマシンガンに別の6足歩行の機体が飛びつき、ライトマシンガンを地面に落とす。
【クソ!こいつら!!】すぐに腰に装備されている、凡用ソードを取り出し纏わりついた機体を切り捨てる。
他のメンバーを見ると、既に同じ様な状況に陥っていた。
機体の性能的には決して強くないものの、小型で狙いにくい上に物量で押し寄せて襲ってくるので、撃破するのが難しい。
そしてハヤテは6足歩行の動きを見て、こいつらの目的を理解する。
【ヤバいあいつ等を止めないと!!!】
それは突撃してくる機体とは別に反転して歪んだ空間の穴に向かい、四角いボディーの前面パネルが開き、そこから溶接アームのような物が出てきて空間の穴を縫い合わせる様に空間を縮めさせているのだ。
それを聞いてムックが【俺が行く!】と言ったが、ビームを撃ちながら4機程に飛びつかれ、真っ直ぐ突進が出来ず近くの木にぶつかる。
そこに更に別の機体が、月光に群がる。
なんとかランスを振り回し跳ね飛ばすが、目標の場所まで行けそうな雰囲気はない。
それを見ていたカガミが、【俺達が行きます!援護をお願いしますジャガーさん】
【カガミ君!?君じゃまだ無理だ!】
【この森の中じゃ、小回りのきく俺のイヅナの方が有利ですよ!】
【いや、それはそうなんだが…】
【俺がフォローしますから大丈夫ですよ】
ダブルブレードで敵を切り裂きながら近づいて来たのは、エムジーのアルダートだ。
他にも離れた場所からアキとベンベンが
【過保護にするのもいいけど、信じて送り出すのも大事だと思うんだ】
【それに今はなにを優先するべきか考えないと】
二人の意見を聞いてジャガーは気持ちを切り替えるように
【ハヤテさん!正面の道を作るよ!!】とハヤテに伝え
【準備は出来てる!むしろ判断が遅いくらいだよ】
リベラルクリフトのミサイルポッドが正面を向き、一斉に発射される。
その爆風でよろけている所に、ジャガーのクロスドクターがバックパックに搭載されているガトリング砲とライトマシンガンの弾丸をばら撒くように撃ち続ける。
【今だ行って!】とジャガーが合図を出し、イヅナとアルダートはスラスターを全開にして前に進む。
【ハル君!トシさん!二人の直衛について】
アキが二人に指示を出し、ハルとトシは返事を返すことなくイヅナとアルダートの後ろに着いた。
6足歩行の機体が感づいたように、イヅナとアルダートに狙いを変える。
近づいてくる機体を、マークスマインとヘルハンターのサブマシンガンとスナイパーライフルが撃ち抜く。
ハルとトシが二人を援護していると、そちらにも何機かの機体が向かい邪魔をする。
カガミが振り向き【ハルさん、トシさん!】と叫ぶと
【いいから先に行け!】【絶対に止めろよ】
ハルとトシが敵を引き付けつつ、カガミとエムジーの周りの機体を迎撃する。
カガミが躊躇しているとエムジーが
【あの二人ならお前と違って大丈夫だ。行くぞ】と冷静に言われ、カガミもエムジーに続く。
かなりの数を撃破しているにも関わらず、一向に数が減る様子がない。
それどころか先に進めば進むほど、敵の量が増える。
既にカガミ達の前には、6足歩行の機体が防衛線が構築されていた。
【敵の展開の仕方が速い!どうするエムジー!?】
【ムックさん達に任せるぞ、カガミ少し下がれ!】
エムジーの指示に従い直ぐに下がると、ムック機の月光が6足歩行の機に纏わり付かれた状態で敵の防衛線に突っ込み、防衛線に穴を開ける。
【ダイ君!リュウさん!あと頼んだ!!】
【了解!任された!!】【俺が道の確保する!援護任せた】
ムックの合図で、ダイの富嶽がバックパックのキャノン砲で敵の陣形を崩し、リュウのデュークスは、イヅナとアルダートの道を確保する為に大型ハンマーを振り回す。
3人が敵を抑えている間に、カガミとエムジーは先に進みようやく空間が歪んだ穴の前に到達する。
【ヤバいな、穴が確実に縮んでる】
カガミが確認する限りでは、アーマードブレインが一機通れる位の穴に収縮している。
【とにかくこいつらを、片付けるぞ!】
エムジーのアルダートがダブルブレードを横腰に戻し、後ろ腰のサブマシンガンに持ち直した瞬間、機体の周りが暗くなり上を見上げる。
するとどこからか助走をつけて飛んできた20メートル程の大きさの、6足歩行機が落ちてきた。
エムジーはギリギリの所で避ける。
【大丈夫か!エムジー!!】
【大丈夫だ!コイツ親玉か!?】
空間の穴の前に立ちふさがる様に立つ、大型の6足歩行機。
そこに
【二人共止まるな!】【俺とアキさんで援護する!カガミンは、穴の奴らを倒せ!!】
アキの號龍がハルバードを回しながら勢いをつけて、大型6足歩行機の前足に攻撃をし、
ベンベンの秋水が右腕のバスターアームで、反対側からボディーを殴りつける。
大型6足歩行機はバランスを崩しつつも、直ぐさま態勢を立て直し頭部の砲塔がカガミ達目掛けて乱射しだす。
厄介なのはこの大型機だけ砲塔の弾倉が光学兵器ではなく、実弾兵器に変更されている点だ。
威力も相当な物に変更されており、当たればいくら性能が良いカガミ達の機体でも、ただでは済まない。
【カガミくん、君は穴の敵を頼む!ベンベンさんとエムジーくんは、俺とコイツを倒す事に集中しよう!!】
『了解!』
カガミが穴がある方に移動しようとすると、大型6足歩行機は前足で突き刺そうとしてくる。それを秋水のバスターアームが掴み防ぐ。
【オメェーの相手は、カガミンじゃねぇつうの!】
號龍は大型6足歩行機の上に乗り、頭部を攻撃するも傷を付ける程度でダメージがなかなか入らない。
流石の硬さに、アキは【コイツ硬すぎだろ!】とイラつく。
エムジーは大型6足歩行機の足元にアルダートを滑り込ませ、足の関節に両腕に格納されているナイフで突き刺す。
そこからオイルが飛び散り、動きが少し鈍くなる。
その隙を見てカガミは大型6足歩行機の横を通り過ぎ、空間の穴に群がる機体を試作高出力ビームライフルで撃ち抜く。
空間の歪みに群がる敵が多くて穴が見えないとカガミは最初思っていたが、敵を倒していくにつれて、それが間違いであると気付く。
【もう穴がこんなに小さくなってるのかよ!】
空間の穴の大きさは既に人が通れる位の物に収縮しており、それも小型6足歩行機も4機残っている状態だ。
作業ペースは先程よりも遅くなっているものの、それでもあと1、2分で完了する事が伺える。
カガミは試作高出力ビームライフルで狙いを付けて撃ったが倒せたのは2機だけでしかもオバーヒートを起こし、コックピットのモニター横に試作高出力ビームライフルの絵が表示されCool Downと表示される。
【こんな時に!】
カガミはイヅナのシールドと試作高出力ビームライフルを投げ捨て、バスターソードに持ち替える。
スラスターを全開に吹かしていまだに、穴を塞ぐ作業をしている敵機目掛けて突撃をする。
【間に合えー!!!】
突撃の勢いのまま1機目の敵を突き刺し破壊する。
右足で6足歩行機を踏み付けながら、バスターソードを引き抜く。
そして最後の1機をバスターソードを振りかぶり、真っ二つにした。
最後の機体は斬った場所が悪かったのか爆散し、煙で周りが暫く見えなくなる。
【カガミ君!穴はどうなった!?間に合ったかい!!!】
【どうなったカガミン!!!】
【おい!カガミ応答しろ!!】
アキ・ベンベン・エムジーは、必死にカガミに呼びかける。
【聞こえてますよ。穴は…ちょっと待って下さい。まだ煙が凄くて……】
全員がカガミの報告を、息を吞む様に待つ。
カガミはレーダーで自分の位置を確認しながら、空間の穴を探す。
そこに正面で何かが動いているのを確認する。
そこには全機倒したと思っていた小型6足歩行機が、空間の穴を塞ぐ作業をしておりちょうど作業が完了したところだった。
【クソ!コイツ!!!】
イヅナはバスターソードを構えるが…
カガミの声に反応した小型6足歩行機はイヅナの方に向くが、興味を失ったかのように森の中に消えていく。
煙が完全に消え去ると、全員がカガミの元に集まる。
【穴どうなった!】とトシが全員に代わり、アキに聞く。
アキはコックピット内で頭を掻きながら
【敵の方が俺達よりも一枚上手だった…って感じだね】
※
その後カガミ達一行カイヤナイトメンバーは、直ぐにネクティアのゴードン管轄の基地に戻った。
格納庫に機体を入れ、機体から降りると
「旦那方、いったい何と戦ってきたので?」と、近くに居た兵士達に聞かれる程に機体が傷が付いていた。
それに答えるメンバーはおらず、アキが右手を軽く上げただけだった。
会議室に戻り適当に席に着くと、誰も何も喋らずただ深く椅子に座るか、運ばれてきた紅茶かコーヒーを飲んでいるだけだった。
その空気に耐えかねたのか、カガミは立ち上がり
「すいませんでした!!!」と謝る。
だが全員『どうした!?』と言った返しをする。
「俺があの時6足歩行の機体を倒していれば、皆帰れたかもしれないのに」
それを聞いて全員が『あぁ、成る程』と納得し
「カガミ君そんな事を気にしていたのかい」
アキの言葉にカガミは
「そんな事って!俺が倒しきれなかったからで……」
そこにハルが
「俺のせいって?それはおこがましいだろう。これは皆で決めてやった事だぞ。それの責任は自分に有るなんざ、いつからカガミンが団長になったんだって話だ」
「別にそんなつもりは」
ムックも
「カガミ君が責任を感じる事はないよ。もしも責任を誰かに押し付けるなら、ダイさんが代わりに責任を負ってくれるよ」
「そうそう、全てダイ君のせいだ。皆に謝って!」とハヤテも口にする。
「はっ!?なに言っちゃってくれてるんですか!例え俺が悪くても部下の責任は、全部上司の責任でしょ?俺を基準に年上の人間は、俺達若者に慰謝料を払う義務があると思うんです。だから俺・リュウさん・エムジーさん・カガミ君にお金下さい」
ダイがそう言うと今度はトシが
「無理やり若い世代に入ろうとするなよ、カガミン達が迷惑そうだぞ」
その後も色々言い合いが始まったが、誰一人としてカガミを責める者はいなかった。
「まっ、誰も気にしてないから、お前も気にするなってことさ。皆が黙っていたのは、今回の戦闘の事と、次の行動をどうするか考えていたからだ」
隣に座るエムジーが、カガミにそう教える。
「責任を感じる位なら次の行動をどうするか考えるのが、ウチのやり方だからな」
「俺、カイヤナイトに入れて良かった」
カガミがそう言うと、対面に座っていたベンベンが
「どうしたカガミン!青春してて、ちょっと気持ち悪いぞ!!」
「気持ち悪いってなんですか!」
カガミが気持ちを切り替えると、その様子をアキは見ていたのか
「それじゃデブリーフィングを始めようか」と皆に言う。
ハヤテ・ジャガー・ダイが会議室のホワイトボードの前に立ち、今回の戦闘についての事を振り返る。
ホワイトボードには既に色々な物が書かれている。
ハヤテは
「まず最初に今回会敵した6足歩行機について。名称が無いと不便なんで、今後はタランチュラって呼ぶ方向で」
「名称が無いと不便って、やっぱり3人が知らない機体なのか?」
トシが疑問を投げかけると、ジャガーが
「さっき3人で話したけど、やっぱり俺達の記憶には無い機体だって結論に至りましたよ。そもそもどの位置付けの機体かも不明だから、対策もしようが無いって感じですね」
そこにダイが
「現状分かっているのは、タランチュラは無人機だって事ですね」
ダイの言葉に『無人機?!』とメンバー全員が驚く。
「皆の驚きも納得です。俺達も大破したタランチュラを調べるまでは、信じられませんでしたから」
ダイの説明にカガミは手を上げ
「あの、無人機ってそんなに驚くことなんですか?」
すると今度はジャガーが
「カガミ君は始めたばかりだから知らないようだから説明するとだね、アーマード・ブレインにおいて現状無人機は存在しないんだ。勿論ドローンの様な物の無人機は存在しているけどね。それ以外は基本的に有人機になるね」
「それってつまりアレって事か、やっぱりアーマード・ブレインには無い設定って事だよな」とハルが尋ねる。
ハヤテは少し考える様に
「俺達は今まで”ココ”が、あくまでも通常サーバーとは別の拡張されたサーバーって考えで動いていたけど、そこに俺達はもう一つの考えを付け加える必要があるかもしれない」
それを聞いたカガミとリュウが「それって…」「やっぱり…」と言うと、ハヤテは続けて
「飛躍した考えだとは思うけど…」
「異世界かぁ」とアキは口にして、椅子の背もたれに身を深く預ける。
そこにトシは
「それは流石に飛躍し過ぎだろ。確かに異常な事が続いているとは、俺も思うが」
「勿論俺もそれは分かってるよトシさん。あくまでも考えの選択に入れおくべき段階には、入っているだろう?」
ハヤテは近くに置いてあった紅茶を取り、一口飲む
「例えばこの紅茶も飲めばまるで本物の紅茶を飲んだ様に、胃の中に入っていくのを感じるし、さっきのスパゲティーも空腹を満たしてくれた。こればかりは、流石に説明がつかない訳だから」
「この件は判断するべき情報が少なすぎる。一旦この件は置いておこう」と、アキは話を中断させる。
そこに今度はダイが
「なら話を戻しますよ。6足歩行機の件ですが、無人機と言っても動きと言いますか、連携の仕方がプレイヤーのそれと全く同じ物なんですよね」
エムジーは納得するように「確かに、NPCが動いている感じには見えませんでしたね」
「その通り。カガミ君の報告だと、最後の機体を切り裂いたら爆散したと言っていたけど」
「はい、そうです。バスターソードでボディー部分を斬ったら、爆発してその煙で回りが見えなくなりました」とカガミはもう一度皆に説明する。
「でも、それだとおかしいんですよ」とダイが言うと、何人かは「なにが?」と説明を求めるように聞く。勿論カガミもだ。
「機体の大きさは約7メートル。爆発してもそんなに爆炎は広がらないし、何よりイヅナのバスターソードは実剣、熱量を持つ光学兵器でない限りジェネレーターを斬っても、あんなに爆発はしない」
「もったいぶるなよ。ようはどんな話だ?」とリュウが聞く。
「もしもイヅナに斬られたタランチュラが自爆したものなら、あの爆発は納得がいく」
「爆発して爆炎が広がった理由は分かった、でもそれで?どうせ他にもあるんだろ」
「自爆は別にそこまで驚く程の事じゃない。問題は自爆のタイミングだ」
「タイミングですか?」カガミの頭には疑問が消えては増える状況が続く
「もしも”完全な無人機”だとしたら、最初から自爆覚悟の特攻を仕掛ける方が得策だったはずなんだ。ましてや、お俺達みんなタランチュラに纏わりつかれていたんだから。なのに自爆せずに、足止めだけに専念していた。ベンベンさんなら、カガミ君が最後に倒したタランチュラの自爆で思い出す事あるんじゃないですか?」
急に話を振られたベンベンは「えっ!オレ~?」と驚く。
暫く考えた後に「あっ!」と手を叩いて
「タワーディフェンスの時の戦術か!」と思い出したよに口にし、他のメンバーも納得する。
カガミは理解している様子がなく
「えっ?なんですか、教えて下さいよ!?」とベンベンに聞く。
「たまにイベントでタワーディフェンスゲームが開催される事があってさ,
ディフェンス側とハンターの陣営にプレイヤーが別れて戦うんだけど、ハンター側の戦術で廃棄寸前の機体で相手に組み付いて自爆する戦法があんだわ。そんで爆発した時の煙を利用して、敵の横をすり抜けて目標を破壊する戦術なんだけど、金に余裕があるコミュニティーしかしないクソ戦術で……あれ?つまりダイ君、あのタランチュラは」
「ゲーム設定で動いている無人機ではなく、誰かの遠隔操作で動いていた可能性があります」
トシは考え込むように
「誰かは知らないが、俺達にあの穴通ってほしくない人間が居るって訳か」
ハヤテとジャガーも
「絶対とは言えないけどね、十分可能性はあると思ってる」
「俺達の予測が合っていれば、色々と繋がる話は多いしね」
「それと穴が塞がったら、あのデカいタランチュラもアキさん達に構う様子もなく撤退したのは、戦力の損失を避けたいって考える人間の動きとも取れるね」とムックが続けて言う。
「少なからず邪魔をした人間に、俺達は会う必要が出来た訳だ。なら方針の一つに今後タランチュラを操作していた人間を、探すことを項目に入れておこう」
アキはそう言うと、自分の携帯端末を操作し全員に送信する。
カガミは自分の携帯端末を見ると、KAIYANAITOと書かれた欄に”黒幕捜査 犯人はアイツだった件について”とふざけたタイトルが書かれていた。
「あの、アキさん」とカガミが尋ねると
「ちょっとお茶目なタイトル付けてみたのだが」と完全にアキが悪ふざけで答える。
そこにリュウが「サブタイトルに真犯人はダイさんって付けようぜ」と言い
「リュウ、暁に散るでもいいぞ」とダイは適当に答える。
それを聞いて更にリュウは「アリだな」と答え「なんでだよ」と呆れ気味にダイはなる。
そのやり取りを無視し、今度はジャガーが
「それから今後の方針なんだけど、現状俺達に出来る事は少ない。犯人探しは片手間にして、当初の目的通りネクティアの依頼をこなす事を前提に動くべきだと思う。
まだ”ココ”が、アーマード・ブレインの世界だと仮定としてね」
「それは勿論賛成だけど、肝心のゴードンのおっちゃんが居ないんじゃ話が進まないよ」
「それに報酬の件もどうするか考えないとね。今後の事を考えた上で」
アキとムックが比較的ジャガーの意見に賛成した事で、カイヤナイトとしての方針が決まりかけた所に会議室の扉が開き、ゴードンは険しい表情で
「待たせてすまない。緊急事態が発生してな、是非とも貴殿たちの力をお借りしたい」
ゴードンの表情からあまり良いニュースではないと悟り、メンバー全員に嫌な緊張感が広がった。