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#8

「こちら西門防衛班!盗賊の攻撃を受け、第3・第4警備隊壊滅状態。また、第3防衛部隊は戦力の40%を損失。現状の戦力での西門防衛は不可能!!至急応援を……」

ゴードンの機体から防衛班のオープン回線が聞こえ、爆発の音と同時に途切れた。

ゴードン機のコバルトが後ろに振り向き

【よく聞け!戻ったばかりで補給もままならない状態だが、我々が前線に立たなければ”ネクティア”が滅ぶかもしれん状況だ。急ぎ防衛ラインの再構築に入れ!!!】

ゴードンの部隊が西門を潜り外に出ると、大破したコバルトや車両が燃えている。

いまだに戦っている友軍機のコバルトは、同型機のコバルトと戦闘をしていた。

機体配色はネクティア機のグレー色とは違い、茶色と緑の迷彩色をしている。

何より奇妙な点は大半の機体が万全の状態ではなく、右腕が無く代わりに直接ビームガンを付けている物や、装甲版が無くトラックの荷台などに被せる幌布ほろぬのを被せている機体などが殆どだ。

敵の戦力はネクティアの防衛力を潰すには、十分に揃えられていた。

普通に考えれば万全状態のネクティア機が、盗賊紛いの彼らに負ける事は考えにくいのだが、国内事情により現状パイロットの約6割がろくに訓練も受けた事のない新米パイロットばかりだ。

まともに戦える戦力は、ゴードン師団長とメグミ中隊長が率いる直下の部隊だけである。

その為防衛に就いている兵士はキメラを追い返すくらいで、対人戦や対アーマードブレイン戦では、ろくな戦力にはならない。

今戦場に残り戦っているパイロットは、メグミ中隊長が率いるスカル・ルージュ隊と呼ばれる女性のみで編成された部隊の人間ばかりだ。


入り口近くで戦っていたスカル・ルージュ隊機が、敵機をビームソードでコックピットを突き刺したあとに、ゴードンに気づき

【師団長!報告します。すでに防衛班の半数近い戦力が損失し、一部の部隊が前線に取り残されています。】とモニター画面越しに敬礼をして報告をする。

ゴードンは

【状況は報告を聞き理解している。だが、前線部隊の救助は無理だ】

【見捨てるのですか!】

【見捨てたくは……ない、だが見てみろ…この状況を】

ゴードンの見た先には、何十機もの敵機が隊列をなして、こちらに向かってきていた。

機体数もネクティア機を凌ぐのが、目に見えて多い。

ゴードンの後ろに居たコバルトのパイロットが

【師団長、”彼等”に応援要請するべきです】

”彼等”とは、言うまでもなく、カイヤナイトのメンバーをさしていた。

他のパイロットからも

【そうですよ師団長】【あの人達なら、こんな数の盗賊直ぐに倒せるでしょ】


【傭兵如きに助けを求めようなどと…、それでも誇りあるネクティアの兵士か!!!】

声の主の方に全員が振り向く。近くに居たパイロットが

【メグミ中隊!?】と驚き、ゴードン以外のコバルト機が敬礼の動作をとる。

そこにはゴードン機同様に、頭部ユニットの左横に鳥の羽を模した装飾が施されたコバルトが居た。

肩のアーマーはワインレッドに染められ、機体左の肩にスカル・ルージュ隊のエンブレムが描かれている。エンブレムは少し他の機体と違い、骸骨の左目の部分に眼帯が描かれている。

武装もコバルトの両腕の装甲版シールドの他に左手には、標準サイズの盾が装備されていた。

【ゴードン師団長。既に私の部隊がこの先で新しい防衛線を築き、賊共と交戦中だ。状況は芳しくない、私も前に出る。後方の指揮を頼みたい】

【それは構わんが……最前線に取り残された部隊は、貴殿直下の部隊だ。…どうするつもりだ】

【私の隊の者はすべて、姫様とネクティアに忠誠を立てている。国の為に死ぬ覚悟は、軍に入った時からしているはずだ】

【救助は不要と?】

【そう言ったつもりだが…】

両者の間に険悪な空気が流れる。その場に居るパイロット達も、その様子を恐る恐る見ている事しか出来ない状態だ。

だがそこに

【それは流石に可哀想だろ】と頭上からエムジーの声が聞こえてきた。

全員が上を向くと2機のコバルトが飛んでくる。

その2機のコバルトは、ゴードンとメグミの前に着地し二人に振り向くと

【見捨てるくらいなら、俺達で助けてくる】

もう一機の機体からは、カガミの声がスピーカーから聞こえてくる。

【貴殿等はアキ団長の…確か、カガミとエムジーと言ったか】

【ふざけた事を!敵の包囲網の先まで、どうやって行くつもりだ!!余計な事をするな、傭兵!!!】と、ゴードンとは対照的に、怒りを隠さないメグミ。

【要するに足手まといを引き連れながら、敵陣抜けて戻ればいいんだろ】

【おい!エムジー、言葉は選べよ。足手まといとか失礼だろ】

【この程度の敵相手に苦戦している段階で、足手まといじゃなきゃ何て呼べばいいんだよ】

ゴードンはエムジーとカガミの会話に無理矢理入り込むように

【待て、待ってくれ!今貴殿達の乗っている機体は、我が国の機体だ。貴殿等の機体のように、特殊な物では無い。……それでも、救出は可能と言えるのだな?】

ゴードンの問いに、エムジーとカガミは

【当たり前じゃん】【流石に自分の機体引っ張ってくる程の事じゃないかな】と口にする。

【先程から言わせておけば好き勝手に!貴様ら……】

【分かった。この件…貴殿等二人にお任せしよう】

ゴードンはメグミに救出の有無を言わせまいと、遮るようにエムジーとカガミに任せると口にした。

それでも納得いかないメグミは

【絶対に無理だ、敵陣の突破など!下手に出来もしない救助作戦などされれば、他の部隊との足並みが崩れる】とゴードンに訴える。

だがエムジーとカガミのコバルトは、関係無いと言った様子で前線に向かおうと動き出す。

【おい!待て貴様!!まだ、メグミ中隊長が許可を…】

今度はメグミの部下であろうパイロットが、エムジーに向かって怒鳴る。恐らくメグミを会議室まで迎えに来た娘だろう相手に、エムジーは

【俺達には出来る、お前達には出来ない…ただそれだけだ】

【なっ!ふざけるな!】

既に聞く気が無いエムジーは、コバルトとは思えない動きで飛翔し回線を切った。

カガミも【悪い!時間に余裕ある訳じゃないから、また後で話聞くよ】と言い、こちらも飛翔し敵陣に向かった。

その様子を見ていたメグミは

【ゴードン師団長どう言うつもりだ】

【貴殿が言ったのだぞ?彼等の実力が見たいと…だからこそあの二人に任せたのだ】

【しかし!】

メグミは何かを言おうとしたが、ゴードンは【それに見てみたいのだよ】と続ける。

【単機で無双の如き戦いを見せた彼等が、機体の性能だけを頼りにしての強さなのか、それとも本当に英雄的強さを持った兵士なのかを……。貴殿とて全くの興味が無い訳ではあるまい?】

【傭兵が英雄になるなど……そんなこと…ある訳がない】

ゴードンとメグミは、遠ざかる2機のコバルトを見ていた。





【おい、ベルナール!早く西門を制圧しないと、付近のキメラが反応するぞ】

【分かってら!だけどここの連中がわりかし強くて、前に進めねぇんだよ】

【俺達が前に行かなきゃ、門前で戦ってる連中が全滅しちまうぞ】

ベルナールと呼ばれる青年よりも歳を食った、茶髪の男が今回ネクティアに攻め込んだ盗賊のリーダーで、無鉄砲な性格。

そのベルナールと一緒に戦っているのは、ヴァレリーとジョンである。この三人は盗賊団の中心人物で、昔からの幼馴染だ。

ヴァレリーは、青髪がかった髪に丸眼鏡を掛けた盗賊とは無縁そうな男で、盗賊団のまとめ役。

逆にジョンは、大柄な坊主頭で戦い方も脳筋よりだ。

この三人以外にも複数の盗賊団が使うコバルトが居るが、この三人は本来ネクティア西門前で暴れる予定だったが、ネクティアの防衛部隊が以外にも強く前に進めなかったため、急遽この三人がここで防衛部隊と戦い、他の仲間を門前まで突撃させたのだ。

【オリャー!】と大声を上げジョンのコバルトは、ビームソードでネクティアのコバルトに切りかかる。

ネクティアの機体もビームソードで応戦し、鍔迫り合いに持ち込む。

その横からヴァレリー機が、ネクティアのコバルトにビームガンを撃ちこむ。

だが寸前の所で、右腕装甲版シールドで身を守る。

【チッ、意外に硬い】

【俺に任せな!】

今度はベルナールの機体が後ろからビームソードで、ネクティア機に切りかかる。

ビームソードは左肩のアーマーに当たり、ゆっくりとアーマーを切り裂いていく。

それ以上はさせまいと、別のネクティア機がベルナールの機体にビームガンを連射して味方機から離させる。

【こいつら本当に防衛部隊か。どう見ても遠征部隊の連中の様に感じるが】

ベルナールがイラつきなが言う。

【だが”あいつ等”の話じゃ、ネクティアの姫も遠征部隊もキメラに襲われて全滅したって話だが】

【俺はよ、頭使うのが苦手だから単純な考えしか浮かばねぇが、ベルナール騙されたんじゃないか?】

会話をしながらも味方の機体をフォローしつつ、お互い文句を言いあう。

【お前らも最後は賛成しただろ!!!】

【賛成したんじゃない、賛成せざるを得ない状況になったんだろう】

ヴァレリーはイラつきを隠しながら言っているつもりだが、その雰囲気は仲間全体に知れ渡る。

その空気を読んだのか、ジョンは

【でもよ。この仕事が成功すれば、このネクティアに住めるんだろ?しかも他の連中にも楽をさせてやれる訳だしよ】

【あぁ、そうだな。でも、聞いてた戦力と違くないか?まさか俺達を罠に嵌める為の作戦とか】

珍しく弱気な事を言うベルナールにヴァレリーは

【それは無いだろ。俺達を騙して全滅させても、なんの旨みも無い。それなら当初の作戦通り、俺達が門前を制圧して”あいつ等”がネクティアを制圧する方が特だろうしな】

【そうだよな!ヴァレリーが言うんだ、安心しろよベルナール】

【それに、最後はみんな納得してココに居る。自分の意志で選んだんだ、お前が全部責任を負う必要はない】

ヴァレリーなりの気遣いの言い回しに、ベルナールは感謝し

【なら、こいつら倒してとっとと門前を制圧するか!】

そう言うと、他の盗賊仲間も聞いていたのか『おぉー!!!』と声が上がる。

士気が上がったのを悟ったのか、ネクティアのコバルトは一斉に距離をとり、密集陣形にシフトする。

コバルトの武装をビームガンに切り替え、盗賊団に向かって一斉射撃を開始した。

【オッシャァァァ!行くぞ野郎ども!!突っ込めー!!!】とベルナールがデカい声を上げると、他の盗賊機が突撃を開始する。

盗賊機の大半が万全の状態ではない為か、幌布で装甲を隠している剝き出しの場所にビームガンが当たると機体が爆散し、その爆発の煽りを受けて誘爆を引き起こす機体もあった。

その爆炎から出る煙を利用し姿を隠しながらベルナール達の機体は、一気にネクティアの陣形に近づく。

敵陣形に一番に到達したのは、ジョンの機体だった。

ビームガンとビームソードはここに来る途中で失い、非武装状態になっている。

その為機体での文字通りの格闘戦になる。

まずは機体の態勢を低く取り、真正面の機体にタックルをして、右隣に居た機体を殴る。

その時点でジョンの機体モニターに表示された機体状況は、コバルトの絵が表示され左右の腕部関節が赤く表示され、DANGERの文字が表示される。

【ジョン!しゃがめ!!!】

ヴァレリーの指示に従い、直ぐに機体を伏せさせる。

そしてヴァレリー機のビームガンが、ジョン機を狙っていたネクティア機のビームガンを狙い撃ち爆発させた。

【助かったぜヴァレリー】

【油断するな。俺達には、まだ門前での戦闘も残ってるんだ】

【分かってるよ】

【お前も油断し過ぎだヴァレリー!】

声の方に向くと、ヴァレリー機の後ろでビームソードを振りかぶろうとしていた機体があった。

そこにベルナールの機体が飛び蹴りをして、かなりの距離まで跳ね飛ばす。

この3機がネクティア機の陣形に入り込んだことで、他の味方機も雪崩込むようにネクティアのコバルトに襲いかかる。

ベルナールは跳ね飛ばした機体に近づき

【悪いな。こっちも生きるのに必死なんだ……恨むなよ】と言い、倒れてるコバルトのコックピット目掛けて、ビームソードを突き立てようとした。

だがその瞬間”ビュン”とビームガンの発射音と共に、ベルナール機のビームソードは弾き飛ばさる。

【なんだ!】と声を上げながら、ビームが撃たれた射線方向に向こうとするとそこに今度は、頭部ユニットに数発のビームガンが当たり、頭部ユニットが爆散し吹き飛ぶ。

近くに居た味方の盗賊機も、ビームガンの連射を浴びて爆散していく。

【クソ!援軍か!!】とジョンが声を上げる。

【馬鹿な!前には味方が多数居たはずだ!!その包囲網を掻い潜って来たというのか!!!】ヴァレリーはいつになく焦る。

それもそうだ。いくら盗賊機が万全状態でないとは言え、数は相当多く西門前まで進軍していたからだ。

戦闘して来たにしろ、戦闘を避けて来たにしろ、この短時間で援軍に来るのは本来不可能だと考えていたからだ。

だが、現実的に2機のネクティアのコバルトが援軍に駆け付けてのだ。

しかも信じられないのは指揮官機用のコバルトでは無く、一般兵士用のコバルトがここまで来た事だ。

いくら正規のエリートパイロットでも、コバルトでここまで2機で来るなど只者ではないと、ベルナール達盗賊でも理解出来た。

【ヤベーな……こいつら…本当にネクティアのパイロットか?!】





カガミとエムジーは敵の前線に突入し、自分たちの進行を邪魔する機体のみ応戦し、先を急ぐ。

敵の盗賊機が脆いお陰で、弱点になりそうな部分を的確に狙い攻撃をする。

最初の方は容赦なく盗賊機に襲われていたが、反撃し次々に機体を大破させていくうちに敵に恐怖を与えたせいなのか、そのうちカガミとエムジーを避けるように2機の行く先から離れるように動いていた。

そのお陰もあり孤立していたネクティア機の救援に、間に合う事ができた。

カガミはトドメを刺そうとしていた盗賊機のビームソードに狙い、コバルトのビームガンのビームを溜めて撃ち、二発目以降は連射撃ちに変え頭部ユニットを破壊した。

エムジーは他のネクティア機の支援をしつつ、連射撃ちして複数の機体を大破もしくは中破させた。


【おーい、無事か?モブども】と味方のネクティア機に尋ねるエムジー

それに反応しネクティアの隊長機パイロットが

【だ、だれだ!屋敷の警備配置の機体が、何故このような場所に?】

【あぁー、説明面倒だな。…取り合えず俺達は傭兵だ。死にたくなけりゃ、俺とカガミの近くに居ろ】

【待て、他に援軍は居ないのか?!】

【後から俺等の仲間が来る。その前にある程度の敵は、片付くだろうけどな。行くぞカガミ!】

【おう!任せろ】

カガミの返事の返しと共に、二人の機体が盗賊機の懐に飛び込み、ビームソードで切り裂く。

迫りくるカガミ達の機体に応戦しようと、盗賊機がビームガンを構えようとする。

だがそこにカガミのビームガンが先に、盗賊機のビームガンを撃ち抜く。

コバルトのビームガン強度は、それ程高い物では無い。

撃ち抜けば簡単に爆発を起こして、機体にダメージを与える。

そこに更にエムジーが容赦なくビームソードで盗賊機の両腕を切断して、蹴りを入れ機体を倒す。

大破した機体からビームソードをジョンは拾う。

倒れた機体からは、悲鳴を上げながら逃げ出す盗賊のパイロット。

それを守ろうとジョンのコバルトが、エムジーの機体にビームソードを構えて突撃してくる。

【コンニャロー!!俺が相手だぁー!!!】

【おいおい。突撃するのに大声を出して、俺に場所を教えるとか親切すぎるだろ】

【うるせぇー!気合でお前をぶっ飛ばしてやる!!!】

【いや、無理だろ】

エムジーは、コバルトの左腕装甲版シールドで受け止めつつジョン機の勢いを利用して受け流し、コバルトの足を引掛ける。

【うをぉぉぉ!!!】と大声を上げながら前面にダイブする様に倒れ、ジョンの機体は完全に機能停止した。

『ジョン!』とベルナールとヴァレリーの声が響き近づこうとするが、二人の前にカガミのコバルトが立ちふさがる。

【悪いが、お前らの相手は俺だ】

カガミはビームガンを後ろ腰に戻し、左側の横腰からビームソードを取り持ち替える。

ベルナールとヴァレリーは警戒を強めるように、機体の態勢を低く取る。

【ヴァレリー!お前はジョンを連れて逃げろ!!】

【何を言っているベルナール!門前で戦っている連中はどうする気だ!!!】

【前を見ろ……俺達の負けだ】

ヴァレリーがネクティアの方角を見ると、ネクティアの増援が迫ってきていた。

少数では無く、かなりの規模の戦力がだ。

しかもその先頭を走る3機の機体が明らかに他のコバルトと違い、次々に盗賊機を破壊していく。

【ここは俺が抑える。他の連中を頼む】

ベルナールの言葉にためらったものの、ヴァレリーは頷きジョンの機体に近づく。

【悪いがお前ら見逃すと、トシさんに怒られそうなんでな】と、ヴァレリー機を迎え撃とうと近づこうとしたら

【させるかー!!!】【お前一人位なら!】【俺達だけでも十分だ!!】

他の盗賊機がエムジーのコバルトに飛びつき、動きを封じる。

さすがのエムジーも自分愛機アルダートとは違い、ジェネレーターの出力が違うコバルトだと、押しのける事が出来ない。

そこに

【エムジーさん!加勢に来たぜ!!】と、ダイの乗るコバルトがスラスターで飛び上がり、エムジー達の上からビームガンを連射し、盗賊機の腕を撃ち抜く。

そしてダイはエムジーにビームソードを投げ渡し、エムジーは逆にビームガンをダイに投げ渡す。

二刀流になったエムジーのコバルトは、未だに張り付く盗賊機を二本のビームソードで切り裂く。

そしてダイは周辺の盗賊機に向かって、二丁持ちになったビームガンで乱射する。

盗賊機の数機は、ジョンを救出中のヴァレリーを守る形をとる。

そしてなんとかジョンの救援を成功させるとヴァレリーは

【離脱する!”奴ら”との合流ポイントに向かえ!!!】

するとその場に居た盗賊機は、森のある方向に走り出す。

その中カガミの機体に襲い掛かる機体があった。ベルナールのコバルトである。

【アイツ等は追わせねぇ!!!】

【しつこい!】

両機のビームソードが鍔迫り合いをして、火花を散らし周りを明るく照らす。

【カガミン!】【まだ生きてるな】

そこにベンベンとトシの乗るコバルトが近づき加勢しようとするが

【ここは俺に任せてください!ベンベンさん達は、他の連中を!!!】

ベンベンとトシが森の方角を見ると、逃げたはずの盗賊機数機が戻ってきたのである。

ベルナールは驚くように【なんでお前ら】と言うと

【リーダーのお前を一人置いて行けないだろ】【ヴァレリーにも許可は得たからな】【こいつら倒して、とっとと逃げるぞ】

戻って来た盗賊機は、もう既に限界を迎えているものばかりだった。

恐らく自分たちを盾にしてでも、ベルナールを逃がすつもりでいる事が窺えた。

その様子を見て、トシとベンベンは流石に弱い者虐めをしている気分になる。

襲ってきたのは勿論盗賊の連中なのだが…

【なぁ、お前ら。悪い事は言わない、降参しろ】

【お前らじゃ俺達には勝てないぞ】

トシとベンベンは諭すように言ったつもりだったが


【バカにしやがって!】【俺達は覚悟してネクティアに攻め入ったんだ!!】【同情なんて要らねぇ!むしろ覚悟しやがれ!!!】

ベルナールを助けに来た連中には寧ろ、戦闘意欲を上げる結果になってしまった。

そしてベルナールは一旦カガミから距離をとり

【気持ちは有り難いが、俺達にもプライドがある。アンタら倒して堂々と帰らせて貰うぜ!!!】

トシ・ベンベン・カガミは説得は無理だと判断し

【なら覚悟して貰うか】【まぁ、覚悟してなくても殺るんだけどな】

【俺達はまぁ、アレですけど……エムジーとダイさんは大丈夫ですかね。…色々な意味で】

トシとベンベンは一瞬何か考えて

【まぁ、大丈夫だろ…多分】【大丈夫だよ…多分な】と言うだけ言って、盗賊機に襲い掛った。

カガミもそれに続くように、ベルナール機にビームソードで切りかかる。

最初の一撃をベルナールは左腕の装甲版シールドで防ぎ、右手に装備されたビームソードでカガミの機体を振り払おうとする。

カガミは一歩後ろに下がり、それをビームソードで弾き返す。

そしてまた一歩前に踏み込んで距離を詰める。とにかく接近戦に持ち込み方を付けようと考えるカガミ。

ベルナールは距離をとり、ビームガンでケリを付けようと銃撃戦に持ち込もうとする。

ビームソードでの切り合いで、カガミには勝てないと理解したからである。

ビームガンの撃ち合いならば、まだ勝機があるかもしれないと考えた結果だった。

カガミもベルナールが銃撃戦に持ち込みたいのを悟り、そうはさせまいと攻撃されては避け、そしてまた一歩前に踏み込み相手の懐に入ろうとする。

その度にベルナールは、装甲版シールドで防ぎビームガンで反撃したりと繰り返す。

だがこれはカガミの策略であり、既にベルナールはその策の十中にハマっていた。


そして突然訪れる。


ベルナールのコックピット内で警告音が響く。

「なんだよ!こんな時に!!!」

モニター画面を確認すると、コバルトの絵が描かれた左腕全体が赤く表示されDANGERの文字が出ていた。

他にもビームガンのゲージが、赤くなりCOOL DOWNと表示される。


コバルトの両腕にあるシールドは追加された装甲版に過ぎず、非常に脆い。

攻撃力の高いキメラなどでは、簡単に壊される事が多く殆どのパイロットは避ける事を優先する。

だがこれがアーマード・ブレイン戦になると、余程世代差が無ければ装甲版シールドで防ぐ事の方が多い。

先ほどの説明通り、装甲版シールドは”あくまで”追加された装甲版に過ぎない事を忘れてはいけない。

ダメージ限界量はそれ程高くない。

常に装甲版シールドで防ぎ続けると、メインアームにまでダメージが響いてしまい、酷い時にはフレームまで歪む。


「噓だろ…こんな時によ!」

ベルナールがモニター画面に気を取られた一瞬に、カガミはベルナールのコバルトの左腕を装甲版シールドごと真っ二つに切り落とす。

【うわぁぁぁ】とベルナールの声が周辺に響き、切られた衝撃で機体がバランスを崩しその場に倒れ込む。

倒れた所にカガミは近づき、吹き飛んだ頭部ユニットの首元部分にビームソードを突き刺し、完全に機体の機能を停止させた。

コックピット内ではようやく戦闘が終わったと、一息つくカガミ。

周りを見ると、既にトシとベンベンも戦闘を終わらせていた。

盗賊機の四肢を完全に破壊していたが、コックピットを残して中のパイロットは無事である。

心配されるのは、エムジーとダイの二人である。

情報を聞き出す為にも、本来ある程度のパイロットは捕虜として捕まえた方が得な事が多い。

その後の捕虜返還にも、こちらにお金が入るので捕まえるべきなのだが……

カイヤナイトのメンバーはたまに、我を忘れて捕虜を取らず完全に殲滅してしまう事もあるのだ。

ましてや前段階のブリーフィングも無かったので、エムジーとダイが捕虜を取っているのか怪しい状況だ。


その時、別方向からエムジーとダイの乗るコバルトが歩いてくる。

【そっちも終わったみたいですね】とダイが言うと

【お前ら二人とも、捕虜は取ったろうな】とトシが聞く。

【一応取ったんですけどね……その面倒…じゃなく、さっき助けた連中に捕虜を任せたら、あの娘等後方部隊の連中と合流しちゃったみたいで】

【つまりお前ら自身は、捕虜を取ってないんだな?】

【トシさん……怒っちゃや~よ】とダイがふざけて言った瞬間、トシとベンベンは持っていたビームガンをダイの機体にだけ何発か撃つ。

ダイも装甲版シールドで防ぎつつ避ける。

【あっぶねぇー!借り物の機体に何してんですか!!】

【いや、何か殺意が急激に沸いて】

そこにアキ達の乗ったジープが近づいてくる。

それと同時くらいに、空から日が昇り始めていた。





その様子を離れた森から見ていた集団があった。

「手助けしなくて良かったんで?」

ローブで姿を隠している集団の一人が、双眼鏡でカガミ達を見ている男に尋ねる。

尋ねた男の声から言って初老を迎えるくらいだろうか?しかも大柄な体格である事が分かる。

「まぁ~ねぇ~。聞いてた情報と余りにも違い過ぎるからなぁ~」

尋ねられた男の方は、尋ねた男よりは少しだけ若い印象の残るオヤジ声だ。

「防衛にゴードン師団の機体が居たそうです。不思議な事に師団長も戦場に現れたとか」

「お姫様と護衛についたゴードン師団長率いる部隊は、キメラに襲われ悲劇の死を迎える…そんな予定じゃなかったのか?」

「その筈なんですがね」

「キメラに襲われた所は、確認したんだろ?」

「そのはずですが、そうだな?」

大柄な男は、後ろに居る部下らしい男達に聞く

「襲われた所は確認しましたが、あの場に止まるなんて無理ですよ。キメラの数が尋常じゃ無かったですから」

「だそうで」と大柄な男は、未だに双眼鏡を覗き込む指揮官らしい男に向き直る。

「それにしちゃ~防衛部隊の数が多すぎる。それにネクティアにあんな凄腕の奴が居るなんて聞いた事がないしな」

双眼鏡で覗いている先には、コバルトから降りたカガミの姿があった。

「別口で待機している連中からです」

後ろに控えていた部下の一人が、何枚かの写真を指揮官の男と大柄な男に手渡す。

指揮官の男も双眼鏡を部下に手渡し写真を見る。

そこに写っていたのは、ゴードンが率いる師団と共に行動するカイヤナイトメンバーの機体が写っていた。

「見たこともない機体ですねこりゃ」

「それとこちらを」

部下は更に別の写真を渡す。そこには大量のキメラの死骸が写っている。

「この数はなんだ!?キメラの共食い…じゃないな。弾痕と刃物で切られた痕だな」

大柄な男と部下達はは色々考えていたが、指揮官らしい男は「なるほどな」と口にし部下達が待機している方向に歩きだす。

「よろしいので?今からでも十分ネクティアを奪えると思いますぜ」

大柄な男が指揮官らしい男に尋ねながら横を歩く

「一連の魔法使いが分かったからな」

「魔法使い…ですかい?」

「あぁ、この写真に写った機体の連中が恐らくキメラを掃除した奴らだ。キメラはとんでもない数が居たんだろ?こんな事が出来る連中を、魔法使いと呼ばずに何て呼ぶんだ。それにネクティアの戦力は調べつくしてる。老人師団の連中じゃ、ナイト級のロックビーストは倒しきれないはずだ」

「この写真の連中が、全部片付けたと?」

「恐らくな。それとガキ共が戦ってたコバルトのパイロット、あれが魔法使いと俺はみた」

「そいつは……いや、いくら何でも自分達の機体を普通使うでしょ。この写真の機体はどう見ても、第二世代以上の機体ですぜ。わざわざコバルトに乗り換えますかね」

「事情は知らんが、間違い無いだろう。腕の立つ人間が、ネクティアにそう何人も居ると思えるか?」

「居るとは勿論思えませんが…」

「もしも今ネクティアに攻め込めば、恐らく返り討ちにあうだろう。それと俺達の正体も露見する。そもそもコルレットの連中に便乗して、ネコババしようとしただけだしな。危険な橋を騒いで渡る必要はないさ」

「ならオータム要塞に下がったガキ共と合流を?」

「いいや、第2小隊だけ向かわせて、俺達はクレイドルに帰還する」

指揮官らしい男は、自分の機体の前で止まる。

その機体は獣の様な頭部ユニットをした機体で、明らかにコバルトよりも装甲が厚く、ひと回り大きい。色は黒と紫、白のトリコロール色になっている。

「さぁてと、色々忙しくなるぞぉ~。ネクティアのお姫様、アンタが鍵だ。頼むぜぇ~」

男は首にぶら下げたペンダントを持ち上げる。そこには家族写真があり、それを見ながらニヤリと笑う。

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