#6
カガミ達一行はお姫様のアーリマンが率いる軍勢と共に、彼女の治める国”兼”城塞に向け行軍していた。
そしてカガミは先ほどの戦闘ではあまり戦えてなかった事から、師匠的存在のベンベンから
「この行列の護衛は、カガミンだけで守ってみん。どうせ出てくるのなんて、ロックビーストとソードスパイダー位なもんでしょ」と言われベンベンの指導の下、右から左へと文字通り飛び回っていた。
【カガミン、5時の方向からロックビーストが3体接近。隊列に到達まで5分、到着までに処理出来なかったらイヅナの塗装はう〇こ色決定な】
【嫌ですよ!絶対に倒します!】
隊列前方でソードスパイダーの群れと戦っていたカガミのイヅナは、右手に持った試作高出力ビームライフルを連射し群れの半分以上を焼き払う。
だがコックピット内のカガミは、倒した敵の数に対して次々押し寄せてくる敵をレーダーで確認し焦っていた。キメラの数が非常に多いのだ。
今の時点で既に50体以上のキメラを討伐しているが、近づいて来るキメラの数は減らない。
効率良くキメラを倒す為にソードスパイダーの様な小型タイプには、ビームの貫通力を利用して3匹位の数を1発で仕留める様に狙っている。
そしてまたソードスパイダーが3匹位に列を成し、イヅナに向かって走って近づいてきた。
コックピットのモニター画面とパイロットスーツのヘルメットがリンクし、ビームライフルの照準がソードスパイダーの腹部を中心に捉える。
そしてカガミが操縦桿のトリガーを引くと、イヅナの持つビームライフルが音をたて発射される。
ソードスパイダーに命中こそしたものの、右腹部と右腕の鎌を撃ち抜き2匹巻き込んで倒したが、3匹目は無傷だった。
カガミは一瞬舌打ちし、2発目もソードスパイダーの腹部を狙って撃ったが、命中するも今度は頭部に命中した。
「クソ!狙いがずれてきた。ジャガーさん!この試作高出力ビームライフル、もう壊れてきましたよ!!!」
【えっ!そんなまさか!?そんな壊れやすい設計で作ってないよ】
「でも!」
カガミがジャガーに言い返そうとしたが、それをベンベンが止めた。
【ジャガーさん大丈夫、壊れてないから】
するとイヅナの横にベンベンが乗る秋水が飛んできた。
【カガミン、ライフルの砲身見てみな】
「砲身…ですか?」
カガミがビームライフルの砲身を見ると、砲身が熱を持ち赤く光っていた。
「砲身が…焼けてますね。でもジェネレーターはまだ冷却域に入ってませんよ」
【おっ、前に話した内容覚えていて偉いぞ。でも光学兵器は実弾兵器と違って扱う熱量が違うし、何よりイヅナのビームライフルは試作品の高出力使用な訳だ。ビームライフル系の兵器は砲身に熱が溜まり過ぎると狙いがずれやすくなる。ジェネレーターと照準が常に=(イコール)とは限らない】
「なら砲身を冷ましている間はどうすれば?イヅナの銃火器はコレ一つだけですよ」
【カガミン、君のイヅナは汎用機なわけだ。背中に背負っているモノは飾りか】
ベンベンに言われイヅナの背中の武装ラックに引掛けられているバスターソードに目を向ける。
「この数相手に、剣ですか!」
【そうだよ!剣がって言うけど、俺なんてこの右腕のバスターアームだけだよ!!それでこの数以上の敵を一人で倒してるんだぞ、謝って!!!】
「いや、謝りはしませんけど…それにこの数一人は、やっぱり俺には無理ですよ。ベンベンさんと同じにしないで下さいよ」
【何を言っているのかね。うちのメンバー全員この程度の敵なら、デイリー感覚で毎日一人で倒してるぞ。しかも掛かる時間は8分、縛りプレイしても10分で殲滅するぞ】
「うっ…噓でしょ」
【マジマジ】
「でも俺まだ初心者ですし」
【何言ってんだよカガミン。練習機を散々乗り回したろ、とっくに初心者卒業してるからな。専用機持ってる初心者なんて、アーマードブレインに居ないから】
「えぇ、でも…」
【でもも糸瓜も無い、ほれ!ロックビーストが隊列に接触するまで後4分】
すると秋水は右足でイヅナの背中を蹴り飛ばし、接近してくるソードスパイダーの前面に押し出される。
カガミは「うわぁ」と声を上げたが、すぐにイヅナの態勢を立て直し飛び掛るソードスパイダーを左腕に装備されたシールドで弾き飛ばし、右側から飛び掛かる3匹のソードスパイダーを、背中のバスターソードを取り出しそのまま横に一振りする。
空中で見事にソードスパイダーを真っ二つにし、先ほど弾き飛ばしたソードスパイダーに近づき左足で踏みつぶした。
「残りの数は」
カガミはもう一度レーダーを確認し、残りのソードスパイダーの数を確認する。
「あと7か」
一瞬チラッと腰にマウントした、ビームライフルの砲身を見る。
だいぶ砲身の熱が引いていたが、
(思ったよりバスターソードの使い心地悪くないな、残りはコイツで…いくか!)
残りのソードスパイダーの群れに向かってイヅナは突撃を仕掛けた。
先ほど同様に先頭の2匹をシールドで弾き飛ばし、飛び掛ろうと態勢を低くしている2匹をバスターソードで振り下ろし切り裂く。
そしてそのまま今度は切り上げて、近づいてきた3匹のソードスパイダーを真っ二つにした。
残りのひっくり返った2匹のソードスパイダーを、バスターソードで突き刺した。
【ベンベンさん!時間は】
【接触まであと3分、隊列の最後尾まで距離があるから急げぇ~】
【了解です】
イヅナは姿勢を一瞬低くとり、機体の各部に有るスラスターを使い飛び上がった。
カガミの戦闘を行軍中の隊列から、カイヤナイトメンバーは見ていた。
【初の実戦にしては、なかなかじゃない】
ハヤテがそう口にすると、その横を歩くダークパープル色の肩を守る装甲のショルダーブースターが特徴的な機体、アルダートのパイロットのエムジーが
【そうですか?10番クラスのフレームにビラージュ・ジェネレーター使ってるんですよ。あれくらいは当たり前でしょ】
【リアフレの割に厳しいね】
【俺も十分に頑張ってるように見えるけど】
近くにいた富嶽に乗るダイとクロスドクターに乗るジャガーが会話に入りこんできた。
【リアフレだからですよ。それと頑張っても結果出さないと意味ないでしょ】
エムジーは何かを考える様にすると
【ダイさん達はどう思います?さっきのトシさんの考え】
【さっきって言うと”ココ”の世界の事かい?】
※
時は一時間前に遡る
「噓だろ……有り得ない」
カガミは無意識に口が動く様に言葉にしていた。
それはカガミだけではなかった、カイヤナイトメンバー全員が驚いていた。
自分達の機体がキメラの返り血を浴びて、真っ赤に染まっているからだ。
この状況にリュウが
「ちょっと待て待ておかしいだろ、これ法律違反だろ。運営に通報した方がよくね?」
その言葉に今度はハルが
「その前にログアウト出来ない方が問題だろ。あのゴードンとか言うオッサンどうせ運営の人間だろ?もう演技とか要らないからログアウトさせて貰おうぜ」
ハルの言葉にカガミが驚く
「えっ?あの人達って、プレイヤーなんですか?」
「そりゃそうだろ。いくらアーマードブレインのNPCが会話能力が高いって言っても、こっちの表情とか感情読み取って会話なんてするか?」
その話に続く様にジャガーが
「そう言えば去年のエイプリルフールイベントに運営の人間と、どこぞのアイドルがNPCに成りすまして、プリンセスミッションてのがあったしね」
「どんなミッションだったんですか?」
「アイドルの娘がお姫様で、運営の開発者達が護衛の兵士だったかな。お姫様が乗る車を運営の人間が乗るコバルトと一緒に、目的地の基地にまで送り届けるミッションでね。車だけじゃなくて、運営の人間の機体も守らなきゃいけないっておまけ付き」
「それって」
「そう、今の状況と全く同じ。あの時も会話がリアルの人間と話してる様な感覚で、皆でおかしいなぁ、なんて言ってたっけ。ネタ晴らしは一週間後の動画配信で発覚したんだけどね。他のコミュニティーも動画に撮られてたみたいだしね」
「な、なら安心ですね。早く説明してログアウ……」
「残念だけど、その可能性は低いだろう」
会話に割って入ったのはトシだった
「なんでですか!トシさん」
「いくらイベントって言っても、血の演出は不味すぎるだろ。つい最近でもニュースで教育委員会とアーマードブレインの運営会社が揉めてたばかりだぞ、そこにこんなイベントなんてやったら世論を敵に回すようなもんだ。そんなリスクを背負ってまでやるか?」
「それは……そうですけど…」
トシの言葉に皆の不安がつのる。そこにリュウが
「まさかの俺等……異世界に転生してたりして、なんて…なんてね」
一瞬全員の表情が固まったが、アキが
「ま、まっさか~!リュウちゃんナイスギャ~グ」
ハヤテも続いて
「ほら、リュウさん俺ら皆死んでないし。アニメとか漫画でも死んで異世界に行くでしょ。それか寝て起きたら的な?俺ら起きてたじゃん、しかもこんな大人数で転生とか無いでしょ。神様にも会った覚えないし」
他のメンバーも
「そうだよな」と口々にしていた。
「転生なんて幼稚な考えは俺もしてはないけど、今のこの状況が異常なのは確かだ」
トシが周りの安穏とした空気を変える様に話だす。
「アーマードブレインにインした時に、運営からメールが来ていただろ」
ダイやリュウ ムックは
「そんなメール来てましたっけ」「来てたかもしれないけど、確認してねぇ」「あぁ、来てたね。でも俺も確認してないね」
カガミもインした時の事を思い出す。
「プレイヤーの入室を確認。パイロットコードネーム、カガミを確認。
ご帰還お疲れ様です。作戦司令部からのメールが数件あります。至急ご確認お願いします。」
確かにメールが来ていた。因みに作戦司令部からのメールは緊急メンテが入る時や、当日限定隠しイベント発生時に使われる言葉だ。
通常のメールは、本部より連絡ですと簡単にまとめられているメールがくる。
「確か作戦司令部からって、なってましたね」
「あぁ、内容はこうだ。新しいコンテンツ拡張に伴い新しいサーバーを開設するって内容で、バグでプレイヤーが旧テストサーバーに飛ばされる現象があるってやつだった」
ベンベンはそれを聞いて
「旧テストサーバーって、”ココ”がそのサーバーってこと?なら抜け出す方法は」
「運営としてもまだ対処出来ないバグが多い為、何かゲームをする上で支障が起きた場合は下記のメールアドレスにご連絡を!との内容だった」
ハルは困惑する様子で
「えっと、トシさん詰まり抜け出す方法は?」
「ログアウトするにも、血の演出を通報するにも、まずログアウトしてPCなりスマホを使って、運営に連絡しなきゃダメって事さ。詰まるところ運営に気付いて貰うか、家族と暮らしてる人間は、VRヘッドギアを頭から引っこ抜いて貰うかの二択になる訳だ」
トシの話を聞いて全員が『マ、マジかよ!!!』と叫びを上げた。
「まっ、それまでは俺達がどう足掻こうと無駄な訳だ」と、トシも冷静に話はしているものの、小声で「明日の出勤時間までに出れないなんて流石に無いよな」と、ぶつぶつと嘆いていた。
カガミがふと隣に顔を向けるとジャガーが、考え込む様に腕を組んでいた。
「ジャガーさん、どうかしました?」
「ちょっと思い出した事があってね」
「思い出したこと…ですか?」
「そう。アーマードブレインのβテストがあった時の事なんだけど、確かプレイヤーが一時的にバグで、抜け出せない事があってね。でも、ほんの数十分の話らしいんだけど、確かその時知り合いがそのバグに引っかかったって言っていて…。
イベントミッションをクリアさせて、ログアウト画面が出てきた様な事を言ってたような気が……」
「なら城塞まで行けば、ログアウト出来るかもしれないって事ですか」
「確証は無いよ。それにミッションが城塞まで行くだけとは限らないしね。あとは団長の決断次第かな」
全員の視線がアキに集まる。暫く考え込むと
「結構重要なことだから個々の意見があるなら聞くけど、あらゆる可能性を考えて行動はしておいた方が良いと思うんだ、もしも他に意見が無ければ俺は城塞までの護衛依頼を受けようと思う。どうだろう」
アキの意見に順番ずつ『賛成に一票』と、手を上げていくメンバー達
全員が手を上げるのを確認すると
「ほいじゃ~、各自行軍準備!エムジーくんとジャガーさんは、俺とムックさんの機体を追従モードで牽引してくれ」
名前を呼ばれたエムジーは
「アキさんは、どうするんです?」
「多分エイプリルフールネタと同じなら、装甲車の修理して車中で詳しい内容が話されるはずでしょ」
「アキさん、なんで俺も一緒に車組みなんだ?」
ムックが疑問顔で尋ねると、アキはニヤリとした顔で
「全員に詳しい話を後でするとなると、もう一人くらい居た方がいいし、それに何か面倒な話になったら年長者に責任を取って選んで貰おうかと」
「そんな責任押し付けんでくれ、それにいい加減年の差無い事認めようよ!学年で言えば同じなんだから!!!」
「俺は絶対に諦めないからな!ムックさんの方が、絶対にオヤジだからな!!」
それを見ていたジャガーが
「どっちも変わらないでしょ、早く牽引機を俺等に設定して下さいよ」と、突っ込みを入れていた。
※
それが約一時間前程の話である。
【まっ、リュウさんの異世界転生説よりも、トシさんのテストサーバーに閉じ込められた説の方が現実的だはな。異世界転生の方が、ロマンはあるけどね】
ハヤテのリベラルクリフトが、片手でやれやれといった感じに動く。
【それに異世界って、ファンタジー限定でしょ?こんな世紀末な異世界嫌だよ!しかも美少女ハーレムじゃなくてオッサンのハーレムとか、ただの地獄絵面じゃないか!!!】
ダイの操る富嶽が、両手で頭部を抑え機体を揺らす。
その言葉にハヤテも【そこは同感だな】と答える。
【それはともかく】
ジャガーは自分たちの目の前を走る装甲車を見ながら
【変な依頼を吹っ掛けられなきゃいいけど】と、不安を口にする。
エムジーが
【交渉事なら、トシさんに任せた方が良かったんじゃ?勿論お三方でも良いと思いますけど】
エムジーの言うお三方とは、ダイ・ハヤテ・ジャガーである。
通常コミュニティー同士の交渉の席には、団長のアキ・副団長のムックのどちらかが出席し、その補佐としてトシが同伴する。
大規模作戦前のコミュニティー同士の会議になると、アキもムックも出席する必要がある。そのためトシ一人の補佐では無理があり、この3人が補佐官”兼”護衛として同伴するのだが……
【そりゃプレイヤーが相手ならね】
【NPCが相手ならプレイヤーと違って、交渉決裂でマフィアの抗争みたいな事にはならないだろうしね。それにブラックワードも設定されてる場合があるから、俺等が話すと後で運営にバンされる場合があるからね】
ジャガーとハヤテの言った事にエムジーは(普段この人等、どんな交渉してるんだ)と内心思ったが、一応違法な事をするような人達ではないと、信頼はしているので言葉には出さなかった。
※
「凄まじいな」
装甲車の窓からイヅナの戦闘を見ていた、頭を坊主にしている厳つい年配のオヤジのゴードン・スミスが驚愕した顔で口にする。
「一個中隊の戦力で相手にする数を、たったの一機で処理をするとは…。彼はカイヤナイトの中でもエースパイロットと見ても?」
ゴードンはアキに振り向き尋ねた
「いや、カガミくんは最近ウチに入隊した新人ですよ。勿論エースパイロットになれる素質はあると思っていますがね」
「とりあえずお互いにもう一度自己紹介と、組織の紹介をしておきますか。自分はカイヤナイトで副団長をしてるムックです」
「先ほども説明したと思いますが、カイヤナイト団長のアキです」
アキとムックは出来るだけ指揮官らしい口調と動作を意識して喋っていた。
それには理由があった。装甲車に乗る前に、ハヤテから
「出来るだけこの世界感に合わせて話をして下さいね。変な話し方やメタ発言して、更にバグでも起きたら何が起こるか分からないですから。どこぞの隊長や指揮官の演技でお願いします」と、釘を刺されたからだ。
二人が自己紹介すると
「私は、ローデンハイム家次女のアーリマン・ローデンハイムです。近しい者には、アーリィと呼ばれています。そしてこちらは、私の側近でライラ」
紹介されるとアーリマンの右隣に座る、眼鏡を掛けて髪を頭の上で団子に纏めている女性が
「先ほどは失礼をしました。姫さまの側近をさせて頂いています、ライラ・クロルです」と、一礼をしながら答え
「そしてこちらは私の侍従で、クロエです」
今度は左に座る、大人しそうな赤い髪が特徴的な少女を紹介する
「あの、えっと……クロエ・べシールと言います。先ほどは助けて頂き…ありがとうございます」
おどおどと答える様子に、アキとムックは自分の娘を見るような心境でその様子を見ていた。
因みに装甲車の中は、運転席側の方にアーリマンを挟んでライラ・クロエが座り、その対面の席にアキとムックが座っている。
装甲車の中は広く、アーリマン達とアキ達の間をゴードンが扉に背中を預け、片手を天井に押し付けバランスを取りながら立っている状況だ。
ゴードンは親指を自分に向け
「そして私が、姫様が治めているネクティアで軍部を任せられている、ゴードン・スミスだ。
これからよろしく頼むぞ、アキ団長殿!ムック副団長!それと今運転している若造が、アレン伍長だ」
運転席の方から「どうも、アレン伍長です!」と返事が返ってきた。
「では本題に入りますか。遠回しな言い方が苦手なもんで、単刀直入に言わせてもらう。我々に何か、依頼したい事があるのでは」
アキはアーリィの目を見ながら尋ねる。
アーリィが答える前に、ゴードンが一歩前に出て
「その話は一旦城塞に着いてからにして頂けないだろか。ここには居ないが、軍部を預かる者がもう一人いるのだ」
ゴードンの話にムックは、眉をひそめて
「軍部はゴードンさんが、預かっているんじゃないのか?それにここで話せない理由でも」
「こちらの事情が複雑でな。そこを踏まえて話をするならば、この場所では不安があるのだ。ご理解して頂きたい」
そこにアーリィが
「私としましては、皆様とお友達になれればと思っております」
屈託のない笑顔を向けられたアキとムックは、お互いに視線で
(この娘自身に、俺達を罠に掛けようとする意志は無いな)
(でもこの二人は、アーリィちゃんとは違った考えを持っているようだ)と語る。
ゴードンとライラは、装甲車に乗る前から明らかに様子がおかしかった。
アーリィ・クロエを先に装甲車に乗せ、次にアキとムックが装甲車に案内してから乗るのを確認し、それから車外で暫くゴードンとライラは話合った後に装甲車に乗り込んだ。
アーリィが何を話していたのか聞いていたが、ライラは「城塞までの道のりを、相談しておりました」と言っていた。
だがその言葉が噓だと言う事に、アキとムックは気付いていた。
理由としては城塞までの距離が短い事を、他の兵士が会話をしているのを聞いていた為。
もう一つは、その会話から城塞まで残りの道が、ほぼ一直線だという事を知ったからだ。
だが、アキもムックも暫く相手の出方を見る方向で、意見を一致させていた。
「ですが……」
ライラは装甲車の窓から外で、ロックビースト目掛けて飛翔しているイヅナを見た後に
「本当に…その…彼一人で、大丈夫なのですか?」
「ライラ殿!」
ゴードンは少ししったする様に、ライラを制止した。
だがライラは、ゴードンの言いたい事を否定する様に
「いえ、あなた方のお力を、今更疑っている訳ではありません。ですが先ほどの方は、新兵とお聞きしました。本当にこの隊列を守りきれるのか、どうしても不安が残ります」
ライラの言葉にムックが答える
「確かにカガミ君は新兵ですが、彼はメンバーの訓練に耐え、ウチのエースの片割れの一人が手塩に掛けて育てていますからね。そこらでエースと呼ばれている連中よりも、腕が立ちますよ」
アキも何気なしに
「ウチのメンバーなら、この程度の事は練習レベルで常に行なっています。この隊列を守る程度なら、カガミ君一人で十分ですよ」
アキとムックの言った事は、自慢でも無ければ見栄を張った噓でもない。
単純にカイヤナイトレベルのコミュニティーになると、アーマード・ブレインではこのレベルの強さは普通なのだ。
己を磨き 友を作り 高みを目指し 崩れぬ団結と絆を持って 強大な試練に挑め
これはアーマード・ブレインの謳い文句であったが、この言葉は団長のアキが気に入りで、カイヤナイトでの社訓的な物になった。
(カガミ君は、今の戦いでこの言葉の”己を磨き”をしている。必ずやり遂げるさ)
アキはフッと笑って
「それに彼ならやり遂げますよ。カガミ君の努力と強さは、ウチのメンバー全員が知っていますから」
ライラはアキの言葉を聞いても未だに不満顔でいたが、ムックが
「隊列の先頭にはマークスマインとヘルハンター、中央に富嶽・リベラルクリフト・クロスドクター・アルダート、最後尾にデュークス・秋水が配置されてます。例えイヅナが撃ち漏らしても、この隊列に被害が出る事は絶対に無いですよ」
※
「見えた!絶対に倒す!!!」
コックピットのモニター越しにカガミが操縦するイヅナが、最後尾目掛けて走るロックビーストを捉える。
イヅナはスラスターを使いジャンプしながら、ロックビーストの頭上に跳ね上がる。
そのままバスターソードを下向きに持ち替えて、落下しその頭に突きたてたまま地面に突き刺す。
ロックビーストの頭を踏みつけ、バスターソードを引き抜こうとすると、左側から別のロックビーストがタックルをする様にぶつかり、イヅナは突き飛ばされ横転した。
コックピット内では激しい揺れに晒される。
「痛ってぇー」と、カガミが唸り声を出していると、モニター画面にイヅナ目掛けて腕を振り下ろそうとしてくるロックビーストが映し出された。
「んなろぉー」
言葉にならない様な叫び声を上げると、カガミは操縦桿を前に押し出す。
ギリギリのところでイヅナは、左腕に装備されたシールドで防ぐことができた。
そこにもう一体のロックビーストが来て、二体に殴りつけられる。
全てシールドで受け止めつつスラスターを全開に使い、機体を地面に擦りつけながら距離を取った。
ある程度の距離を取ると、すぐに機体の態勢を立て直し、バスターソードを背中のラックに格納する。
そして腰にマウントされたビームライフルを取り、イヅナに追撃を仕掛けてくるロックビーストの目を狙い撃ちこむ。
ビームが命中すると、ブォォォォと唸り声の様な遠吠えを上げて、出血する部分を抑える。
止めを刺そうとイヅナは再びバスターソードに切り替え、ロックビーストの胴体を切り裂き真っ二つにした。
カガミはレーダーを見て、もう一体のロックビーストの位置を確認する。
「ヤバ!」
レーダーを見ると、ロックビーストは隊列の最後尾の目の前にまで移動していた。
その最後尾では、
【ヤ、ヤバいぞ!ロックビーストが来る!!!】【攻撃だ!攻撃しろ!!】【ビームガンじゃ、あいつの皮膚は貫けないぞ!】と、コバルトに乗るパイロット達が叫び慌てふためいていたが、隊列後方に配置されていたリュウが
【おら!とっとと前に進め。止まんな】
コバルトのパイロット達に止まらず進めと催促したものの、パイロット達は不満の声を上げる。
【いや、でも!】【アンタ達の仲間が、撃ち漏らしたせいだろ!】【そうだ!アンタなら簡単にロックビーストを倒せるだろ】【頼むなんとかしてくれ!】
リュウにロックビーストを倒して欲しいと、それから何人かが頼み込んだがリュウは
【ダメに決まってるだろ。カガミ君のトレーニング中だし、それにまだカガミ君は撃ち漏らしてないぞ】
そう言っている間にリュウ達の目の前にロックビーストが現れると、パイロット達は悲鳴を上げてビームガンを構えたが、リュウの乗るデュークスはロックビーストの方向に向くと
【だいぶ時間が掛ったけど、何とか倒せたね。お帰りカガミ君】
そう言うとロックビーストは縦に引き裂かれ、その後ろにイヅナが立っていた。
【ふぅ~。何とかギリギリでしたけど、ノルマは達成できました】
デュークスの更に後ろに居た、ベンベンの乗る秋水が近づきながら
【ギリギリ及第点って所だな】
【厳しくないですか】
カガミが不満げな感じで言うと
【時間が掛り過ぎだ。もう城塞着いちまったからな】
カガミは隊列の先頭方向を見ると、夜の暗闇で気付くのに遅れたが、鉄の壁に覆われた街が見えた。
そのころ先頭に居たハルとトシは、城塞のデカい扉の前まで来ていた。
【止まれ!】
扉の前に居たコバルト数機にビームガンを向けられる。
コバルトの肩には、骸骨の頭にピンクのリボンと口紅の形をした弾丸を噛んだエンブレムが全機に描かれていた。
機体から聞こえた声からして、パイロットも女性であることが窺えた。
【見慣れない機体だが、所属と目的は?!】
ハルとトシはどうしたものかと、お互いに顔を見合わせていると、後ろに居たコバルトのパイロットが
【自分は第1師団所属キール少尉です!この方達は道中キメラに襲われていた我々に、救援として駆けつけてくれた傭兵部隊の方達です。姫様からも御礼をしたいとの事で、城塞までお連れしました。開門をお願い致します】
門番をしていたコバルトのパイロット達は、それぞれの機体同士で見合わせていた。
恐らく秘匿回線に切り替えて話をしている。
暫くして【了解した、開門する。ただ客人は少し我々とここで待ってほしい】
トシとハルは【了解だ】【しょうがねぇ~なぁ】と言って、他のメンバーに状況を伝えた。